ロッテが「勝利と頂点を目指す集団」であるために制作された一冊

 2021年シーズンを通じて、ロッテ井口資仁監督は「Full-Count」での連載コラムで率直な胸の内を明かした。その中でたびたび登場したのが「我々と選手たち」「会社も協力してくれて」「ファンの皆さんも一緒に」という表現だ。

 ペナントレースを戦っているのは、監督、コーチ、選手だけではない。裏方スタッフ、球団職員、フロント、ロッテ本社、そしてファン……。千葉ロッテマリーンズという球団と繋がりを持つ全ての人で「優勝」の2文字を掴みにいく、という想いが、そこには込められている。

 リーグ優勝、そして日本シリーズ優勝という大きな目標を果たすには、全員が心を一つに合わせ大きなベクトルとして突き進んでいかなければならない。現役時代にはダイエー、ロッテで日本一、ホワイトソックスで世界一を経験した井口監督は、戦力の充実だけではなく、そこにプラスαされる見えない力の重要性を熟知している。

 今シーズン中、ロッテは一冊の本を作成し、選手、首脳陣、球団職員らチームに関わる全員に配布した。漆黒のチームロゴと「BRAND BOOK」という文字が印刷された白表紙を開くと、そこには「このBRAND BOOKは千葉ロッテマリーンズが勝利と頂点を目指す集団であるために球団の方針と想いをまとめたものである」と記されている。

井口監督が考える「常勝軍団になるための条件」

 そのメッセージの通り、A4サイズの約100ページでは、球団の使命や行動指針、勝つための3カ条、2025年までの中期目標「Vision 2025」といった球団理念を紹介。さらには、監督や選手たちの言葉だけではなく、営業、チケット販売、グッズ販売、球場に出店する飲食店店主、ライトスタンドを守る応援団からの言葉が、静と動が入り混じる魅力的な写真とともに並ぶ。そこにはチームに関わる全ての人が「勝利」「優勝」にかける心意気が、力強さあふれる「生きた言葉」で綴られている。

 自薦で球団理念の策定に携わった職員6人の座談会、2度の日本一を経験したベテラン職員と2020年以降に入社した職員が語る球団の歴史と未来、選手会長の益田直也とキャプテンの中村奨吾、そして井口監督が考える「常勝軍団になるための条件」。どのページを開いても、そこから溢れ出るのは同じ「勝ちたい」という熱い想いだ。

 グラウンドで戦う選手をはじめ、監督・コーチ・フロントの想いは、メディアを通じて触れる機会は多い。だが、球団職員や応援団、飲食店店主ら、チームを支える“縁の下の力持ち”たちの声は届きづらい。手に持ったブランドブックを読み進めるうちに、彼らが抱く熱く深い想いに触れ、改めて背筋を正した関係者も多かっただろう。

河合克美オーナー代行「家族に見せたいと思うようなものを作ってほしい」

 シーズン終了後に総括会見に臨んだ河合克美オーナー代行は、ブランドブックについて「唯一お願いしたのが、家族に見せたいと思うようなものを作ってほしいということ。みんなの言葉がスッと入っていて、同時に子どもたちに自慢したくなるようなもの。自分事化して自覚を持ってもらうことが目的でした」と、その意図を明かしている。チームに関わる全員が、同じゴールと進むべき道を共有できる一冊は、チーム全員の心をつなぐ糸にもなる。

 井口監督が2018年に就任して以来、チームは少しずつ順位と勝率を上げ、今季は141試合目まで優勝を争った。就任時に「5年後、10年後には常に優勝争いをするチームを作る」と語っていた指揮官は、4季目を戦い終え「プラン通りに成長してきている」と手応えを口にした。同時に、2022年は「優勝争いをするのではなく優勝する」と宣言している。

 2021年は一歩届かなかった「優勝」をつかみ取るためにも、全員の想いが詰まったブランドブックは大事なキーアイテムになりそうだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)