長時間労働やパワハラの実態を暴いた「ブラック企業」の著者で、若者の雇用問題に取り組むNPO法人「POSSE(ポッセ)」代表の今野晴貴さん(34)に、日本の働き方の現状や課題を聞いた。今野さんは「働き方改革が注目されるほど、企業の残業隠しが横行する恐れがある。良い条件ばかり提示する求人詐欺にも注意が必要」と話した。

 ―仕事が原因で精神疾患になるのはどんなケースか。

 「長時間労働やパワハラに加え、正当に自分が評価されていないという心理的負荷も大きい。未経験の業務への配置転換もきっかけになる」

 ―自殺者もいるが、仕事を辞められないのか。

 「現実を知らない人の言い分。大抵の場合、親から『働きすぎでは』と声を掛けられている。しかし必死に毎日を耐えている中、親の言葉を受け入れる余裕はない」

 「多くの場合、精神疾患と診断される前に事故が起こる。倒れたり、救急車で運ばれたり。そこで初めて本人は『まずい』と気付く。そのときに親や友達と話したり、労働相談をしたりすると助かる可能性が高まる。それをせずに職場復帰すると、再び追い込まれてしまう」

 ―パワハラ相談が増えている。

 「これまでは残業をすると、残業代が出て生活費を補填できた。出世競争にも有利だった。残業すれば報われるという信頼感の中で、労働者は抵抗しなかった。しかし今は給料が上がらず、残業をしても金銭的に報われない。このため労使関係は悪化している。頑張って働いてもらうには、パワハラをするしかないという状況がある」

 ―日本は仕事の割り振りがあいまいとの指摘がある。

 「雇用契約の段階で、職務に対する報酬は決まっていない。何となく頑張っている人は評価されて昇進していく仕組み。報酬体系や管理の仕組みを明確にすべきだ」

 「ただそれはコストがかかる。仕事が明確になると余剰人員がはっきりする。つまり転職の仕組みをちゃんとつくらないといけないし、解雇のしやすさをどう考えるかという問題もある。議論を深めていかねばならない」

 ―政府は長時間労働の是正を打ち出している。

 「残業の上限を、繁忙期に限り1カ月100時間未満、2〜6カ月なら月平均80時間以内とした。この時間数は『過労死ライン』であり長すぎる」

 ―企業は労働時間を管理できているか。

 「企業の時間管理は道義的義務はあっても、法律では義務付けられていない。明らかに法律の不備。今後は企業の残業隠しが横行する恐れがある。労働時間は変わらず、残業代がなくなったという企業は現在も相当数ある」

 ―人工知能(AI)によって、労働時間は減るか。

 「絶対減らない。失業者は増えるが、一人当たりの労働時間は長くなる。技術革新の歴史が証明している」