圧倒的な打線と機動力を武器に、初めて臨んだ公式戦を制覇

 NPB12球団のチーム名がついた国内2番目の女子野球チーム「阪神タイガースWomen(ウィメン)」。同チームは女子野球人口の増加と、女子が野球を始めやすく続けやすい環境の創造などを目的に、今年1月に創設されたクラブチームである。元女子プロ選手9人と、高い技術を持ったアマチュア選手が顔を揃え、本格始動からたった5か月で関西女王のタイトルを掴んだ。

 創設翌月から週末に全体練習や練習試合を重ね、はじめての公式戦である「第12回関西女子硬式野球選手権ラッキートーナメント大会」(以下、ラッキートーナメント)では、準決勝までの全4試合を無失点のまま突き進んだ。「一戦一戦レベルアップできるように頑張りたい」と大会前に意気込みを語った三浦伊織主将の言葉通り、駒を進めるごとに選手たちの結束力は強くなった。

 6月27日に滋賀県の湖東スタジアムで行われた決勝は大阪体育大学と対戦し、大阪体育大学OGの田中亜里沙が放った3安打3打点を含む14安打の猛攻と、50メートル6秒69の俊足・前田桜茄の2盗塁を含む積極的な走塁を活かして14-6で勝利。他を寄せつけない圧倒的実力差で関西女王の称号を手にした。

 6月5日に和歌山県の田辺スポーツパークで行われた初戦から決勝戦までの各試合で、阪神タイガースWomenの応援グッズを身につけた多くのファンが球場を訪れ、中には女子プロ野球選手時代のグッズを持った人も珍しくなかった。

 京都フローラや愛知ディオーネで活躍し、今大会で優秀投手を受賞した左腕・植村美奈子は「舞台が変わっても応援し続けてくれるのは有難い。私たち選手の力だけでなく、ファンによるSNSへの投稿で女子野球が広がっていくと思う」と話し、女子野球の認知度向上のため一体となってくれるファンへの謝意を示した。

 阪神タイガースWomenは、8月7日に愛媛県で開幕する『第17回全日本女子硬式野球選手権大会』と10月に千葉県で開催される『第16回全日本女子硬式クラブ野球選手権大会』への出場権も勝ち取っている。公式戦無敗のまま全国大会へ出場し、チーム創設1年目での頂点到達へ挑む。

三浦主将「このチームに入りたいと思われるプレーができたかな」

 現在18人の選手が所属している阪神タイガースWomen。チームが本格始動した2月当初、選手たちがよく口にしていた目標がある。ひとつは全国大会での「日本一」、もうひとつが「女の子に憧れられるチームになる」だ。

 ラッキートーナメントは、関西圏内の女子中学生チームからクラブチームまでが参戦し、今年は合計27の硬式野球チームと女子硬式野球部がしのぎを削った。その中で阪神タイガースWomenと直接対決したのはわずか5チームだが、対戦相手の目にはどのように映ったのだろうか。

 準々決勝で対戦した和歌山Reginaの最速109キロのストレートを誇るエース・岡田未来(中3)は「大人相手に投げて打たれるのが怖かったけど、(NPB球団の女子チーム選手に)なってみたいなと思えた。憧れる」と話した。クラブチームに所属できる年齢に達するまでに、兄・岡田俊哉が所属している中日ドラゴンズにも女子野球チームができるよう期待を寄せる。

 ほかにも対戦の有無に関わらず「かっこいい」「チーム名だけで圧倒される」など前向きな意見が多い。特に女子プロ野球を熱心に見ていた女の子にとっては、憧れの選手と同じグラウンドに立ち、直接対決できる可能性があることへの喜びも大きいようだ。また、女子プロ野球選手になることを夢見ていた学生は、再始動の可能性が不透明な女子プロ野球リーグに代わって、NPB球団の名を冠したクラブチームへの入団を将来の進路として視野に入れている。

 全国的に女子硬式野球部と女子野球人口が増加しているのに対して、高校卒業以降に女子野球を続けられる進路の選択肢が少ないのが現状だ。関西圏内でより高いレベルの野球を続けられるのは阪神タイガースWomenであることが、ラッキートーナメント優勝で証明された。

「このチームに入りたいと女の子たちに思われるプレーができたかなと思う。関西優勝チームとして全日本選手権もがんばる」

 主将の三浦は決勝戦のあとにそう話し、関西にとどまらず日本中の女子の憧れの的になれるよう、まずは8月の全日本選手権制覇にむけて更なる技術向上を目指す。(喜岡桜 / Sakura Kioka)