盛岡大付の主砲・金子京介、準決勝で岩手大会タイ記録の4号ソロ

 もしかしたら、“あの人”にも届くかもしれない――。夏空に放たれた打球は、すぐさま左翼席に消えていった。22日に岩手県営球場で行われた全国高校野球選手権の岩手大会準決勝。盛岡大付の3番に座る主砲の金子京介内野手(3年)は、大会記録に並ぶ4号ソロで甲子園に王手をかけた。「打った瞬間いったと思いました」。そう表情を崩すと、無意識に帽子のツバに手をやった。【川村虎大】

 前日21日に降雨ノーゲームとなり、仕切り直しになった一関学院戦。チームは10安打12得点の猛攻を見せ、12-4で7回コールド勝ちを収めた。打の中心にいたのは、身長187センチ、体重95キロの大型スラッガー。金子が振り切ったバットの軌道と、向かってくるボールの軌道はシンクロするように、痛烈な金属音を放った。

 5回無死。「走者がいなかったので、長打が出ればいいなとフルスイングしました。結果的に本塁打になってよかった」。甘く入ったスライダーを完全に捉えた。通算55本目の一発は、2回戦から実に4戦連発。2017年に盛岡大付の先輩でもある植田拓外野手(BC茨城)が記録した大会最多本塁打に並んだ。

 好調の要因は「打席に集中して入る」。冬場のトレーニングで自慢のパワーに磨きがかかった。ユニホームの上からでもわかる隆起した大胸筋で、ベンチプレス115キロを挙げる。ただ、春の県大会決勝では花巻東に0-15で敗戦。自身も結果を残すことができなかった。「春はなんとなく打席に入っていた。今は1打席、1打席、集中力を持って入っています」。ネクストバッターサークルで気持ちを整理し、邪念を取り除いて打席に立つことが、結果につながっている。

帽子には「齋藤飛鳥」の4文字「可愛いじゃないですか」

 帽子のツバの裏に、荒々しく、心を込めてマジックで書き込んだ文字がある。「気合」でも「努力」でも「仲間」でもない。はみ出しそうなくらい目一杯な4文字。「齋藤飛鳥」。人気アイドルグループ「乃木坂46」を支える中心メンバーの名前だ。

 書いた理由は「好きだから」。アーチを放ってもあまり表情を変えない硬派な17歳だが、乃木坂46の話を振られると、途端に頬を緩める。高校2年の時に友人に勧められて以来、その可愛さに魅了された。今では毎日のようにYouTubeでライブ映像やミュージックビデオに見入る。試合前は、“推し”の齋藤さんもメンバーに入っているユニット曲「Threefold choice」を聞いてモチベーションを高めている。

「可愛いじゃないですか。力になっています」

 そう言って頭をかく姿は、等身大の高校生。だが、ユニホームを着ている時は、甲子園に恋する球児。4戦連発の勢いと、推しへの思いを力に変え、あとひとつ――。決勝の相手は強敵・花巻東。夏の終わりを迎えるまでは、まだまだ遠回りしていたい。(川村虎大 / Kodai Kawamura)