東西の鬼才がどんな“夢”を見せてくれるのか

東京芸術劇場の開館30周年を記念して、ルーマニア演劇界を代表する演出家シルヴィウ・プルカレーテを演出に迎え、1992年初演の野田秀樹版『真夏の夜の夢』を上演。妖精と人間たちが繰り広げる一夜の恋の大騒動が、野田ならではの鮮やかな言葉遊びと、プルカレーテのエネルギッシュな演出によってダイナミックによみがえる。

シェイクスピアの原作はご存じのとおり。アテネの公爵の結婚式が迫るなか、家臣の娘ハーミアは恋人のライサンダーと駆け落ちをする。森へ逃げたふたりを追って、ハーミアに横恋慕するデミトリアスと、彼に片思いするヘレナもまた森へ。そこには妖精の王オーベロンと女王のタイテーニアたちがいた。王はいたずら者の妖精パックに、女王のまぶたに惚れ薬を塗るよう命令。そこへ偶然やってきたライサンダーたちも巻き込まれ……。

一方、野田版では、アテネの森を富士のふもとの森に、貴族たちを割烹料理屋「ハナキン」の人々に置き換えて翻案。さらにゲーテ作『ファウスト』の登場人物である、悪魔のメフィストフェレスを物語に投入!『真夏の夜の夢』の人気キャラクター、パックの役割を盗みとり、原作ではあまり触れられない「嫉妬」や「憎悪」など負の感情も引き出していく。とはいえダークサイドが強調されるのではなく、言葉遊びの連打と重層的な展開で、観る者を切なく美しい喜劇へと引き込んでゆくのが野田戯曲の魅力。結末に向けて一気になだれ込む終盤は、むしろ希望を感じさせる。演劇がもつカタルシスを存分に味わえるはずだ。

プルカレーテは、ヨーロッパの三大演劇祭のひとつ、ルーマニアのシビウ国際演劇祭で毎年ハイライトとして作品が上演されている演出家。本水や炎を使うなど祝祭に満ちた迫力ある演出で知られており、野田が芸術監督を務める東京芸術劇場での公演もたびたび行っている。意外にもタッグを組むのは今回が初めてだそうで、東西の鬼才がどんな“夢”を見せてくれるのか。今だからこそ、の舞台を期待したい。

真夏の夜の夢

10月15日〜11月1日/東京・東京芸術劇場 プレイハウス
原作/ウィリアム・シェイクスピア 潤色/野田秀樹
演出/シルヴィウ・プルカレーテ
出演/鈴木杏、北乃きい、加治将樹、矢崎広、今井朋彦、加藤諒、手塚とおる、壤晴彦ほか
TEL 0570・010・296(東京芸術劇場ボックスオフィス) ※新潟、松本、兵庫、札幌、宮城公演あり

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《ベイジルタウンの女神》

俗世知らずの女社長が貧民街へ

1980年代の音楽活動を経て、93年に劇団ナイロン100℃を旗揚げ。軽やかなサブカルチャーの匂いを残しつつ、今では海外の長編文学を思わせる、ずっしりと重みのある戯曲で高い評価を得ている劇作家・演出家のケラリーノ・サンドロヴィッチ(KERA)。2018年秋には紫綬褒章も受章、今や日本を代表する“作家”のひとりと言っていいだろう。

そんなKERAが女優・ 緒川たまきと新ユニット「ケムリ研究室」を立ち上げた。KERA作・演出公演への出演も多く、なかでも太宰治の未完の遺作の“その後”を綴った舞台『グッドバイ』や、市川崑監督の名作を舞台化した『黒い十人の女〜 version100℃〜』などで抜群の存在感を示してきた緒川。ユニットでの新たな展開に注目だ。

共演は仲村トオルや水野美紀、朝ドラ『スカーレット』の“八郎さん”役で人気を集めた松下洸平ら、豪華な顔ぶれ。ひょんなことから貧民街で暮らすことになった女社長をコメディタッチで描く。「賑やかで誰もが楽しめる作品にしたい」というKERAの言葉を胸に、初日を待とう。

ケムリ研究室 no.1
ベイジルタウンの女神 

9月13〜27日/東京・世田谷パブリックシアター
作・演出/ケラリーノ・サンドロヴィッチ
振付/小野寺修二 映像/上田大樹 音楽/鈴木光介
出演/緒川たまき、仲村トオル、水野美紀、山内圭哉、吉岡里帆、松下洸平、
尾方宣久、菅原永二、植本純米、温水洋一、犬山イヌコ、高田聖子ほか
TEL 03・5485・2252(キューブ) ※兵庫、北九州公演あり

※上演期間は変更の可能性があります。最新の情報は、各問い合わせ先にご確認ください