2021年9月24日で87歳になり、来年は米寿を迎える筒井康隆さん。同人誌を主宰し、小説を書き始めたのが1960年、60年以上も創作活動を続けてきたことになる。「自分の中に培ってきた知識や発想のストックを使い果たした」として、もう長編小説は書かないと宣言、13年にわたって続けてきたブログもやめたという。一方で、1989年に上梓した『残像に口紅を』が、TikTok(ショートムービーを投稿する動画SNS)で紹介されたことで脚光を浴び、幅広い読者に支持されている。早くからインターネットを導入するなど、先駆的な取り組みに意欲を示した筒井康隆さんは、今の仕事や日常、自らの老い、これからのことをどう考えているのか。(構成=丸山あかね 撮影=本社写真部)

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もう十分にやってきたじゃないか

読者の皆さんをはじめ、編集者やカミさんなど僕を支えてくれた人たちに感謝しています。……なんて言っていると、なにやら遺言みたいなを帯びてきましたが(笑)、別に幕を下ろすわけではなく、今の自分にできることを精一杯やっていくつもりです。小説を書こうという思いはそんなに簡単に手放せるものじゃない。これは作家にとって習性みたいなものですから。

一方で、老いてきた自分を静かに受け入れる。やはりここが大事なところです。なぜ人は耄碌(もうろく)するのか。死の恐怖から逃れるため、という説もあるようだけれど、近年の生物学の分野では、人は長生きをするために耄碌すると考えられているようですね。体力温存が大事だから、あえて衰えるのだというわけです。

確かに僕が若い人と飲みに行って、同じペースでグビグビやって朝帰り、なんてことをしたら危険ですよ。耄碌したほうがいいに決まっている。僕の場合、酒はすっかり弱くなりました。焼酎かバーボンの水割りを3杯も飲んだらヘロヘロです。

いくら体力を温存したところで「死」は避けられませんが、それを暗くとらえても仕方ない。「死」を意識するからこそ、残された時間を有意義に使いたいと奮起するわけで。頭がしっかりしているうちに、「できること」と「できなくなったこと」を見極め、数少なくなった「まだできること」の優先順位を決める。こうして、老いても自分の尊厳は自ら守らなければいけません。