守護神スアレスが「シーズンを通して安定し貢献度が高い」

 今季も残り試合はわずかとなったが、セ、パ両リーグともにいまだ決着がついていない。ペナントレース同様、MVP(最優秀選手)争いも混戦模様となっている。現役時代にヤクルト、楽天で外野手として活躍し、ゴールデングラブ賞に7度輝いた野球評論家・飯田哲也氏がその行方を占った。

 MVPは必ずしも優勝チームから選出されるとは限らないが、やはり優勝への貢献度は大きなポイントとなる。飯田氏は「ヤクルトが優勝すれば、村上(宗隆内野手)で間違いないでしょう」と見る。村上は今季、全試合で4番を務め、39本塁打はリーグトップ。107打点も岡本と並びトップタイ(成績は14日現在、以下同)。「数字だけでなく、打てない時にもベンチで声を出してチームを鼓舞している。成長したと思います」と高く評価している。

 MVPは記者投票で選出される。順位を付けた3選手を投票し、1位に5点、2位に3点、3位に1点が与えられ合計点を争う。飯田氏は村上に次いで貢献度の高い選手として、中村悠平捕手の名前を挙げる。投手陣を好リードで助け、打っても自己最高ペースの打率.291をマーク。さらに「ヤクルトが開幕前の下馬評を覆し優勝争いができている要因は、手薄と見られていた投手陣の踏ん張りにある。特に、奥川(恭伸投手)の成長(9勝3敗、防御率3.02)が非常に大きい」と分析する。それでも、村上の存在感には及ばないだろう。

 一方、阪神が優勝した場合には、MVP選びは一気に難しくなる。シーズン前半は青柳晃洋投手、佐藤輝明内野手が爆発的な勢いで牽引していたが、後半に入って失速気味。今季の阪神は総合力がアップし安定感のある戦いぶりだが、シーズンを通して活躍している選手は少ない。

「あえて1人に絞るなら、守護神の(ロベルト・)スアレス(投手)ではないでしょうか」と飯田氏。リーグ断トツの41セーブを挙げ、防御率1.21。「シーズンを通して安定していて、勝利への貢献度は1番高いと思います」と言う。主に1番打者として高打率をマークしている近本光司外野手、ここぞという場面で勝負強い打撃を披露するジェフリー・マルテ内野手らも、阪神が優勝すれば票を集めそうだ。

ロッテ荻野は貢献度大も「1番打者はなかなか選ばれない」

 オリックスとロッテがつばぜりあいを演じているパ・リーグはどうか。「オリックスなら、山本由伸(投手)しかいないでしょう」と飯田氏が語る通りだろう。17勝、防御率1.46、193奪三振でリーグ3部門トップ。5月28日のヤクルト戦以降は無傷の14連勝中で、他を寄せ付けない。

 一方、リーグトップの打率.339をマークしている吉田正尚外野手も、「いるのといないのとでは、オリックスの野球が変わってしまうくらい影響力が大きい」(飯田氏)。山本にも劣らない貢献度だが、10月2日のソフトバンク戦で右手首付近に死球を受け、尺骨を骨折。長期離脱に追い込まれたのが残念だ。

 パ・リーグのMVP争いも、ロッテが優勝した場合は混戦になりそうだ。攻守に渡って全員でつなぐ野球を展開しており、突出した選手はいない。飯田氏は「僕が選ぶなら、荻野(貴司外野手)です」。全試合で1番を務め、打率.303、20盗塁でチームを引っ張っている。「荻野、中村(奨吾内野手)が出塁し、(レオネス・)マーティン(外野手)、(ブランドン・)レアード(内野手)が還す、そして勝つのがロッテのパターン。特に荻野の存在が効いていると思います」と言う。

 ただ、自身も現役時代に1番を打った飯田氏は「1番打者はなかなかMVPを取れないんですよね……。本塁打、打点の多い中軸の方が高く評価されがちなので」と苦笑い。ロッテが優勝した場合、実際の投票では、リーグトップの36セーブを挙げている守護神の益田直也投手、レアード、マーティン、中村奨らも票を集めそうで、予断を許さない。

 投票者によって大きく評価が分かれることもあるMVPレース。最高の栄誉に輝くのは誰なのかを考えながら、熾烈なペナントレースを見るのも一興ではないだろうか。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)