6球団の月間成績は阪神がトップ、序盤に白星重ねる

 ルーキーの活躍が目立った5月のセ・リーグの「月間MVP」をセイバーメトリクスの指標で選出してみる。選出基準は打者の場合、得点圏打率や猛打賞回数なども加味されるが、基本はNPB公式記録が用いられる。ただ、打点や勝利数といった公式記録は、セイバーメトリクスでは個人の能力を如実に反映する指標と扱わない。そのため、セイバーメトリクス的にどれだけ個人の選手がチームに貢献したかを示す指標で選べば、公式に発表されるMVPとは異なる選手が選ばれることもある。【鳥越規央】

 まずは、5月のセ・リーグ6球団の月間成績を振り返る。

○阪神:11勝6敗2分
打率.255、OPS.736、本塁打22、援護率4.03
先発防御率4.02、QS率31.6%、救援防御率4.45

○巨人:10勝9敗3分
打率.251、OPS.723、本塁打31、援護率3.70
先発防御率3.75、QS率40.9%、救援防御率3.96

○中日:9勝8敗4分
打率.254、OPS.691、本塁打11、援護率3.38
先発防御率3.18、QS率47.6%、救援防御率3.03

○ヤクルト:9勝9敗3分
打率.249、OPS.711、本塁打15、援護率4.50
先発防御率3.70、QS率47.6%、救援防御率4.48

○DeNA:9勝10敗3分
打率.266、OPS.767、本塁打31、援護率3.82
先発防御率5.35、QS率36.4%、救援防御率3.84

○広島:4勝7敗4分
打率.259、OPS.663、本塁打6、援護率3.90
先発防御率3.89、QS率53.3%、救援防御率4.24

 阪神は3-4月に続いて5月も好調をキープ。特に前半9試合で6勝1敗2分と5月の貯金5を作っている。15日以降の10試合は●◯●◯●◯●◯●◯の5勝5敗と一進一退だったが、その要因は5月15日以降の先発防御率4.98、QS率20%、救援防御率5.34と投手陣に綻びが出始めていることにあるようだ。打撃陣との噛み合わせの良さで星を重ねてはいるが、首位固めに不安は残る。

 巨人も勝ち越してはいるが、1試合につぎ込む救援投手数が多かった。1試合当たりの救援投手は巨人がリーグ最多の4.4人。他の5球団は阪神3.2人、中日3.3人、DeNA4.0人、広島3.1人、ヤクルト3.5人だった。

 開幕から大きく出遅れたDeNAだが、5月の打撃陣はリーグトップのOPS.767を記録した。オースティン、ソトの両外国人が本来の力を発揮し、ルーキーの牧秀悟、1番を任されることが多い桑原将志、25日に復帰して2番を打つ伊藤光、そして主力の佐野恵太、宮崎敏郎とスタメン7人の月間OPSが0.7以上と、切れ目のない打線を形成した。ただ、先発防御率がリーグ唯一の5点台、初回失点率も36.4%で初回得点率の27.3%を上回る。先手を取られて後塵を拝す苦しい試合展開であることには違いなかった。

 投手陣が好調だったのは中日。先発、救援とも防御率は3点台前半を記録した。援護率はリーグ最下位だが、5月16日以降は6勝2敗3分と貯金を重ねてきている。

 月間MVPは6月9日に発表される予定だが、ここではセイバーメトリクスの指標による5月の月間MVP選出を試みる。

オースティンはOPS&出塁率で1位、“月間新人王”は虎ドラ1佐藤輝

【打者部門】

 打者評価として、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりも、どれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」を用いる。

各チームのwRAA上位3人は以下の通り。
阪神:佐藤輝明6.32、サンズ6.00、近本光司4.64
巨人:岡本和真4.09、吉川尚輝3.92、坂本勇人3.80
ヤクルト:塩見泰隆6.07、サンタナ5.11、オスナ3.96
中日:ビシエド3.89、阿部寿樹2.41、木下拓哉1.79
広島:菊池涼介1.61、田中広輔1.57、松山竜平1.56
DeNA:オースティン11.50、佐野恵太5.43、ソト4.75

 巨人の坂本勇人は5月の出場試合数6、打席も25だが、打率.364、OPS1.235とずば抜けた成績を残した。攻守の要である坂本の離脱は巨人にとって大打撃だった。また広島の貢献度トップである菊池涼介の離脱は打撃、守備両面で痛手となった。

 5月に最もチームに貢献した選手はDeNAのオースティンだった。5月前半は3番、後半は4番を任され、出塁率.457、OPS1.068はリーグ1位。好調ベイスターズ打線の牽引役となった。選球眼が昨年から改善され、四球率が10.8%から13.9%と出塁率向上に一役買っている。

 よって、5月のセイバーメトリクスの指標によるMVP打者部門は、DeNAのタイラー・オースティン(wRAA11.50)を推挙する。

 OPS1.068、出塁率.457(いずれもリーグ1位)、長打率.610(リーグ2位)、打率.338、本塁打5(いずれもリーグ4位)

“月間新人王”は阪神の佐藤輝明を推挙することになるだろう。5月28日の西武戦(メットライフドーム)で放った3本塁打は強烈な印象を与え、月間本塁打6本はリーグ3位、長打率.630はリーグ1位を記録した。また、3-4月の成績と比較すると、各指標に成長の跡が見られる。

○3、4月
打率.245、OPS.780、本塁打7、出塁率.289、長打率.491

○5月
打率.301、OPS.985、本塁打6、出塁率.354、長打率.630

 三振率は37.7%から31.6%に。まだ30%台ではあるが、コンタクト率に改善が見られればさらなる飛躍も期待できるだろう。

3-4月に続いて推挙された中日・柳は多くの指標でリーグ1位に

【投手部門】

 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 各チームのRSAA上位3人は以下の通り。

阪神:スアレス4.50、秋山拓巳2.29、青柳晃洋2.22
巨人:ビエイラ2.69、戸根千明1.70、鍵谷陽平1.28
ヤクルト:奥川恭伸5.38、田口麗斗2.94、石山泰稚1.48
中日:柳裕也5.87、小笠原慎之介3.81、R.マルティネス3.53
広島:高橋昂也3.21、栗林良吏2.74、九里亜蓮1.45
DeNA:ピープルズ4.41、国吉佑樹2.49、砂田毅樹2.19

 公式の月間MVPでは勝利数や防御率が大きく寄与するため、有力候補は3勝をマークした小川泰弘、戸郷翔征、サンチェスだろうが、防御率では戸郷、サンチェスが4点台に対し、小川は2.77。さらに1完封を記録しているため小川が最有力と思われる。ただ、この3投手は上記のRSAA上位リストにはない。

 tRAによる投手評価で最もセ・リーグで高い数値を残したのが中日の柳裕也である。柳は2.05というリーグで最も恵まれていない援護率にもかかわらず月間2勝をあげている。内容を見るとかなり優秀であることがわかる。

○柳裕也(中日):tRA5.87
登板3、2勝0敗
防御率0.82、WHIP0.77、奪三振率10.64、QS率100%、被打率.194(すべてリーグ1位)

 各指標すべてリーグ1位の好成績を残している。今季の柳はストレートの平均球速が142キロと昨年より上昇。また報道によれば、今年の春季キャンプ時のラプソードによる計測で、回転数は2450回転とリーグ平均の2078回転を大きく超えていることが分かった。同じピッチトンネルを通してチェンジアップやカットボールで空振りが取れるピッチングとなっている。3-4月に引き続きセイバーメトリクス目線で選ぶ5月の月間MVPに柳を推挙する。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。