『武士のまち・福岡』と『商人のまち・博多』の〝双子都市〟である福岡市では、天神ビッグバンと博多コネクティッドが、都心再開発の両輪として動き出しています。今回、博多コネクティッドに至るまでの道のりもたどりながら、博多コネクティッドで変貌していく博多駅エリアの現状をレポートします。

前史01:初代博多駅は現在地から北西へ600mの出来町公園付近

出典:福岡県立図書館所蔵『福岡市明細図』(1890年制作)高須徳七(著作図画者)林芹介(発行者・印刷者)

2022年は、日本で鉄道が開業して150周年という節目の年だ。
九州では、日本で鉄道開業した1872年から17年後の1889年12月に九州鉄道が博多駅〜千歳川仮停車場を開業させたことが始まりだった。

九州鉄道の開業時に誕生した初代博多駅の駅舎は、旧博多部の南限にあたる承天寺境内南端部、現在の出来町公園付近にあった。
当時、1889年4月からの市制施行に際して「福岡市」にするか、「博多市」にするかという市名論争が、前年から巻き起こっていた。
県令によって博多・福岡をまとめて「福岡市」として市制を施行したものの、福岡市議会において市名変更が議論されたこともあり、九州鉄道の駅名を「博多駅」とすることで和解を図ろうとした経緯もあるという。
開設時の初代博多駅から南東へ600メートルに位置する現在地に博多駅が移って来たのは、博多駅の高架移転と近代的な市街地形成を目的とした博多駅地区土地区画整理事業によるものだ。

前史02:博多駅区画事業で誕生したビル群が更新期となる

1958年3月に福岡県の告示で正式決定して着手した博多駅地区土地区画整理事業は1970年3月までの間、4次にわたる事業計画の変更を行った。
そして、対象エリア267ヘクタールに事業費110億円を投じ、道路や公園、広場の整備・改善と宅地の利用増進を図った。

〝九州の陸の玄関口〟にふさわしい都市景観の街並みを目指し、高層建築物の設置に関する条例を新駅周辺地区で定め、高層建築物の建築促進や各種公共建築物の誘致にも取り組んだ。
その結果、今日のようなビル街を形成したという経緯がある。

1963年12月の博多駅移転や1975年3月の山陽新幹線開通に合わせて博多駅周辺地区で建てられたビルも多く、これらの建物は築50〜60年を経過している。
1968年の都市計画法制定で建築基準法が改正されて、容積率制限が導入された。
このため、容積率の適用以前に建ったビルは建て替えると、現行の建築基準法による容積率基準が適用されて現状よりも床面積が小さくなる場合もあった。
この結果、耐震性やセキュリティに課題を抱えながらも博多駅周辺の更新期を迎えたビルの建て替えが進まなかった構図は、天神地区と同じだった。

博多コネクティッドが2019年から10年計画でスタート

2011年3月の九州新幹線開業で駅ビルを中心に賑わいをみせた博多駅周辺は、九州の陸の玄関口として更なる発展が期待されている。
地下鉄七隈線延伸やはかた駅前通り再整備などの交通基盤の拡充に合わせて、容積率などの規制緩和による耐震性の高い先進的なビルへの建替促進を図っていくと共に、歴史ある博多旧市街との回遊性を高めることで都市機能の向上を図っていく構想が持ち上がった。

具体的には博多駅から半径500メートル内で容積率の緩和を図り、天神ビッグバンと同様に先進的なビルへの建替促進や交通基盤拡充で都市機能の向上を図り、博多駅の賑わいを周辺に〝つなげていく〟プロジェクトが『博多コネクティッド』だ。

福岡アジア都市研究所の調べによると、博多コネクティッドの対象エリア内に1975年以前に完成した6階建以上の延床面積3,000平方メートル超の対象ビルは20棟あった。
これらのビルがすべて建て替わった場合、延床面積で従来の34万1,000㎡から1.5倍の49万8,000㎡となり、雇用者数も同3万2,300人から1.6倍の5万1,600人に増えると試算した。
博多コネクティッドによる建設投資効果は2,600億円に上り、その後毎年5,000億円の経済活動波及効果が発生すると推計する。

2019年5月、更新期を迎えたビルの建て替えを促すインセンティブ制度である博多コネクティッドボーナスを創設した。
博多コネクティッドでは、容積率緩和制度の拡大版であるボーナスを適用するための竣工期限は2028年末となっている。

博多コネクティッドボーナス


引用:福岡市資料『容積率緩和制度(都心部機能更新誘導方策)の拡大』

①福岡市『ハイクオリティホテル建設促進制度』の第1号ホテル・都ホテル博多

画像提供:株式会社近鉄・都ホテルズ

2019年1月から始動した博多コネクティッドのエリア内で先陣を切って誕生し、2019年9月22日に開業したのが『都ホテル博多』だ。
博多駅筑紫口から徒歩1分の立地にあり、1972年から2016年3月まで営業していた博多都ホテルを建て替えた新たなホテルは、「緑と水と光のホテル」をコンセプトとする。
外観に豊富な緑を立体的に配置し、九州の雄大な自然をモチーフに屋上から『白糸の滝』をイメージした高さ8メートルの人工滝が流れ落ちる。

ホテルのフロア構成は、地下1階〜2階に商業施設、3階にフロント・ロビー・カフェ、5〜12階に客室、最上階の13階にはレストラン・バーに加えて天然温泉のスパエリアにプールやジェットバス、足湯、内湯とサウナなどを完備する。

福岡市が推進する『ハイクオリティホテル建設促進制度』の第1号に認定されており、全室30㎡超で内装や設備に福岡・博多の伝統を取り入れて、博多織をモチーフにした絨毯や小石原焼の湯飲みなどを備える。

②JR九州ホテルズの宿泊型ホテルとして最上位ブランドのザ・ブラッサム博多プレミア

画像提供:JR九州ホテルズ

2019 年9月25日、博多駅博多口から徒歩7分の立地に『THE BLOSSOM HAKATA Premier』が開業した。
JR九州ホテルズの宿泊型ホテルとして最上位ブランドである『THE BLOSSOM』として誕生したTHE BLOSSOM HAKATA Premierは、 地上 14 階・地下 1 階で客室数 238 室だ。

1〜2階は飲食店舗、3階は地域のコミュニティ活動の促進に寄与する『博多のまちの会議室』とオフィス、4〜14階はホテルで、最上階の14階にはクラブフロアにあたる『HAKATA Floor』を設ける。地下1階は駐車場と駐輪場となっている。

THE BLOSSOM HAKATA Premierも福岡市のハイクオリティホテル建設促進制度の認定を受けており、客室の半数以上が 30 ㎡超となっている。
和のデザインを取り入れた大浴場をはじめ、日本や博多の文化を感じる上質な空間デザインが特徴だ。

③博多ビジネス街と歴史ゾーンを結ぶ新しい和デザインビルの九勧承天寺通りビル

画像提供:九州勧業

博多駅から御供所町交差点までの500メートルが承天寺通りだ。
『博多千年門』が一角に構える承天寺通りは、博多駅地区土地区画整理事業の実施で承天寺の境内を二分する道路工事で生まれた通りだ。
博多コネクティッド始動の翌2020年4月に開業した『九勧承天寺通りビル』は博多駅付近の博多ビジネス街と承天寺近辺の歴史ゾーンを結ぶ承天寺通りに面する。

〝新しい和のデザイン〟をコンセプトとする九勧承天寺通りビルは、高層部で障子や枡格子など和をモチーフとした細いフレームを採用してオフィスの先進性と上質感を表現する。
一方、低層部は木調の軒天井や濃灰色の柱型を取り入れて歴史ゾーンの街並みに配慮し、東側にピロティを設けることで街路との一体感を打ち出す。

九勧承天寺通りビルは、公開空地を設けることで福岡市都心部機能更新型総合設計制度に基づく容積率の割り増しを受けている。

④福岡市内で三菱地所が初めて開発したオフィスビル、博多深見パークビルディング

画像提供:三菱地所

三菱地所株式会社が、深見興産株式会社と取り組んだ『(仮称)博多駅前4丁目計画』で2021年2月に完成した建物が、三菱地所の福岡市内で初めてのオフィスビル開発である『博多深見パークビルディング』だ。
九州新幹線の博多駅乗り入れに合わせて整備された博多駅につながる歩行者デッキは今回、博多深見パークビルディング2階にも延伸された。
その結果、JR 博多駅や博多バスターミナルへスムーズに移動できるようになった。

地上13階・地下1階の建物のうち、1〜2階は商業ゾーンで人気ベーカリーも出店する。
3〜13階のオフィスフロアにヤフー株式会社も入居し、屋上に就業者向けテラスを整備することでリフレッシュスペースとして提供する。

歩行者デッキで結ばれた建物2階に設けた広場の天井部の一部にグループ会社・MEC Industry株式会社が開発した木製建材『MIデッキ』を採用する。
三菱地所による特許出願済みのコンクリート打設用型枠材であるMIデッキ は、そのまま内装仕上げ材に転用でき、環境に配慮した施工負担も軽減した商品だ。
天神ビッグバンでイムズ跡地に複合ビルを建設する『(仮称)天神 1-7 計画』の外装材としても九州産の木材を用いたMEC Industry製の大型パネルの採用を予定している

⑤博多コネクティッドの規制緩和第1号ビル、博多イーストテラス

『博多イーストテラス』南側建物外観(川澄・小林研二写真事務所)

博多コネクティッドでの規制緩和第1号である『博多イーストテラス』は、2022年8月に完成・オープンした。

JR博多駅筑紫口から徒歩2分という立地に登場した博多イーストテラスは、NTT都市開発と大成建設が開発した地上10階建ての複合オフィスビルだ。

かつての大型ボウリング場であり、かつプロレス界で〝西の聖地〟とも呼ばれた『博多スターレーン』の跡地に博多イーストテラス建っている。
正面には、博多駅エリアで最大級となる約900㎡のオープンスペース『サウスガーデン』を設けている。

建物北側にある『ノースガーデン』と結ぶ南北通路は、エントランスホールと一体的に各種イベントの会場として活用していくことも可能だ。

博多イーストテラスの1階には、スモールオフィスと九州初のノルウェー発カフェが入居する。

2〜10階は建物の中心部に制震構造を設けることで各フロアに柱の無い680坪(2200㎡)超の空間を提供する。また、屋上に入居企業専用の多目的スペース(スカイデッキ)を設けている。

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参照サイト

財団法人福岡アジア都市研究所「福博(福岡・博多)が連携する都市のまちづくりとその戦略に関する研究Ⅰ」

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著者:近藤 益弘 (編集者兼ライター)