映画、演劇、テレビドラマばかりでなく落語にもチャレンジして、役者として多彩な活躍を続けている。もうすぐ古希を迎えるが、どうも「老い」という言葉はそぐわないようだ。

 「芸歴は長いんですよ。8歳のとき、児童劇団に入り、片岡千恵蔵が七変化する東映映画『地獄の底までつき合うぜ』や、子供に絶大な人気があった『月光仮面』、それに『新吾十番勝負』『大江戸の侠児』といった時代劇によく出てましたね。引っ込み思案だったけど、撮影の現場にいると不思議とそうじゃなくなるんです」

 中学のとき、大人の俳優になるんだったら子役から離れたほうがいい、と先輩俳優のアドバイスもあって、一時芸能活動から離れた。

 その期間をさしひいても、芸能生活は55年を数える。役者としての転機は、劇作家で演出家、つかこうへい氏との出会いである。

 「劇団に入って初めて稽古場にいったとき、つかさんに言われました。『お前は今までどこで芝居やってたんだ。お前の芝居にはアカがついてるから、俺のところでアカを落とせ』と。僕の中の“人間”を見抜いてたんですね。お前どっか卑劣だろうとか、嫉妬深いだろうとか、そこを的確にどんどん引き出してくれる」

 26歳から8年間、つか劇団に在籍した。得るものが大きかった。役者として脚光を浴びることになったのも、つか氏が脚本を手がけた『蒲田行進曲』(深作欣二監督)である。粋がって突っ張りながら、どこか心根の優しい俳優の銀チャン。風間杜夫ならではの「日本映画史」に残る名演技といってよい。

 「来年のNHK大河ドラマ『西郷(せご)どん』では、西郷隆盛の父役をやりますけど、『蒲田行進曲』で共演した松坂慶子さん、平田満さんとご一緒するんです。35年ぶりの共演ですね。懐かしくもあり、うれしくもありという気分です」

 現在公開中の映画『こいのわ 婚活クルージング』では、65歳の孤独な男が「婚活」にのめり込む姿を、独特の味わいで演じている。

 「会社社長の地位を追われ、心機一転、第2の人生を共に歩むパートナー探しにのめり込む。大金持ちという設定ですけど、今の世相や価値観がうまくはさまれていて、風刺あり、くすぐりありで、肩の凝らないウエルメードのコメディーに仕上がっていると思います」

 スタイル抜群で35歳という設定の雑誌編集者、片瀬那奈が陰に陽にからみ、どんでん、またどんでんの引っ張りがあり、最後まで飽きさせない。

 「広島県が県をあげて『婚活』に取り組んでいるんですよ。プロデューサーの益田祐美子さんが『富豪の婚活』というテーマで本を書こうとしていたところ、広島県が婚活『こいのわ』というプロジェクトを実施していた。そこのパーティーにもぐり込んだら、すごく面白かった。それがきっかけで生まれた映画と聞いてます」

 オール広島ロケで、広島の食べ物はもちろん、プロ野球のカープファンとの交流があり、撮影期間中、ずっと広島漬けになっていた。

 「広島県では『おせっかい』という合言葉をもとに、婚活支援に力を入れているそうです。年をとると孤独になる人が多い中、良い意味の『おせっかい』は大事ですね。見ていただければ、きっと心の芯がほんわか温かくなります」

 現在、串田和美氏が作・演出・美術の舞台『24番地の桜の園』に出演中だ。

 「アントン・チェーホフの名戯曲『桜の園』をもとに串田和美調に染めあげられた独特の舞台です。舞台の面白いところは、毎回、新たな発見があり、違う色合いがでる。まさに生き物。それが魅力ですね」

 21年前、舞台で落語家役をやったのがきっかけで、時々「落語家」として高座にあがる。

 「間の取り方でお客さんの反応ががらっと変わる。怖いけど、面白い。僕も落語の醍醐(だいご)味を感じ取れる年になったのかな」

 そういって笑うが、いまなお「永遠の青年」の風貌であることに変わりはない。(ペン・香取俊介 カメラ・桐山弘太)

 ■風間杜夫(かざま・もりお) 俳優。1949年4月26日生まれ、68歳。東京都出身。子役で活躍後、大学時代に演劇活動をはじめ、71年に劇団「表現劇場」を結成。その後、映画やドラマに活動をひろげ、映画「蒲田行進曲」(深作欣二監督)などで日本アカデミー賞最優秀助演男優賞を受賞。ドラマ「スチュワーデス物語」で人気を確立する。

 映画「こいのわ 婚活クルージング」(金子修介監督・脚本)は角川シネマ新宿など全国で公開中。「24番地の桜の園」は12月8〜10日、大阪・森ノ宮ピロティホールで。問い合わせはキョードーインフォメーション((電)0570・200・888)。