母の病の発症、父による老老介護、そして看取りまでを、娘が撮り続けたドキュメンタリー映画の続編が全国各地で感動を呼んでいる。監督の信友直子さんが両親の老いを見つめるなかで得たものは(構成=山田真理)

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<前編よりつづく>

「おっかあを早く家に連れて帰ってやりたい」

ところが、前作(編集部注:『ぼけますから、よろしくお願いします。』)が公開される直前の18年9月、母は自宅で脳梗塞を起こして入院することになりました。母の病状は心配でしたが、病院にいる間は父も介護から解放される。「お父さんもゆっくりすりゃあええよ」と言ったのですが……。

父は「おっかあを早く家に連れて帰ってやりたい。そのためならわしは何でもする」と言い出し、病院までの片道1時間の道を、毎日シルバーカートを押しつつ通い始めました。ベッドの脇に座って手を握って励ませば、元気になるだろうと言うのです。

それだけでも98歳にはすごいことだと思うのに、半身不随になった母が家に戻った時に「一人じゃトイレに行かれんじゃろうけん、わしがおしめを替えてやる。それには筋力を付けなきゃならん」と言って、父はかかりつけのクリニックで筋トレまで始めました。

母もリハビリのおかげで、介助があれば何歩か歩けるまでに回復。しかし残念ながらその年の暮れに、脳梗塞が再発してしまったのです。

それから半年、寝たきりで反応も少なくなった母は療養型の病院へ。転院の条件として胃ろうをすることになったのですが、私と父はそれが「延命治療」だとわからないまま同意してしまいました。

母の性格上、延命治療は望まなかったかもしれません。食いしん坊だった母が、ただ寝ているだけの日々をどう感じていたか。今も考え始めると眠れなくなることがあります。