打線好調だったオリックス、西武は先発投手陣が奮闘した

 混戦模様のパ・リーグで活躍した選手をデータで探り出し、5月の「月間MVP」をセイバーメトリクスの指標で選出してみる。選出基準は打者の場合、得点圏打率や猛打賞回数なども加味されるが、基本はNPB公式記録が用いられる。ただ、打点や勝利数といった公式記録はセイバーメトリクスでは個人の能力を如実に反映する指標と扱わない。そのため、セイバーメトリクス的にどれだけ個人の選手がチームに貢献したかを示す指標で選べば、公式に発表されるMVPとは異なる選手が選ばれることもある。

 まずは5月のパ・リーグ6球団の月間成績を振り返る。

○ソフトバンク:11勝8敗5分
打率.271、OPS.760、本塁打25、援護率5.34
先発防御率3.85、QS率45.8%、救援防御率1.71

○ロッテ:10勝8敗3分
打率.260、OPS.777、本塁打25、援護率4.76
先発防御率4.98、QS率33.3%、救援防御率2.94

○楽天:11勝11敗3分
打率.243、OPS.692、本塁打19、援護率3.98
先発防御率4.23、QS率36.0%、救援防御率2.86

○オリックス:10勝12敗1分
打率.269、OPS.770、本塁打35、援護率5.12
先発防御率5.67、QS率39.1%、救援防御率4.38

○西武:7勝9敗6分
打率.268、OPS.743、本塁打18、援護率3.45
先発防御率3.16、QS率45.5%、救援防御率5.48

○日本ハム:8勝12敗1分
打率.230、OPS.648、本塁打12、援護率3.85
先発防御率4.27、QS率42.9%、救援防御率3.15

 打撃好調だったのがオリックスだ。チーム月間本塁打35は群を抜いてリーグ1位で、援護率は5点台だった。これまで貧打で投手陣を援護できないでいた頃が嘘のように得点を重ねた。ただ、投手陣が打ち込まれてしまい、月間防御率は5.20。オリックスがなかなか上位に浮上できないのはこの投打の噛み合わせの悪さに起因している。

 これまで先発投手陣の弱さが指摘されてきた西武だが、5月の先発防御率はリーグ1位で、QS率も僅差で2位。高橋光成、今井達也、松本航のドラフト1位トリオで8つのQS、6つのHQS(7回以上投げて自責点2以内)を達成している。

 初回失点率も18.2%と、立ち上がりも安定していることがわかるが、援護率はリーグ最下位。これまで潤沢だった援護に恵まれなくなるという、こちらも噛み合わせの悪さを露呈している

 月間MVPは6月9日に発表予定。ここでは、セイバーメトリクスの指標による5月の月間MVP選出を試みる。

楽天・岡島は打率トップ、出塁率2位、OPSは3位の活躍

【打者部門】

 打者評価として、平均的な打者が同じ打席数に立ったと仮定した場合よりも、どれだけその選手が得点を増やしたかを示す「wRAA」を用いる。

 各チームのwRAA上位3人は以下の通り。

楽天:岡島豪郎11.90、浅村栄斗3.16、島内宏明2.31
ソフトバンク:柳田悠岐9.63、中村晃7.76、長谷川勇也3.91
ロッテ:レアード10.78、中村奨吾5.11、マーティン4.74
オリックス:吉田正尚10.84、杉本裕太郎7.25、T-岡田7.17
西武:森友哉8.48、山川穂高2.78、若林楽人2.11
日本ハム:西川遥輝3.18、近藤健介3.12、王柏融2.99

 wRAAが10を超える3選手は、打撃3部門のそれぞれの月間リーグ1位である。

打率1位:岡島豪郎.398(2位:吉田正尚.382)
本塁打1位:レアード9本(2位:杉本裕太郎8本)
打点1位:吉田正尚24(2位:レアード23)

 吉田正尚の打点が向上したのは前を打つ福田周平や宗佑磨の出塁率の向上に起因する。特に宗は月間打率.318、OPS.914と好調オリックス打線の牽引役として活躍。wRAAも5.85とチーム4位の貢献をしている。

 本塁打1位のレアードも荻野貴司、マーティン、中村奨吾といった塁上を賑わす好調ロッテの上位打線を迎え入れるバッティングでチームに貢献している。

 そんな2人のwRAAを上回ったのが岡島豪郎。打率1位、出塁率2位と、元気のなかった楽天打線の中で一人気を吐いた。本塁打は2本だったが、OPSに関しては吉田、レアードに引けを取らない。

○5月のOPSパ上位3傑
吉田正尚:1.097
レアード:1.094
岡島豪郎:1.064

 岡島は5月、二塁打を6本、三塁打を2本放った。高い出塁率によってチームに大きく貢献した岡島をセイバー目線による月間MVPに推挙する。

○5月「月間MVP」パ・リーグ打者部門:岡島豪郎(楽天)wRAA11.90
打率.398(1位)、OPS1.064(3位)、出塁率.474(2位)、長打率.590(5位)、3塁打=2本(1位タイ)

先発では鷹マルティネス&楽天ドラ1早川が貢献度「大」

【投手部門】

 投手評価には、平均的な投手に比べてどれだけ失点を防いだかを示す「RSAA」を用いる。ここでのRSAAは「tRA」ベースで算出。tRAとは、被本塁打、与四死球、奪三振に加え、投手が打たれたゴロ、ライナー、内野フライ、外野フライの本数も集計しており、チームの守備能力と切り離した投手個人の失点率を推定する指標となっている。

 各チームのRSAA上位3人は以下の通り。

楽天:早川隆久5.53、田中将大4.43、瀧中瞭太3.27
ソフトバンク:マルティネス5.34、モイネロ2.15、津森宥紀1.56
ロッテ:美馬学1.96、佐々木朗希1.19、横山陸人1.00
オリックス:山本由伸3.65、比嘉幹貴2.69、宮城大弥0.62
西武:平良海馬4.45、今井達也3.88、ダーモディ3.05
日本ハム:河野竜生2.78、伊藤大海2.42、上沢直之2.09

 ソフトバンクの月間救援防御率は1.71。森唯斗が離脱した後も好成績を残している。その原動力となったのはモイネロである。10試合登板で無失点、奪三振率11.7、被打率.065、WHIP1.00を記録した。

 無失点と言えば、平良海馬は月間12試合登板で無失点、奪三振率11.7、被打率.122、WHIP0.73と安定。クローザーとして3セーブをあげた。河野竜生は5月の登板10試合無失点を記録し、中継ぎとしてチーム1位の貢献を示している。

 先発陣に目を向けると、2投手の貢献が目立った。

 ニック・マルティネス:RSAA5.34
登板5、32回、防御率1.97、QS率80%
被本塁打2、奪三振率9.56、K/BB6.80
被打率.200、被OPS.520、WHIP0.88

 早川隆久:RSAA5.53
登板5、31回1/3、防御率3.73、QS率20%
被本塁打2、奪三振率8.33、K/BB4.83
被打率.265、被OPS.704、WHIP1.15

 両投手とも今季加入した新戦力。昨年まで日本ハムに在籍していたマルティネスは、ストレートの球速が上昇、チェンジアップ、ナックルカーブで空振りを量産できるようになった。楽天のドラフト1位ルーキー早川はチェンジアップ、カットボールの空振り率が10%を超えている。

 貢献度は僅差であるが、セイバーメトリクスの各指標が優れているニック・マルティネスを5月の月間MVPに、また、月間MVPルーキー賞として早川隆久を推挙する。鳥越規央 プロフィール
統計学者/江戸川大学客員教授
「セイバーメトリクス」(※野球等において、選手データを統計学的見地から客観的に分析し、評価や戦略を立てる際に活用する分析方法)の日本での第一人者。野球の他にも、サッカー、ゴルフなどスポーツ統計学全般の研究を行なっている。また、テレビ・ラジオ番組の監修などエンターテインメント業界でも活躍。JAPAN MENSAの会員。一般社団法人日本セイバーメトリクス協会会長。