2021年9月12日、東京・両国国技館で開幕した大相撲九月場所は、白鵬、照ノ富士両横綱の対決が期待されましたが、宮城野部屋から新型コロナウイルスの感染者が出たため全員休場。新横綱の照ノ富士は無事白星でスタートを切りました。『婦人公論』愛読者で相撲をこよなく愛する「しろぼしマーサ」が今場所もテレビ観戦記を綴ります

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前回 「横綱・白鵬はコロナの影響で欠場、両大関は黒星発進。新横綱・照ノ富士のサスティナブル相撲に期待」はこちら

先輩後輩対決を逆転勝ち

大相撲9月場所中日8日目の結びの一番を見て、テレビの前で「すごいなあ」と声を上げてしまった。29歳の新横綱・照ノ富士と幕内最年長36歳の前頭四枚目・玉鷲のモンゴル先輩後輩対決である。玉鷲がのど輪で一気に照ノ富士を土俵際にもっていったのに、照ノ富士は逆転して玉鷲を寄り切った。照ノ富士はこの相撲で勝ち越しを決めた。

初日から、照ノ富士は相手をよく見て、巧みな相撲を取っている。7日目の前頭三枚目・琴ノ若戦もそうだが、相手に好きなように取らせておいて、結局、照ノ富士は勝つ。まさに「横綱相撲」で見ごたえがある。

今の照ノ富士にはそんな余裕はないことはわかっているが、その相撲を見て、私は「土俵の鬼」と言われた第45代横綱の初代・若乃花が、引退後かなりたってから自分の相撲を振り返るテレビ番組で話したことを思い出した。「土俵際まで行き『横綱あぶない!』とファンに思わせてから勝ったことがある」というのである。初代・若乃花の強さゆえの相撲ファンサービスだ。

そこまでのファンサービスは必要ないが、初代・若乃花ばりの「呼び戻し」(豪快な決まり手で当時は別名の「仏壇返し」と言う人が多かった)を、照ノ富士にやってほしい。5日目に前頭九枚目・英乃海が「後ろもたれ」、同日に前頭六枚目・宇良が「送りつり出し」という珍しい技で勝ったが、やはり実力の差を見せつける「呼び戻し」が、重厚感のある横綱にはふさわしい。