子どもがいないおじやおばの看取りを引き受けるのは、甥や姪しかいない。そんな事態に直面した人々の本音は。2人目の靖典さんは、わが子のようにかわいがってくれた伯父が急逝し……(取材・文=武香織)

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《ケース2 靖典さんの場合》
強欲な従兄弟が突然現れて

沙織さんが考えないようにしている現実を、はるかに超えた状況に直面したのが、靖典さん(48歳、仮名)だ。

独身で身軽な靖典さん。大企業に勤めていた10年ほど前、母親の兄で、やはり独身で子どももいない78歳の伯父から、「俺ももう年。少しゆっくりしたい」と、経営するアパートの実務管理を任された。

聞けば、不動産会社を仲介しているため、家賃の納入状況のチェック、月に1度の周辺の見回り、修理工事の立ち会いといった程度の仕事で済む。サラリーマンのかたわらでもできるし、月額5万円の報酬もくれるという。靖典さんは快く引き受けた。

「伯父は、妹のひとり息子である僕を、わが子のようにかわいがって。小さい頃はよく母に『靖典、借りるぞ!』と言っては、動物園や遊園地へ連れて行ってくれたんです。だから、できる範囲のことならなんでも手伝いたいという気持ちでいました」

それからしばらくして、同居していた両親が立て続けに他界。寂しさに苛まれた靖典さんは、両親の思い出が染み込む住まいを引き払った。さらに、脱サラして東京から静岡県へ移住。かねてからの夢だった漁業を始めた。約5年前のことだ。