好評博す日本ハムの練習見学会、球団が進める地域密着と社会貢献

 NPO法人北海道野球協議会が、日本ハムの協力を得て小、中、高校生を対象に練習見学付野球観戦招待を行っている。プロの練習を観察することで、レベルアップに役立ててもらおうという試み。昨季は札幌ドームの13試合で約5000人が練習見学に参加したが、今季は地方ゲームにも広げ、今月25日の釧路には19チーム350人、26日の帯広には2チーム35人が足を運んだ。

 8年ぶりに公式戦が開催された25日の釧路市民球場。午前9時過ぎに三塁側スタンドにユニホーム姿の一団が陣取った。レフト付近で行われていた日本ハム選手のアップに真剣な眼差しを注ぐ。アップが終了すると、今度はバックネット裏最前列へ移動。全体練習を食い入るように見つめていた。

 140キロ離れた北見を朝5時30分に出発してきたという北見工高の永井寛達主将(2年)は「スイングの速さに驚きました」と目を丸くした。ただ驚くばかりではない。何かを盗もうと必死に観察していた。「ストレッチを念入りにしていましたね。あの腸腰筋のトレーニングはチームの練習に取り入れたいです。打撃練習では、中島選手が動きながら打っていたのが印象的でした。自分が何をしたいのかという意識が高いと感じました。ためになります」と収穫はたくさんあった。

 26日の帯広での練習を見学した帯広農の永井壱磨主将(2年)も中島の打撃練習に目を奪われた。「逆方向に打っているのを見て、そういう特化した練習をしているから武器をつくれるのだと思いました」と感想を語る。さらに全体的な練習の進め方にも着目。「バッティング練習をしている中で、ノックを打っていて無駄がないですよね。守備練習ではいつも捕るだけでしたけど、ああいう風にネットを置いて、投げるところまで一連の動作で練習した方がいいなと思いました」と今後のチーム練習の参考にしていた。

野球人口減少に歯止めをかける一助に―

 いつもテレビで見ている地元球団の選手がどんな練習をしているのか。知りたくてもこれまでは限界があった。一般的な開場時刻は試合開始の2時間前。開場と同時に入場してもホームチームの練習はすでに終わっていて、ビジターチームの練習しか見ることができない。さらに、日本ハムの場合、練習量の多いファームは千葉・鎌ヶ谷を拠点にしている。オフシーズンも鎌ヶ谷で練習する選手が多いため、ますます機会は限られてしまう現状があった。

 そのため、練習見学会は好評だ。選手36人を引率してきた北見工高の野村明史監督(40)は「見たことを自分たちにどう生かすか、考えるきっかけになったのではないでしょうか。野球を実際にやっているプレーヤーにとっては正直、試合よりも練習見学の方がありがたいです」と話す。

 野球人口減少に歯止めをかける一助になるかもしれない。現在野球部員がいない標津高の助っ人選手、田中智基さん(2年)はマネジャー3人と2時間かけて釧路にやって来た。「打球の伸びがすごかったです。来て良かった。野球部が存続できるように出来る限り頑張りたい」。目を輝かせながらそう語り、決意を新たにしたようだった。

移転14年目で通算1000勝、北海道に根付く日本ハムの今

 主催している北海道野球協議会は、この見学会をさらに有意義な形に進化させたい考えだ。見学した選手からは「あれはどんな意図でやっているんだろう」といった疑問の声が上がっているという。ティー打撃一つとっても選手それぞれ特徴的な打ち方があるからだ。その意図や狙いについて、選手や指導者があれこれ考えることだけでも勉強にはなるだろう。でも、答えがあれば、もっといい。同協議会は集めた疑問や質問を当該選手やコーチに答えてもらい、全体にフィードバックできないか模索している。

 さらに、同協議会は選手以外にも目を向けている。今回初めて日本ハムのアナウンス担当者を招いてアナウンス講習会を企画した。日本ハムの帯広開催の翌日27日に北海道高校野球連盟十勝支部に所属する野球部マネジャーを対象に実施。帯広大谷-白樺学園高の練習試合が行われる中、球団職員の南谷彩佳さんが様々なケースでのアナウンス方法を伝え、マネジャーからの疑問にも答えていた。

 北海道に移転14年目で通算1000勝を達成した日本ハムは、多くの感動的な試合でファンを魅了してきた。その華やかな舞台の裏では、アマチュア野球界に技術やノウハウを伝達することで、地域密着と社会貢献を実現しようとしている。

※NPO北海道野球協議会
野球を通じて青少年の健全な育成を目的に2000年に発足。日本野球連盟北海道地区連盟、北海道学生野球連盟、札幌学生野球連盟、北海道高等学校野球連盟、北海道軟式野球連盟、札幌市少年軟式野球連盟、日本少年野球連盟ボーイズリーグ北海道支部、日本リトルシニア中学硬式野球協会北海道連盟、ポニーリーグ北海道連盟、北海道女子軟式野球連盟、北海道還暦野球連盟、札幌市中学校野球協議会、北海道少年軟式野球連盟、北海道専門学校野球連盟、北海道地区大学準硬式野球連盟、札幌ソフトボール協会、全国野球振興会、北海道日本ハムファイターズの18団体が加盟。日本ハムの練習見学会のほか、少年野球選手を対象にした肘検診、指導者講習会など行っている。柳俊之理事長。(石川加奈子 / Kanako Ishikawa)