14年にオリックスから戦力外通告された八木智哉さん、06年には新人王

 プロ人生の岐路に立たされた選手が、再びNPBの舞台を目指して挑む「12球団合同トライアウト」。今オフは7日に開催され、56人が参加した。ここまでNPB球団との契約にこぎつけたのは数人の“狭き門”。それでも選手たちは、わずかな可能性にかけてグラウンドに立つ。かつての“合格者”は、トライアウトの舞台に立つまでの準備とメンタリティの重要さを説く。

 現中日スカウトの八木智哉さんは、2014年にオリックスを戦力外に。その年は日本ハムからトレードで移籍して2シーズン目で、1軍登板は3試合にとどまっていた。「自分が戦力外になるかは、選手も分かりますよ。夏前から起用のされ方が変わることもあるので」と言う。当時31歳。「日本ハム、オリックス以外にまだ10球団もある。頑張ろうって感じでしたね」と笑って振り返る。

 創価大から2005年のドラフト希望枠で日本ハムに入団。1年目から12勝8敗、防御率2.48の成績を残し、新人王に輝いた。ダルビッシュ有投手(現カブス)と先発ローテの双璧をなし、チームのリーグ優勝と日本一に貢献。しかし、2年目以降は左肩痛に悩まされるシーズンも多く、2013年にトレードでオリックスに移籍。新天地でも再起のきっかけはつかめず、選手生活の分岐点を迎えた。

 戦力外通告を受けてから、トライアウトまではわずか12日間。少ない準備期間でも全く焦りがなかったのは、先を見据えた調整を心がけていたからだという。「シーズン中から他球団のスカウトは見ているなと思っていたので、2軍では防御率1点台で終わろうというのを目標にしていました」。実際、その年はウエスタン・リーグ32試合に登板して6勝1敗、防御率1.97を達成。“事前アピール”に抜かりはなかった。

ドキュメンタリー番組「プロ野球 戦力外通告」が当時密着

 何より、精神的に追い込まれていなかった。「自分はまだできるっていう実感はあったので、不安というよりもワクワクみたいな気持ちで臨めました」。トライアウトでは打者4人を三振、投ゴロ、遊ゴロ、遊飛に抑える完璧な投球。翌日に中日から連絡をもらい、自身3球団目となる新天地にたどり着いた。

 戦力外からトライアウトまでの軌跡は当時、TBS系のドキュメンタリー番組「プロ野球 戦力外通告」が密着。6年の時をへて、あの時の思い出や裏話を振り返る特別企画が実現した。タレントの上田まりえさんが対談相手を務め、23日からTBSの公式YouTubeチャンネルで順次公開されている。今年の地上波の番組は、29日午後11時10分から放送。八木さんは「毎年見ています」と視聴者として楽しみにしている。

 中日で2017年までプレーして現役を引退した八木さん。「どう自分の色を出していこうかと、あらためて生きる道を考えさせられた3年間でした」としみじみ振り返る。弱肉強食の世界を生き抜いていくため、他人にはない魅力を見出す必要性。それは、現在スカウトとしてアマチュア選手を見る際の視点にもつながっている。

 プロ選手の窮地から再起へとつながることもあるトライアウト。多くの選手がチャンスをつかめない中、八木さんのように転機を迎える場合も。選手たちは人生を賭し、たった数球、数打席に執念を注いでいる。(Full-Count編集部)