時代とともに新しい言葉が生まれ、メディアで取り上げられると日常で当たり前のように使われることがよくあります。その中でも、ママが一度は耳にしたことがあるワードが「妊婦様」ではないでしょうか。今回は「妊婦様」というワードを自分に向けられたAさんのエピソードをご紹介します。

初めての妊娠に喜ぶAさん

Aさんは先日結婚したばかりですが、その後すぐに初めての妊娠が判明しました。結婚してすぐ授かれたことを喜ぶのも束の間、妊娠初期からとんでもなく酷いツワリに見舞われてしまいました。その中でも、毎朝の満員電車での通勤がどうしても辛く、会社にお願いをして時間をずらして出勤することになったのです。

優先席に行くと、そこには高齢者が・・・

満員電車を避けたにも関わらず、それでも平日の午前中は電車内がそこそこ混んでいて、座れる場所を探し出せませんでした。それ以上に体調が悪すぎて探すこともままならなかったので、Aさんは優先席に向かうことにしました。

なんとか優先席まで移動したのですが、すでに座っている方がいたので、「すみません、体調が悪いので席を譲っていただけませんか?」と勇気を振り絞ってお願いをしたのです。そして顔を上げると、目の前にいたのはAさんの親よりもかなり年上に見える女性2人組で、明らかに高齢者と思われる風貌の方でした。(あ、お願いする相手を間違えた!)と思ったのですが、片方の女性がAさんのカバンに付いているマタニティーマークを見て、「あらやだ、私たちここに座っちゃいけないのかしらね〜これが巷でいう妊婦様ってやつね」と言ってきたのです。

立ち去ろうとすると「恥ずかしいから、やめなさい」

泣きそうになりながらAさんが立ち去ろうとすると、もう片方の女性が「あなたね、そんなだから『老害』って言葉がテレビで取り上げられたりするのよ! 恥ずかしいから、やめてちょうだい!」と言い、女性の腕を引いて立ち上がったのです。去り際に「この人、こういうところがあって、ほんとごめんなさいねぇ。私もお腹が目立たないときが1番辛かったわ。大事にしてね!」と言って、女性2人は別の車両に消えて行きました。

妊婦様という言葉に傷つき、老害という言葉に助けられ、その空いた席に座ったAさんは「もっとタフに生きていかなきゃだな。」と親としての気持ちを新たにしたのでした。

ftnコラムニスト:南さおり