サリーからジュエリーまで幅広く扱い、インド国内外で急拡大を続けるファブインディア。同社には「社会的企業」の顔もある。

インドの伝統的な衣料や宝飾品、ライフスタイル用品などを扱う小売りチェーン「ファブインディア」は、国内88都市に232店を展開し、海外進出も果たした大手衣料品販売だ。運営するファブインディア・オーバーシーズ(本社ニューデリー)は非上場企業だが、2016年度の連結売り上げは115億ルピー(約201億円)、税引き前純益は14〜16年度の平均で9億2980万ルピー(約16億円)とされる。
 
ファブインディアにはもうひとつの顔がある。手染めや手織りの繊維製品や木工品などを通じて、農村部に住む5万5000人の職人と現代的な小売りチェーンを結びつける社会的企業の顔だ。
 
ファブインディア創業者のジョン・ビッセルは米国人。大手デパートのバイヤーとして手織り衣料への愛着を強め、インドに渡ってファブインディアを1960年に創業。当初は輸出が主力だったが、90年代前半から小売りに注力し始めた。
 
息子のウィリアム・ビッセルが社長の座を継いだ同年代後半からチェーン展開が本格化。それと軌を一にして商品ラインナップも拡充させ、2000年に家具や食器などのホーム用品、04年にオーガニック食品、06年に石鹸やシャンプーといったパーソナル用品、08年にジュエリーの分野に乗り出してきた。

「職人総株主化計画」は頓挫したが
 
07年度に始まった第3次経営計画には、事業の拡大より重要な課題が盛り込まれていた。職人たちを株主とするコミュニティ所有企業(COC)の立ち上げだ。ファブインディアと職人たちの協力の歴史は長く、4世代にわたってつきあいが続く職人一家もあるほど。

こうした関係の強化を目指して16のCOCが設立され、ファブインディアは各社の株式の25〜45%を持ちつつ、それ以外の株式は、自社系列のマイクロファイナンス企業の融資を通じて職人たちに取得させた。
 
だが、この取り組みは機能しなかった。ビッセル社長は、「社会的インパクトという意味では大成功であり誇るべきものだったが、事業の遂行や利益の分配という意味では問題に突き当たった。COCは自分たちの利益の最大化を図ろうとするし、我々は最適価格で買い取ろうとする。制度設計に穴があった」と振り返る。
 
現在、ファブインディアが職人との関係強化策として注力しているのは、民芸品生産クラスターの開発と生産者の生計支援だ。第5次経営計画では5億ルピー(約8億円)の予算が割かれている。
 
民芸品クラスターには先行例がある。05年、ファブインディアはマディヤ・プラデシュ州チャンデリに現地事業所を設立し、職人たちとの協働を開始。このグループの中から起業家精神を持つ職人を選び出し、彼らとの連携を特に強化した。
 
このクラスターには現在27の生産事業者が属し、200以上の手織り機が稼働している。製品ラインナップは当初、サリーと室内装飾品が主だったが、今ではカーテンやクッション、テーブルマット、ナプキン、ストール、服地などが加わった。同じような生産クラスターはすでに、国内の10カ所で展開されている。
 
こうした取り組みには一部から農村部の職人の搾取だとの批判がある。また、”本業”の小売業ではオンライン販売という新たな競合相手も登場してきた。
 
ビッセル社長は「社会的企業の経営者は社会的ビジョンについて野心的になりがちだが、そのビジョンを現実のビジネス、数字で評価できる企業活動に落とし込むことはとても大変だ」と明かしつつも、不安はないと語る。
 
ファブインディアは商品の多様化や新規出店を積極的に続けるのと同時に、独自のオンライン販売も国際展開を含めて強化している。
 
長期的に考え、継続的に学び、革新する。そして何より成功に安住しない──このような思考様式がファブインディアには織り込まれているようだ。

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Forbes JAPAN 編集部