いつの時代でも「カフェ」という存在は人々をトリコにします。近年のSNS人気も相まって、おしゃれなカフェ巡りを楽しむ女性も多い中、にわかに脚光を浴びているのが「昭和レトロな喫茶店」。中年以上の方はノスタルジックを感じ、若者にとってはおしゃれなカフェにないレトロ感が斬新だと感じるんだそうです。そこで福岡に今なお現存する「昭和レトロ喫茶店」をピックアップしてご紹介していきたいと思います!

西新駅から徒歩1分!明治通り沿い「脇山口交差点」そばの赤い看板が目印

 

今回ご紹介する「珈琲伊藤」があるのは、福岡市営地下鉄の真上を走る「明治通り」の「脇山口交差点」のそば。

福岡有数の進学校「修猷館高校」の向かいにあります。

最寄駅の地下鉄「西新駅」からは徒歩1分。

UCCの赤い看板が目印です。

 

 

クラシカルな雰囲気のお店を、親子2代で切り盛りしている

 

シックなブラウンとレンガを基調としたクラシカルな雰囲気の店内。

左手にはカウンター席、右手と奥にテーブル席があります。

西新エリア有数の喫茶店とあって、店内はいつもたくさんのお客さんで賑わっています。

写真中央のマスク姿の男性が創業者の伊藤康男さん。

昭和20年生まれの御年78歳ながら、現在もお店に立たれています。

 

 

そしてカウンターの中でテキパキと業務をこなしているのが康男さんの息子・伊藤稔さん。

親子共々、白シャツ&黒い蝶ネクタイの昔ながらのウエイタースタイルが凛々しくて素敵なのです。

 

 

カウンター裏にある背の高いカップボードには、様々な種類のコーヒーカップがズラリと並んでいます。

その半数は常連さんが持ち込んだマイカップなんだそう。

店内の所々には美しい生花も飾られており、シックでクラシカルな雰囲気の店内に彩りを与えてくれています。

 

 

46年前の創業当時に掲げられていたという、実に味のある木彫りのネームプレート。

現在もレジカウンターの上でその姿を見ることができます。

 

コーヒーチケットで大ブレイク!珈琲伊藤の歴史

珈琲伊藤の創業から4年後、1981年当時の西新・明治通りの街並み

画像出典:https://smtrc.jp/town-archives/city/nishijin/p03.html

 

珈琲伊藤が創業したのは1977年。

先代店主の康男さんは福岡工業大学在学中から飲食業に従事し、卒業後はかつて東区箱崎にあった「西日本スポーツセンター」のレストラン部門や、かつてRKBが経営していた喫茶店「ミューズ」の責任者を経て、30歳で自らの店を持つことを決意。

当時は大橋・香椎・西新は福岡の副都心と呼ばれ、開発が進んでいることに着目。

3つの街でリサーチを進める中、たまたま西新で現在の場所に出会い、32歳で「珈琲伊藤」を開業されました。

 

しかし、当時の西新は20店ほどの喫茶店が乱立する激戦区。

近隣には修猷館高校・西南大学・修猷予備校などがあり、多くの学生で賑わっていたそうです。

 

そんな喫茶店激戦区の西新で他店舗と差別化するため、人通りや学生の動向を徹底的にリサーチ。

その結果、他店舗ではやっていない「コーヒーチケット」の販売をスタート。

コーヒー一杯が250円だった当時、15枚綴りのコーヒーチケットを2,500円で販売したところ、これがヒット。

 

次に他店舗にない新商品として「ホットプレスサンド」の提供もスタートさせ、こちらも大ウケ。

さらに数年後、福岡市営地下鉄が開通し、近くに西新駅ができたこともあり、お客さんはみるみる増加。

珈琲伊藤は全盛期を迎えました。

 

開業から18年後の1995年には息子の稔さんがお店に加入し、9年間在籍。

その後はしばらく関西方面で飲食業に従事しておられましたが、正式に家業を継ぐために帰福。以降は、親子2代でお店を営んでおられます。

 

オリジナルのブレンドコーヒーをネルドリップで抽出

 

コーヒーはUCC指定の豆をオリジナルでブレンド。抽出は創業当時からネルドリップ抽出にこだわっているそうです。

ネルドリップとは、ネルシャツでもお馴染みの「フランネル」という柔らかい手触りと適度な起毛を持つ織物で作ったフィルターを使った抽出方法のこと。ペーパーフィルターよりもやや深めの袋状になっているので、コーヒー粉が広がらず中央に寄り、さらに厚みのある層をお湯がゆっくり通過してゆくので、より濃度感のある抽出が実現するのです。

 

参考:https://www.ucc.co.jp/enjoy/brew/neldrip.html

 

 

ネルドリップ抽出のブレンドコーヒー「伊藤ブレンド」は500円。厳選した豆を独自にブレンドしたもの。この伊藤ブレンドを含むオリジナルコーヒーは全5種類あり、他にも「ブルーマウンテンNo.1」や「ハワイコナ」といった珍しいストレートコーヒーが全8種類、「ウインナーコーヒー」や「モカ・ジャバ」といったバリエーションコーヒーが全5種類がラインナップされています。

 

 

店頭ではコーヒー豆を販売中。定番の「オリジナルブレンド」は100gで700円。

ちなみに毎週水曜日は「コーヒー豆2割引デー」でお得なのです!

 

全6種類!看板メニューは具材の詰まった「ホットプレスサンド」

 

 

創業当時から看板メニューとなっている「ホットプレスサンド」は、一切作り置きをしておらず、オーダーを受けてから一から作るのをモットーとしています。

◎ミンチにキャベツとオニオンのカレー風味の「ミートローフ」
ツナとオニオンのまろやかな味わいの「ツナ」
◎コンビーフとオニオンの甘みがベストマッチな「コンビーフ」
◎チーズ・ハム・オニオンの王道スタイルの「キャンパス」
◎ボイルドエッグにキュウリ、オニオンのマヨネーズ風味が特長の「エッグドール」
◎チキン・キュウリ・オニオンのカレー風味の「ケンタッキー」 の全6種類。

オーダーが入ると具材をパンに挟んで耳をカットし、専用のプレスサンドメーカーで焼き上げます。

 

 

こちらがホットプレスサンドの完成形。

今回は一番人気の「ミートローフ」をチョイスしてみました。

具材がぎっしり詰まったサンドに、ホイップクリームを絞ったパンの耳、そしてサラダが付いて700円。

コーヒーor紅茶付きのセットなら800円です。

 

 

見てください!この厚み!ミンチとキャベツとオニオンがぎっしりと詰まっています。

片手でも食べやすく、ボリュームもたっぷりなので、食べ応えアリアリなのです!

 

 

そして、珈琲伊藤のホットプレスサンドの特長が、ホイップクリームを絞ったパンの耳が添えられているところ。

カットしたパンの耳が勿体無いので、ホイップクリームを絞ってお客さんに提供してみたところ大好評。以来、ずっとこのスタイルを続けているそう。

 

 

このように、ホイップクリームをたっぷり乗せていただきます。

1つのメニューで2種類の味が楽しめるので、ちょっぴりお得な気分になれるんですよね。

なお、ホットプレスサンドだけではなく、ワッフルも人気とのこと。

こちらはプレーン・チョコバナナ・キャラメルナッツ・抹茶あずき・ブルーベリーの全5種類があり、単品は600円より。セットは700円より。

 

最後に、現在の客層をお聞きしたところ、基本的には大学生や昔ながらの常連客やご近所のマダムが中心ながらも、近年はSNS人気もあって、SNSを見てわざわざ足を運んでくる若者も増えているということでした。

 

創業から46年。今や西新エリアを代表する老舗喫茶店となった「珈琲伊藤」。これからも変わらないスタイルで、末長く続いていってもらいたいお店です。

 

 

珈琲伊藤

住所:福岡市早良区西新5丁目1-35

営業時間:8:00〜21:00

電話番号:092-823-0325

定休日:木曜日

 



著者:久原茂保