廃業した福井県小浜市唯一の造り酒屋で製造されていた日本酒「わかさ」が、市内の新会社に引き継がれ、販売を存続している。「地酒ゼロ」の危機を食い止めた形で、地元の酒を求める小売店などからの反応も上々。この会社の経営者は「地元で愛されてきたブランドを大事にしながら、小浜を元気にしたい」と今秋からの仕込みの準備を進めている。

 「わかさ」は同市木崎にあった老舗酒造会社が製造していたが昨年、日本酒の需要低迷などを理由に廃業方針を決めた。これを受け「御食国を打ち出している小浜で、地酒をなくしたくない」と、旧酒造会社の親戚らが昨年11月に新会社を設立。既に製造してあった在庫や商標を引き継ぎ、今年4月に酒造免許を取得して「わかさ」などの販売を始めた。

 新会社「小浜酒造」の吉岡洋一社長(75)によると、譲渡された「上撰わかさ」や「大吟醸わかさ」「熊川宿」などは小売店などを通じて引き合いが強く、当初想定を上回る順調な売れ行き。「神事で地元以外の酒を使うわけにはいかない」という需要もあるという。

 廃業した旧酒造会社は、50年以上前に「吉岡酒造」など二つの造り酒屋が合併して設立。新会社は同酒造の旧店舗(同市中井)に事務所を構えた。同酒造経営者の子孫で、県外で別の業界の企業経営経験もある吉岡社長は「『わかさ』は地元で愛されてきたブランドだと再認識した」と手応えを感じている。

 小浜酒造は旧酒蔵を改装して製造の準備を進めており、今秋から“新生わかさ”の仕込みを始める予定。吉岡社長は「これまでのブランドを大事にしながら、新しいアイデンティティーと販路を築き、酒造りを通したまちづくりにも貢献していきたい」と話している。