2013年に放送された福井県鯖江市が舞台のテレビアニメ「メガネブ!」をきっかけに、この春、同市内の眼鏡枠製造企業にIターン就職した18歳の女性がいる。小学生のころから眼鏡職人になりたいという夢を抱き続けてきた山形県出身の塩野星(しおの・ひかり)さんだ。「眼鏡の知識も技術も、一つ一つ吸収できる毎日が本当に楽しい」と、社会人としての第一歩を踏み出している。

 塩野さんが勤務するのは、マコト眼鏡(本社鯖江市丸山町2丁目、増永昇司社長)。小学5年のときに「メガネブ!」を見て以来、「手当たり次第に眼鏡店を見て回るようになった」というほど眼鏡が好きになった塩野さんが「一目ぼれ」した企業だ。

 塩野さんがマコト眼鏡と出合ったのは14年。母親の実家がある岩手県の眼鏡店を訪れたとき、初めて目にした同社のブランド「歩(AYUMI)」に衝撃を受けた。「すごくかけやすくて、見た目もデザインも今まで見てきた中で一番だった」と振り返る。

 高校生になっても“マコト愛”は衰えることなく、高校2年だった19年夏に母親と一緒に同社を訪問。同社は普段、会社見学を受け付けていないが「熱意に打たれた」増永社長が特別に許可。この見学によって、塩野さんの「自分でも作ってみたい」との思いが一層強まった。

 高校3年生になった昨年5月、入社希望の気持ちを増永社長に正式に伝えた。コロナ禍による眼鏡業界の打撃も踏まえ「大学を卒業してからでもいいのでは」と迷ったと話す増永社長。しかし、塩野さんが「歩」のコンセプト「かける人のことを第一に考える」をよく理解していること、また「増永五左衛門(福井県の眼鏡産業の祖とされる増永社長の曾祖父)なら産地振興を思い、採用するだろう」と思い至り、6年ぶりの新卒採用を行った。

 塩野さんは製造部に配属され、年配の職人らの指導を受けながら、眼鏡枠の組み立てや磨き方を覚えている。増永社長は「言われたことをするだけでなく、現場全体のことを考えて質問し動いてくれる」と働きぶりを高く評価。塩野さんは「歩のコンセプトを大事にした新商品を手掛けられるようになりたい」と目を輝かせている。