北朝鮮は、国際社会の警告を無視して、米本土に到達可能なICBM(大陸間弾道ミサイル)を発射した。軍事的制圧も見据えた、経済制裁の強化は避けられない。巨額の軍事費の一部は、海外に散った出稼ぎ労働者らが支えている。フリーライター佐野兼正氏が、美女軍団が給仕するタイ・バンコクの「北朝鮮レストラン」を直撃取材した。本国の指示なのか、強気の「値段設定」に驚かされた。

 北朝鮮直営のレストランは、バンコク市内に3店ある。いずれも、ウエートレスと、歌謡ショーの出演者を兼ねた20代とみられる美女軍団が所属している。その一軒をランチタイムに訪ねた。美女軍団はカラフルなノースリーブとミニスカート姿で、異様にスリムだ。

 「フォト、ノー!」

 スマートフォンを手にしただけで、美女に注意された。写真撮影はNGで、店内に注意書きが貼られていた。よく見ると、客席に監視カメラが向けられていて、彼女たちの視線もキツい。

 自分が写れば大丈夫かと、「一緒に記念写真を」と頼んだが、やはり「ノー!」だった。

 以前は写真だけでなく動画の撮影もOKだったが、本国の孤立化のせいか、相当神経質になっているようだ。料理の写真だけは黙認してくれた。

 北朝鮮レストランの最大の売りである「歌謡ショー」について聞くと、「午後8時からです」という。店内に7、8人ほどの客がいたので「1曲やってほしい」と懇願したが、「夜に来てください」と突き放された。

 ランチメニューは、焼き肉や焼きサバ、ラーメンなどの定食メニューが7種類あった。価格は150〜300バーツ(約520〜1040円)と、物価の安いタイにしては強気の値段設定だ。豚焼き肉定食を注文した。味はまあまあだが、割高感は拭えない。

 現地の日本人駐在員によると、「核・ミサイル開発」の強行でイメージが悪化したのか、客足は遠のき、経営は厳しそうだという。

 苦境は、メニューにも反映されていた。

 ドリンクメニューには、「Wet Towel(おしぼり) 15バーツ(約52円)」の記載が。

 前出の駐在員は「いくらなんでも、おしぼりが有料なんて聞いたことがない」とあきれた。試しに「有料おしぼり」を注文すると、どこにでもある紙製の使い捨てウエットティッシュが1枚出てきただけだった。

 げんなりして店を出た。その後、別の2店も訪ねたが、どちらも駅から徒歩20分以上の住宅街にあった。食事時だったが、客はゼロか、1組程度だった。

 今年9月の国連安全保障理事会の制裁決議では、北朝鮮の出稼ぎ労働者の新規雇用は禁じられた。美女軍団に残された時間は少なそうだ。