福井県高浜町の施設を拠点に、余暇も楽しみながら旅先で働く「ワーケーション」など、時間や場所に縛られない働き方の普及に取り組む女性がいる。4年前にドイツから古里にUターンした浅野容子さん(44)だ。「私にとって人生の成功は、自分の好きなライフスタイルで生きられること。個人の環境に配慮した柔軟な働き方は、田舎にも絶対必要だ」と力を込める。

 大学を卒業した2000年にドイツに渡った。「専門性がないまま漫然と就職することに疑問を感じた」からだ。現地の語学学校などで学び、英国で知り合った日本人との縁でドイツにあるパナソニックの現地法人に就職、社長秘書を務めた。グッチやソニーでも働きキャリアを重ねた。

 16年には、オンライン授業などで経営学修士(MBA)を取得。求人の検索エンジンを手掛けるIT企業に入社した。仕事はオンライン中心で、オフィスに卓球台が置いてあるような社員がリラックスできる環境だった。「家庭の時間もたっぷりある、ワークライフバランスの極みだった」。この時の体験が今の活動の原点になっている。

 故郷に戻ったのは17年。ドイツで生まれ、日本語を話せない一人息子のことを考えてのことだった。驚いたことに、勤め先はドイツを離れた後も日本駐在員として働くよう提案してくれた。新型コロナウイルスが世界に広がるまでの約2年半、リモートワークで仕事を続けることができた。

 帰国後は「日本人も、もっと自由に働けるはず」という思いが強くなった。リモートワークの傍ら、町の「高浜まちなか交流館」を拠点に、情報通信技術(ICT)を活用した働き方のセミナーを始めた。当初、周囲の関心はそれほど高くなかったが、新型コロナの影響で注目を集めるようになった。

 まちづくりの活動にも熱心で、約1年前からは交流館の管理運営を任されている。昨年8月には、県内での普及を目指し「福井ワーケーション協会」を設立。今年6月からは交流館をワーケーションの宿泊施設として運用する計画で、そのための準備を進めている。

 オンラインでできる仕事の幅を広げ、雇用を創出する活動にも取り組む。「自由な働き方の普及を通して、企業のデジタルトランスフォーメーション(DX)を推進し、未来につながる高浜町にしたい」

 【あさの・ようこ】1976年生まれ。高校卒業まで高浜町で暮らし、立命館大卒業後に渡独。日系企業の現地法人などで働いた後、2016年にスイスに拠点を置くビジネススクールで経営学修士(MBA)を取得。17年に帰国した。「高浜まちなか交流館」を拠点に、ICTの普及やグローバルスキルのある人材の育成などに取り組む。