貧困、ジェンダーの不平等、虐待、過重労働や格差の拡大……。いま、国内外のさまざまな社会の歪みに対峙した小説が相次いで世に出ています。同時期に連載された角田光代さんの『タラント』、中島京子さんの『やさしい猫』も、「現実から目をそらさないで」という声が聞こえてくるような作品。題材とどう向き合うかを同世代の作家同士で語り合います(構成:内山靖子 撮影:宮崎貢司)

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国際NGOのサポーターをして気づいたこと

中島 角田さんの最新作『タラント』は、戦争やそれに伴うボランティア、パラスポーツなどを背景に物語が進んでいきます。これまでにも社会とコミットした作品は書いてこられたと思いますが、難民問題を取り上げたのははじめてですよね。

角田 私は2009年からプラン・インターナショナルという国際NGOのサポーターをしています。発展途上国の女性や子どもたちの自立支援が目的なので、現地の視察はもちろん、難民キャンプを訪ねたこともあるんですが、そこで見聞きしたものを「小説にしよう」と考えたことはなくて。

中島 以前から、そういう活動に関心があったんですか。

角田 いえ、むしろ逆かもしれない。たとえば1万円を支援団体に寄付するとして、そのうちのいくらくらいがちゃんと支援先まで届くんだろう。最初はその実態を見てこよう、というような気持ちのほうが強かったですね。でも実際に参加したら、支援活動ってそういうことばかり言っていられないんだな、と。いろいろな気づきがありました。