人気を博したドラマ「ミステリと言う勿れ」(田村由美さん漫画原作)では、菅田将暉さんが演じた主人公が、ローマ皇帝マルクス・アウレリウス(121〜180年)の古典『自省録』をカギに事件を解決しました。ドラマの反響は大きく、同書は異例のリバイバルヒット。女性や若い世代からも支持されているそうです。大ベストセラー『嫌われる勇気』(古賀史健氏との共著)の著者・岸見先生は、マルクスにも造詣が深く、NHK『100分de名著』で『自省録』の講師を務めたことも。そんな岸見先生が『自省録』をヒントに考える「孤独を克服する術」とは。

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自分の中へ引きこもる

ローマ皇帝のマルクス・アウレリウスは次のようにいっています。

「人は引きこもる場所を田舎や海辺、また山に求める。お前もそのような場所を求めてきた。しかし、望む時に、自分の中に引きこもれるのだから、こうしたことはこの上なく愚かなことだ。というのは、自分自身の魂の中よりも静謐で煩わしいものの少ない場所はないからだ。とりわけ、自分の内部をじっと覗き込むことで直ちにくつろげるようなものを持っている人はそうである。私がいうくつろぎというのは、よき秩序のことだ。それゆえ、絶えず、自分自身にこの引きこもりの場を与えよ。そして、お前を新しくせよ」 (『自省録』)

アウレリウスは、ひたすら自分の内面を見つめ、戒め、己を律する言葉を綴った手記を残しました。自分自身に対して「お前」と呼びかけているのです。人との関わりに疲れ、傷ついても、どこかに出かけなくても、自分自身の中に引きこもれば、心の平安を得ることができます。

「お前の内を掘れ。掘り続ければ、そこには常に迸(ほとば)しり出ることができる善の泉がある」 (前掲書)

人の集まりに呼ばれなかったり、正しい主張をしたために孤立したりするようなことがあっても、不幸になるわけではありません。他の人と違うことを恐れず、本当にしなければならないことを為なしうるためには、世間の常識や他の人の思わくに煩わされずに、何が善であり幸福であるかを知的に探求し、自分の内に「善の泉」を掘り当てなければなりません。