福井県福井市のJR福井駅西口の通称中央大通りに面したビルに、市地域活動支援センター「トゥモロー」がある。18歳以上のひきこもり経験者や発達障害のある人らが次々と訪れ、元気にあいさつする人がいれば、恐る恐るドアを開ける人もいる。「きょうも来られたね」。スタッフでカウンセラーの白崎久美さん(55)が笑顔で迎える。

 社会参加を支援するトゥモローは2016年4月に開所し、現在は10〜50代の約50人が利用登録している。午前中に来た人で買い出しし、昼食を準備する。ある日はご飯と野菜炒め、みそ汁、浅漬け。白崎さんは「他の利用者と一緒に料理し、食卓を囲むことも、家族以外の人と関わる練習。家で食事が出てくることが当たり前ではないと知ってほしい」と話す。

 午後は利用者同士でゲームをして過ごす。今は健康マージャンが一番人気。人と関わるのが苦手で輪に入れなければ、本を読んだり、音楽を聴いたりしながら、遠巻きに眺めていてもいい。

 ドアを開ける。昼食の準備をする、ゲームに加わる、また来ようと思う…。「小さな目標を持ってもらい、できればみんなで褒める。ひきこもりの人や発達障害のある人は家でも学校でも職場でも、ほめられた経験が少ない。トゥモローは仲間が集まり、肯定的に関わる場所です」

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 トゥモローを利用している男性(51)は、関東のIT系企業に勤めていた30代の時にうつ病になり、41歳で退職した。帰郷後、自宅でレンタルビデオやインターネットの動画を見て過ごす生活が約4年続いた。「小学校から高校まで、いい思い出がなく、友だちに会おうとは思わなかった。入退院を繰り返したし、家族以外とはほとんど関わらなかった」

 母親は年金暮らし。経済的な不安から就労継続支援A型事業所で働き始めたが、長続きしなかった。生活訓練施設にも通ったが、利用者同士でトラブルになり、スタッフの対応にも不満を感じて行かなくなった。

 県発達障害児者支援センター「スクラム福井」に相談し、トゥモローを紹介された。「ここが最後の砦と思っていた」と男性。スタッフや他の利用者を信頼できるようになるまで数カ月かかったが、今は「安心できる居場所」と感じている。

 「スタッフの方は強制せず、自分に合った目標を的確にアドバイスしてくれる。少しでも目標に近づけば、当たり前のことでもほめてもらえ、自分に少しずつ自信がついた」。不眠症だった生活も徐々に改善し、現在は就労継続支援B型事業所に通うための実習を始めている。

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 男性は、白崎さんのアドバイスで、自分の「トリセツ(取扱説明書)」を書いた。これまでの体験を振り返り、自分の状態を数段階に分けて示し、それぞれの状態で他の人に望む接し方を書いた。「自分と向き合う時間はつらかったが、生きづらい理由をもっと知ってもらいたいという思いで完成させた」。衝突することもあった母親にも渡し、適度な距離感で接することができるようになった。

 「人と関わりたいという思いはあっても、やり方が難しいから外に出たくないだけ」と白崎さん。ひきこもりの人や発達障害のある人それぞれに合った施設や事業所は必ずあると強調する。「勇気を持って最初の一歩を踏み出せば、必ず変われる。トゥモローもその一歩目の場所でありたい」