イギリスでは6月2日から5日にかけて、女王の在位70周年(プラチナ・ジュビリー)を記念する式典が行われた。英君主史上最長の在位期間であり、国民にとっても初の祝賀行事となる。謹厳実直な性格で知られ、国内外の政治にも精通、その人生を〈奉仕〉に捧げたエリザベス2世のあゆみは、ひとつの大きな社会史でもある。

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その業績にただ圧倒される

今から20年以上前のことになる。ロンドンのセント・ジェームズ宮殿で、「ベテランのための集い」が催されると知った。ベテランとは退役軍人で、彼らの生活向上のための慈善活動である。当時で1万8000円ほどを支払うが、そこにはエリザベス女王が臨席されるという。

イギリスでは女王は身近な存在だ。切手には横顔が見られ、女王の顔を(裏とはいえ)なめて貼り付ける(今はなめなくてもよい物もある)。紙幣にも硬貨にもお顔が並ぶ。道路は「クイーンズロード」だし、学校名は「クイーンエリザベス・スクール」。公園だって「クイーンズパーク」。先日、開通した地下鉄新線は「エリザベス線」である。右も左も、女王のお顔とお名前のオンパレード。イギリスにいる限り、女王と無縁では生きていけない。

さて、私は勇んで「ベテランのための集い」に足を運んだ。シャンパンとカナッペがうやうやしく供され、宮殿内のインテリアを見て回ったりするうちに、女王がお出ましになった。小柄である。君主のイメージから大きな女性と思い込んでいたが、黒いローヒールを履いて165センチくらい。左腕をバッグに通した「女王スタイル」だ。

笑顔に赤いドレスがお似合いで、一人一人と目を合わせて「今日は来てくださってありがとう」と感謝された。その後はスタンダップコメディの芸に笑い声を立てた。女王はオーラに溢れていたが、あくまで明るく優しく、緊張気味の私たちの気持ちを和ませてくれた。