福岡といえば豚骨、豚骨と言えば福岡と、必要十分条件のような知名度となっている「豚骨ラーメン」。しかし最近、福岡では「非豚骨系」なるジャンルがにぎわっている様子。現役の福岡民放局のプロデューサーが、こっそり収集してきた情報を紹介してくれる「福岡民放局プロデューサーがこっそり教える、福岡非豚骨系ラーメン探訪」第四弾は、「予定を立てて行きたい鶏白湯」特集です!ぜひ参考にしてくださいね。
飲んだ帰りにもう一杯。休みの日に思い立って。ラーメン屋さんのいいところは、そんなふうに「ふらっと」立ち寄れるところ。でも、予め都合をつけて「よし、行くぞ!」と気合を入れて食べる一杯もまた格別の味。非豚骨系ラーメン探訪、連載4回目は「予定を立てて行く鶏白湯」をテーマに3店集めてみました。
鶏白湯と豚骨、「濁っている」という共通点はあるものの、豚骨とは違う鶏ガラから煮出した鶏白湯のスープは、煮干しや昆布といった私たち日本人のDNAに刻まれたダシとの相性も抜群なのです。
【もも焼きト酒 おがた】土曜日限定! 鶏専門店の本気度が伝わる一杯
豪快に網の上で焼かれた鶏もも肉が名物、豊富なドリンクメニューとともにいただく福岡市早良区城西の「もも焼きト酒 おがた」さん。何年か前に夜訪れたときも、外はこの時期ならではのからっ風が吹いていて、焼酎のお湯割りで温まったんだったっけ。
こちらで、毎週土曜日限定で食べられる「らぁめんランチ」が絶品! との噂を聞いて、行ってきました。
地下鉄西新駅から徒歩5分、住宅街の一角にある、白い暖簾と提灯が目印。引き戸を開けると、清潔感あふれる店内と白木のカウンター・テーブルが目の前に広がります。
基本メニューは、
芳醇(醤油) 900円
淡麗(塩) 850円
極(白湯) 1000円
どれも、鶏ガラ100%の出汁がベースです。今回は「極」に味玉を追加しました。
白濁したとろみのあるスープ。そうです、博多名物「水炊き」で鶏ガラを極限まで煮込み、旨味を引き出しているあのスープと同じ。一口飲んだだけで、滋味が脳を刺激し、身体が喜んでいるのがわかります。
そして麺は、この連載でたびたび登場している「製麺屋慶史」製の全粒粉平打ち多加水麺。ツルっとした喉越しの良さが特徴です。手揉みしてひと手間加えているせいでしょうか、表面に纏うスープの量も絶妙です。
2種類のチャーシュー。とくに胸肉のしっとり加減と、厚みがかなりあるのに簡単に噛み切れる柔らかさは、鶏専門店の本気度を感じました。
麺やトッピングを完食した後も、いつまでも掬って飲んでいたいスープ。徐々にその量が減ってくると、レモンの風味が相対的に増してきて、心地よい食後感が得られました。
ちなみに、澄んだスープの「芳醇」はその名の通り、醤油の香ばしい香りと、昆布や椎茸のエキスが効いていて、こちらもいろんな味を楽しむことができます。
【もも焼きト酒 おがた】
■TEL:092-851-2840
■住:福岡市早良区城西1-8-20
■営(らぁめんランチ):土曜11:30〜14:00(月によって変わります)
【鶏白湯そば まつ尾】火曜日だけオープンする鶏白湯煮干しそば専門店
福岡市博多区東比恵、福岡都市高速博多駅東ランプの出入り口近くにある「中華そば かなで〜鶏だし編〜」は行列ができる人気店。ここは毎週火曜日だけ店名を「鶏白湯そば まつ尾(び)」とし、メニューを変えて営業しています。
オーナーは「かなで」と同じ松尾龍太郎さん。いわゆる間借り営業ではありません。人気店の曜日限定メニュー、気になりますね。
ずばり
鶏白湯煮干しそば 880円
一本勝負です。
泡立つ鶏白湯スープから立ち上る湯気の香りは煮干し。この視覚と嗅覚のギャップに、脳内回路が一瞬混乱しかけますが、気を取り直して「いただきます」。
スープを口に含むと広がる、濃厚な鶏と煮干しのコク。さらに、海苔のふわっとした優しい香りもあとからついてきます。このテイスト、高齢者にもきっと好まれるでしょう。
麺は喉越しのいい中太ストレート。スープとの相性、バッチリです。おっと、忘れちゃいけません。早めに食べておかなきゃいけないトッピングがありました。
ピンク色が美しい、低温調理のチャーシュー。店の壁には「熱々スープに浸していると熱が入り、肉質が固くなってしまうので、なるべく先に召し上がっていただけるとやわらかいままでおススメです」との注意書き。たいてい「チャーシューは中盤以降に食べる派」の私にはありがたいですね、こういうの。おかげでしっとりジューシーなチャーシューを味わうことができました。
そして、麺を食べ終えた後にもお楽しみ。ご飯をスープに投入し、卓上のブラックペッパーを振りかけます。あぁ、もうこれ見ただけで美味しさが伝わりますよね。週に一度しか味わえない鶏白湯煮干しそば。訪れたからにはぜひこのリゾット風のご飯まで味わってくださいね。
【鶏白湯そば まつ尾】
■TEL:092-441-1886
■住:福岡市博多区東比恵2-8-23
■営:火曜11:00〜15:40
【御忍び麺処 nakamuLab.】完全予約制でいただくカプチーノのような一杯
通りすがりでは絶対たどり着けないし、仮にたまたま場所を知っていても、予約をしておかないと入れないラーメン店が、福岡市に隣接する那珂川市にあります。店名は「御忍び麺処 nakamuLab.(ナカムラボ)」。インスタのDMで予約して、その返信に書かれている住所をナビに入れ、着いたところは駐車場。周囲にあるのは数軒の民家だけです。そのうちの一つに近づいてみると…。
ありました、「ナカムラボ」の文字と、この連載ではお馴染み「製麺屋慶史謹製」と書かれた2枚の看板が。扉を開けて玄関に入ると…やっぱり普通の民家です。思わず「ごめんくださーい」と声を出してしまいました。
「まっすぐ奥へどうぞ」という声に導かれ、案内されたのは大小3つの座卓が並べられた6畳間。厨房、いや台所で先客のラーメンを作っている店主のほかには店員はいないようで、そのラーメンが出されるのを待って注文をします。今回は代表メニューの「鶏白湯soba」と「餃子四個」をいただきます。
真っ白い深めの鉢がスッと差し出され、中を覗くと泡立つスープ。チャーシューの赤、青菜の緑、そしてレモンの黄色と、色のバランスが最高です。映えますね〜この盛り付け。
まずは、スープを一口。カプチーノを連想させるようなふわふわのミルキーな舌触りと滑らかな喉越し。そして、鶏白湯なんだけど、立ち上る香りは和風です。あとで店主の中村聡志さんに尋ねると「昆布と椎茸、鰹から出汁をとっています」という答えでした。ちなみに、店のインスタグラムなどによると「スーパーで買えるもので最高の味を」をモットーにしているのだそうです。いやこれ、最高すぎるでしょ。
そして、麺屋慶史製の特注麺。小麦由来の甘さを存分に感じる、優しい味わいでした。食べ進めていって、減っていくのが惜しいと感じます。ただ、ご心配なく。替え玉もしてもらえますし、スープに投入する白飯も用意しています。
そして、スープの中に隠れていたのは麺だけではありません。しっとりとした鶏チャーシューもです。麺もチャーシューも青菜も、どれもそれぞれの個性を主張しつつ、互いに打ち消し合わない見事なバランス。予約をして、車を走らせてくる価値ありの一杯でした。
もっちりとした皮の一口餃子。ニンニクがしっかり効いていて、こちらもぜひどうぞ。
【御忍び麺処 nakamuLab.】
■TEL:090-4358-1696
■住:那珂川市別所1067-8
■営:11:00〜15:00/18:00〜21:00(完全予約制)
著者:宮岡朋治 (福岡民放局プロデューサー)