三塁側アルプススタンドから大崎ナインに声援を送った谷川さん

「島の宝だからねぇ〜!!」

 選抜高校野球3日目第2試合。初出場となった大崎(長崎)のアルプススタンドには“我が子”を見守る“おかあちゃん”の姿があった。

 谷川敦子さん(63)は大崎高校の卒業生。現在も高校のすぐそばに住んでいる。「挨拶もいいんよ、この子たち〜!」毎日のように顔を合わせる大崎ナインは自慢の“我が子”だ。

 仕事の合間を縫ってはグラウンドで練習を見学し、初めて制した九州大会もほとんどを球場で応援した。

「私らの時は1学年で250人ぐらいおったけど今は全校生徒で110人くらいだからねぇ。でもね、野球部は当時は人数はおったけど甲子園なんてとんでもない! すごいよ! この子たちは!」

 100円ショップで購入した紙筒にブルーのテープを巻いたオリジナルスティックを手に大舞台に立つ“我が子”にエールを送る。攻撃が終わるとスティックをスマートフォンに持ち替えて撮影。「(乙内)翔太の笑顔はかわいいんよ! あ〜忙しい!!」。島のおかあちゃんは大忙しだ。

「もうね、私はこの子たちに胸がキュンキュンなんよ!」

 大島から3月20日に関西入り。雨で試合は順延となったが、当初の試合予定日だった21日も、おかあちゃんは甲子園へ。「汗かきながらグッズ買いよったよ〜1万800円ほど使ったと思う。ハハハ!」この日ももちろん、帽子、タオル、マスクとOhsakiグッズを身にまとった。

 九州大会無失策だった大崎だが、選手たちにとっては初めての聖地・甲子園。九州大会決勝で破った福岡大大濠との再戦は、2回に失策をきっかけに2点を許した。「都会にのまれとるね、緊張しとるよ。いつもと違う」。祈るようにグラウンドを見つめるおかあちゃんの想いが通じたのか、我が子たちは3回以降ランナーを背負いながらも得点を許さなかった。

 6回が終わって2点のビハインド。均衡した展開が続き、いよいよここからというところで「もう帰らんといかんのよ〜」。雨で順延になったことで、島へ帰る飛行機の時間が来てしまったという。「また夏に帰ってくるから、じゃああとは応援よろしくね!」。その直後の7回。我が子たちは3本のヒットなどで聖地初得点を挙げた。

 試合はそのまま1-2で敗れたが、島の宝物には三塁アルプスから温かい拍手が送られた。「もうね、私はこの子たちに胸がキュンキュンなんよ! 今日は若返ったわぁ〜!」。こう思ったのは谷川さんだけではないはずだ。大島のみんなが夢に見た舞台で躍動した選手たちは、勝利にも代えがたい最高のお土産を持たせてくれた。(市川いずみ / Izumi Ichikawa)

市川いずみ(いちかわ・いずみ) 京都府出身のフリーアナウンサー、関西大学卒。元山口朝日放送アナウンサー時代には高校野球の実況も担当し、最優秀新人賞を受賞。NHKワースポ×MLBの土日キャスター。学生時代はソフトボールで全国大会出場の経歴を持つ。