BC栃木の捕手・叺田本気、二塁送球タイム最速1.77秒の強肩

 もしかしたらこの秋のドラフトを沸かせるかもしれない。そう思わせる存在が、独立リーグ「ルートインBCリーグ」にいる。栃木ゴールデンブレーブスの叺田本気(かますだ・もとき)捕手だ。菊川南陵高(静岡)、中京学院大時代に計2度の指名漏れ。それでも、当時とは違う手応えをいま感じている。“強肩強打の捕手”が3度目の正直を目指す。【川村虎大】

 ホームベース後方から軽く投じたボールが、一直線に二塁へ到達する。二塁送球タイムは最速1.77秒。ソフトバンクの甲斐拓也捕手らNPBの1軍トップクラスに匹敵する数字だ。元巨人で栃木の寺内崇幸監督も「あの肩は一級品だから!」と太鼓判を押す。

「NPBは夢なのはもちろんなんですけど。そこを目指して練習してきたというよりは、成長してNPBが見えてきたというイメージです」

 菊川南陵高時代、同期に捕手がいなかった。当時はレギュラーなら守備位置はどこでもいいと考えていたが、次第に捕手の魅力に取り込まれていった。中京学院大では2年時に正捕手の座を手にするも、3年時に右肘内側側副靱帯再建手術(トミー・ジョン手術)を受けて1年間のリハビリ生活を余儀なくされ、4年時は新型コロナウイルスの影響でリーグ戦などが中止に。不完全燃焼のまま大学での野球生活を終え、プロ志望届を提出して吉報を待った昨秋のドラフト会議で、名前が呼ばれることはなかった。社会人で野球を続ける選択肢もあったが、選んだのは独立の舞台だった。

「捕手の全てを教えてもらいました」成長導いた元DeNAの黒羽根コーチ

 栃木の首脳陣は寺内監督をはじめ、ロッテなど活躍した成瀬善久選手兼任投手コーチ、元ヤクルトの飯原誉士ヘッドコーチ、元DeNAの黒羽根利規バッテリーコーチと、NPB経験者がずらり。選手では、メジャーも経験した川崎宗則と西岡剛両内野手、さらにヤクルトで活躍した村中恭兵投手、2011年に横浜(現DeNA)からドラフト1位指名された北方悠誠投手が所属する。

 叺田はNPBを経験している選手から学ぶことが近道なのではないかと考えた。だが、その考えはすぐに打ち崩された。「全てが甘いんだなって思いました」。

 加入当初は代打や指名打者での出場。捕手を任されることは少なかった。肩の強さには定評があったものの、後ろに逸らしたり、ミットが流れてしまったり……。捕球やブロッキングが課題だった。上手くいかない現状でも根気強く指導してくれたのが、NPB通算361試合に出場した黒羽根コーチだった。

「捕手の全てを教えてもらいました」。最初に変えたのは構え方。後方に重心が残り、ワンバウンドの球への対応がワンテンポ遅れるクセがあったが、重心を前に構えたところ改善。ブロッキングだけではなく、次の動作への移行がスムーズに。必然的に二塁送球タイムも速くなった。

 意識が変わった黒羽根コーチの言葉がある。「プロを目指すのではなく、プロで活躍することを目指せ」。口すっぱく言われ、目標を上方修正した。「指名されたその先を考えたい。捕手としてはソフトバンクの甲斐さんのような守備を。打者としてはトリプルスリーを目指したいです」と先を見据える。

 今シーズン、BCリーグでは、打率.333(123打数41安打)、3本塁打、OPS.890をマーク。NPBのスカウトも「肩はすごいものを持っている」と評価し、複数球団が調査している。3度目の正直なるか。栃木で一皮も二皮も向けた男は、吉報を待って練習に励む。(川村虎大 / Kodai Kawamura)