なぜ、お葬式をするのか。しなくてはいけないものなのか。右肩上がりの経済成長の時代には数百万円をかけた盛大な葬儀が一般的とされていたが、近年はかつて「密葬」と呼ばれた「家族葬」が中心となり、10万円を切る略式破格プランも登場。いま「常識」と思われてきた葬儀の形式、意味が問われ始めている。折しも「コロナ騒動」の渦中、新たな試みに取り組む葬儀社や僧侶に会いに行った(撮影:朝山実)

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新型コロナウイルスで再び注目

新しいお葬式のかたちというので思い出したのは、「ドライブスルーのある葬儀会館」だ。

2017年12月に開業した、長野県上田市の「上田南愛昇殿」(株式会社レクスト・アイ)は、モスグリーンの大きな屋根と白壁が鮮やかで、ファミリーレストランかと見間違えそうな郊外型の葬儀場だ。

じつはオープン当初、東京・大阪ばかりか海外からもテレビクルーが押しかけた。葬儀とドライブスルーの組み合わせが好奇心をくすぐったのだ。

「あるテレビ局が大型バスに30人もエキストラを乗せて『撮影したい』と来られて、なかなか理解されないものだなぁと思いました」

発案者の荻原政雄さんにそんな話をうかがったのは、取材ラッシュも落ち着いたころだった。ドライブスルーと聞けばファストフード店が頭に浮かぶ。愛昇殿の「車上焼香」も形式は似ている。

車停めのスペースがあり、ホールの専用窓からタブレット端末と香炉を受け取り、車内で記帳と焼香を行う。その様子は会場内の大型モニターに映し出される。システムはシンプルで「時間節約」と捉えられがちだが、導入を決めたのは異なる理由からだった。

「葬儀の風習は全国各地で違っています。まずこのあたりの特色を知ってもらわないと理解してもらえないんですね」

荻原さんが説明してくれたのは、「骨葬」といい、火葬後に告別式を行うこの地域のお弔いの特色だった。親族や縁者以外の会葬者は僧侶の読経が始まる前に訪れ、焼香をすませると式場には残らずに立ち去る。都会から来た人たちはこの習慣に戸惑うことが多い。

そうした独特の習俗を踏まえると、ドライブスルー方式はこの地に合っているといえるが、荻原さんがあげた導入の一番の理由は「介護を必要とする高齢者が車の中から焼香できるように」だった。

荻原さん自身、老いた母親を施設に預けていた。葬儀に行きたいのだけど介護が必要だからとやめてしまう。そういう人たちに利用してもらう。「だから健康な若い人大勢に、大型バスでやって来られても」と苦笑されていた。