日本ハム一筋で2000安打も達成した“ミスターファイターズ”田中幸雄氏

■マリナーズ 10-7 エンゼルス(日本時間30日・アナハイム)

 エンゼルスの大谷翔平投手が29日(日本時間30日)、本拠地で行われたマリナーズ戦で今季初となる本塁打を放った。4回無死一、二塁から内角低めの変化球をすくい上げた技ありの3ラン。一体、どのようにしてあの一打が生まれたのか――。元日本ハムの選手、コーチで野球解説者の田中幸雄氏は「あの打ち方はそうできるものではないです」と技術が凝縮された一打であったと解説した。

 カウントは0-2とマ軍の先発右腕ダンに追い込まれていた。「大谷選手は2ストライクだったので(打つ)ゾーンを広めに取っていたと思います。相手はキレのある直球も変化球も投げてくると思うので、いろんなことを予測していたと思います」。3球目、相手は空振りを奪いにきた内角低めへと落ちるスライダーを投げてきた。始動した大谷は少し体を前に出された。

「内角の難しい球でした。あの打ち方は、そう(簡単に)できるものではないです。多少、体が前に行きながらも、ボールをしっかりと引き付けていました。バットは体の近くから出ていました」。普通ならカットしたり、引っ張るように打ちにいってもファウルになるようなコース。空振りしてもおかしくない相手のボールだったと田中氏の目には映った。

 態勢を崩し、少し泳ぎながらも、自分の打つべきポイントに持ってきた。「腕の使い方もうまいですし、ボールを当てる技術が高い、予測したところにコンタクトできるのが大谷選手のすごさ。それを本塁打にしてしまう高度な技です」と感心する。地面スレスレの低さを打ったスイングだったが「私はそんなに下から出ているようには見えませんでした。大谷選手は今、ボールをしっかりと見えているんだと思います」と変化に合わせて、体やバットがイメージの軌道の通りに動き、しっかりとコンタクトしていた打席だったと解説した。

「個人差はありますが、ボールが見えている、見えていないとではボールへの対応は変わってきます。低めの球をしっかりと、芯でとらえていました。あの高い身長で、手も長いので(スイングの)円の軌道は大きい。さらにあの球を打つには、振るスピードがないといけない。“ボールが曲がってきている”という脳の判断が、体に指示して伝えないと自分の体が動きません」。

田中氏も外角低めのボールになる変化球を本塁打に…「ボールが見えていた」

 日本ハムで2000安打を放った田中氏も現役時代、外角低めのワンバウンドするようなスライダーを右翼席へ運んだことがあった。

「調子が悪いとバットに当たる確率は低いですよね。調子がいいときはボールがよく見えます。極端に言うと、投手の手からボールが離れた瞬間からよく見ます。悪いとぼやけたり、途中から見えたりしてくるので反応が遅くなってしまいます」。前日の二塁打まで11打席無安打と当たりが止まっていたが、長打、そして本塁打が飛び出し、徐々に状態は上がってきている。

「本人に聞かないとわからないですけどね…」と田中氏は謙遜するが、2ストライクからの判断、低めのボール球をファウルにせず、それもスタンドに放り込む技術、一瞬の反応……巧打者にしかわからない様々な要素が凝縮された本塁打だった。(楢崎豊 / Yutaka Narasaki)