友人へのプレゼントを探すためにデパートへ行ったマリさん。手に取った商品に対し、店員さんからかけられた言葉について思うところがあったようで――。(文・写真=ヤマザキマリ)

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「この色大人気なんですよ。さすが!」と褒められ

先日、友人の誕生日プレゼントを探しに、近くにあるデパートへ出向いた。時間がなかったので駆け足で目星を付けていた店を訪れると、若い女性店員が近寄ってきて「何かお探しですか」と声を掛けてきた。友人へのプレゼントなんですけど、と答えたところ、女性は店内にあるいくつかの商品を私の前へ持ってきた。

おすすめという南部鉄器の香炉を手に取って黙って見ていると、「こちら、とても人気の商品です」と女性は声を弾ませ「結構売れてて、もう在庫がこれだけなんです」と言う。限定品だの、在庫僅少という言葉に弱い人の心理を突いた言葉だが、「へえ」とだけ返し、そのそばにあったメガネケースを手に取った。

「素敵ですよね、こちらも人気の商品なんです。このお色は特に売れてます」

結局、香炉もメガネケースもやめて、地味な革のカードケースを選ぶことにしたが、彼女曰く「実はこれも結構人気の高い商品」とのこと。思わず、「友人は個性的な人なんで、逆に人気じゃない商品のほうがいいんですけど」と言いかけるが、そのまま会釈だけして店を出た。

駐車場に向かって歩いている途中、春物の軽そうなセーターがウィンドウに飾られていた店にふらりと入ってしまった。店内のハンガーにかけられていたウィンドウのセーターと同じものを手に取って見ていると、「それ、めちゃくちゃ着心地いいんですよ、素材も軽いし」と店員の女性が声を掛けてきた。「私も持ってるんですけど、ヘビロテです」と笑っている。

お色も他に2色ありまして、と同じセーターの色違いを持ってきてくれたが、結局ウィンドウにかかっていた生成りの色が一番好きだと言うと、「この色大人気なんですよ。さすが!」と褒められた。多くの人と同じ色を選んだことが「お目が高い」ということなのだろうか。結局私は一番人気ではない色のセーターを購入し、帰路についた。