アルジェリア内戦下、抑圧に抗う女たち

夜中、こっそり寮から抜け出した女子大生2人は、白タクの後部座席で華やかなドレスに着替えて、ナイトクラブへ。念入りにメイクをしてはしゃぐ彼女たちの様子はまるでアメリカの青春映画の一場面のようだが、暗い夜の街にはコーランを唱える声が響く。舞台は1990年代のアルジェリア。「暗黒の10年」と呼ばれた内戦状態にあり、アルジェリア政府とさまざまなイスラム過激派との間で衝突が起きていた。数万人もの死者を出しながら、その実数はいまだに不明だ。

白タクに乗ったネジュマとワシラの普段の服装はジーンズにタンクトップなどで、髪を覆うヒジャブとは無縁だ。しかし、彼女たちのルームメイトのサミラは、お祈りもヒジャブも欠かさない。大学には全身黒ずくめの女学生たちもいる。そして今、街のあちらこちらの壁に、イスラム原理主義者により“女は全身を黒いヴェールで覆うべき”と書いたポスターが貼られるようになっていた。

ファッションデザイナーを目指すネジュマは、自分でデザインして縫ったドレスをナイトクラブのトイレで売っている。思い思いにお洒落をした女の子たちは、気持ちも高揚して、キラキラまぶしく輝く。

お洒落と服作りに夢中のネジュマだが、その日常にも暴力の影が迫ってきた。通りすがりの男から「ヒジャブを被らないと命がないぞ」と脅される。街では過激派が建物を爆破する。そして、ネジュマの大切な人があっけなく殺されてしまうが、犯人もわからない。

怒りを胸のなかにたぎらせながら信じる道を進むネジュマを演じるのは、アルジェリア出身でフランス育ちのリナ・クードリ。フランス映画『スペシャルズ! 政府が潰そうとした自閉症ケア施設を守った男たちの実話』(2019年)にも言語療法士役で出演、鮮烈な印象を残した。本作では、あどけない顔立ちと力強い表情で、自分を取り巻くさまざまな悪弊や悪なふるまいに対して毅然と闘うネジュマを、魅力たっぷりに演じる。

女性の行動を抑圧するイスラムのルールに抗う女性たちを描いた映画として、イランの『オフサイド・ガールズ』(06年)やサウジアラビアの『少女は自転車に乗って』(12年)などの秀作が思い起こされる。本作もその系譜に連なるが、ネジュマを襲う出来事はことのほか悲惨だ。

タイトルの「パピチャ」はアルジェリアのスラングで、“愉快で魅力的で常識にとらわれない自由な女性”という意味。悲劇を体験したネジュマが手にするのは、世代を超えたパピチャたちと手を携えて前に進む勇気だ。女性たちの優しくも力強い支えあいに、観客も勇気と深い感動を与えられる。

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パピチャ
未来へのランウェイ

監督・脚本/ムニア・メドゥール
共同脚本/ファデット・ドルアール
出演/リナ・クードリ、シリン・ブティラ、アミラ・イルダ・ドゥアウダ、
ザーラ・ドゥモンディ、ヤシン・ウイシャ、ナディア・カシ、メリエム・メジケーン
上映時間/1時間49分 
フランス・アルジェリア・ベルギー・カタール合作

■10月30日よりBunkamuraル・シネマほかにて全国順次公開

※公開予定は変更・延期・中止の可能性があります。最新の情報は、上映館にご確認ください