「女子野球選手向け野球教室」「野球未経験者向け打ち放題練習」なども実施

 チームが沖縄・宜野湾でキャンプに出掛けている2月、DeNAのファーム施設「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」で新しい形の野球体験イベントが4回にわたり、開催された。21日に行われた「大人の夜間練習」には応募総数174組の中から男性17人、女性10人の計27人が参加。球団OBにアドバイスを受けながらノック、マシン打撃などで大粒の汗を流し、笑顔を弾けさせた。

 1週間の仕事を終えた後、金曜日の夜7時半。昨夏に完成したばかりの「DOCK OF BAYSTARS YOKOSUKA」屋内練習場に、27人の大人が集まった。普段はDeNAの選手が練習で利用する屋内練習場が、一般に解放される稀なチャンス。球団OBの秦裕二氏(2002年入団)と赤堀大智氏(2013年入団)、そして30年以上にわたり球団でコンディショニングを担当してきた塚原賢治氏を講師に迎え、待ちに待った「夜間練習」がスタートした。

 経験者もいれば初心者もいる中、まずは塚原氏によるウォーミングアップからスタート。続いて、元投手の秦氏が「右投げの人は相手に左肩をしっかり向けましょう」「ボールを持った手は耳の近くに置いて、体を回転させながら相手の取れるところを目掛けて投げましょう」と投げるコツを指導。また、元外野手の赤堀氏が「バッティングは準備が大事。まずトップを早く作ること。そして早めにタイミングをとることです」とデモンストレーションを披露すると、その大きな打球に歓声が上がった。

 参加者は3組に分かれ、キャッチボール、ノックによる守備練習、マシン打撃の3か所を順番で周りながら体験。初心者はキャッチボールで相手が取れる範囲内に投げられるようになったり、ノックで少し球足の速い打球をキャッチできるようになったり、マシン打撃で打球が前に飛ぶようになったり、わずかな時間内でも大きな進歩が見られた。経験者や草野球を楽しむ“現役”は、スキルアップを目指してOB講師たちに貪欲に質問。気が付けば、予定の1時間はあっという間に終わっていた。

チームが留守の2月に施設を開放「プロと同じ空間を肌で感じていただく」

 経験の差こそあった参加者だが、横浜スタジアムと同じ人口芝、土を使った屋内練習場で見せた笑顔と目の輝きはみんな同じ。またとない貴重な体験に喜びが溢れ出た。イベントに参加した三石さん夫婦は、DeNAの大ファン。球団公式サイトで偶然、イベントの告知を発見した奥さんが、旦那さんへサプライズプレゼントとして応募し、2人で参加した。「ノックが思いの外、ハードでした。でも、普段選手が使っている練習施設で野球ができるなんて感動です。最高のプレゼントでした」と充実の表情を浮かべた。

 びっしょり汗をかきながらハツラツとした笑顔を見せる参加者の姿を、うれしそうに見守る塚原氏は現在、球団の野球振興・スクール事業部に籍を置き、今回のイベントを企画した人物の1人でもある。「大人の夜間練習」に先駆け、2月中旬から「野球経験者向け打ち放題練習」「女子野球選手向け野球教室」「野球未経験者向け打ち放題練習」も実施。これまで野球教室といえば野球をしている学童を主な対象としてきたが、「学童以外にも女子や社会人、野球を全くやったことのない子どもたちなど、幅広い方たちが野球に触れられる機会を提供できれば」と意見を募り、今回のイベント開催に至ったという。

「2月は唯一、ファーム施設が空いている時期。プロの練習施設を使ったり、同じグラウンドに下りることは、一般の方には結構敷居が高いことだと思うんですよ。なので、限られた人数になってしまいますが、イベントを通じて、プロと同じ空間を肌で感じていただくことも大事なのかな、と。実際に皆さん、ここで野球ができたというだけで、すごく喜んでいただけている印象がありますね」

「野球ファンを増やしたい」と願う塚原氏、キーワードは「学び」と「笑顔」

 近年、NPBの観客動員数は増加の傾向にあるが、野球の競技人口は減少し、野球の将来を危惧する声も聞かれる。そんな中、影響力の大きいNPB球団が、すでに野球をプレーする層に限らず、年齢性別、経験の有無を問わずに幅広い層を対象に、野球を身近に感じるための働きかけをする意義は大きい。

「日本の人口そのものが減り、スポーツ競技が多様化する中で、野球人口を増やすのはなかなか難しいことだと思っています。なので、今回のイベントも『野球って面白いね』と感じてもらいたい、単にベイスターズファンだけではなく野球ファンを増やしたいという思いから始まっています。野球を見るだけでもいいですが、少しでも野球に触れるという部分で、僕らが関わっていけたらいいなと思いますね」

 球団が運営するベースボールスクールで講師も務める塚原氏は、「学び」と「笑顔」をキーワードにレッスンに臨んでいるという。

「子どもたちだけではなく、我々大人にとっても学びの場であることを目指しています。成人教育論で知られるジャック・メジローが『大人の学びは痛みを伴う』と言っていますが、大人の場合、学びを得るために今までの自分を否定しなければいけないこともある。それでも学ぶ姿勢は忘れないようにしたいですよね。そして、ただおふざけの笑顔ではなく、全力で頑張って、時には我慢をしながらも、目を輝かせながら野球ができる。この笑顔を大人でも子どもでも持ってもらいたい。スクールに限らず、今回のようなイベントでも、この2つのワードを目指していきたいと思います」

 野球をきっかけに生まれる学びと笑顔を、少しでも多くの人々に体験してもらいたい。参加者の表情を見れば、その思いは間違いなく伝わったと言えそうだ。(佐藤直子 / Naoko Sato)