セットポジションでの球速、内角を攻めきれない投球など、課題も浮き彫り

■広島 7-3 ヤクルト(10日・神宮)

 ヤクルトのドラフト1位ルーキー・奥川恭伸投手が10日、本拠地での広島戦でプロ初登板初先発。1軍デビューを果たしたが3回途中9安打、2奪三振無四死球5失点で降板しプロ初黒星を喫した。ヤクルト、日本ハム、阪神、横浜(現DeNA)で捕手として21年間活躍した野口寿浩氏はそれでも「来季へ向けて楽しみしかない」と評した。

 プロの洗礼を浴びた。1軍初登板の相手はリーグ随一の破壊力を誇る広島。しかも最初の打者は、球団初の5年連続打率3割狙いで異例の1番に入った、侍ジャパンの4番打者の鈴木誠だった。いきなりカウント3-1からど真ん中の148キロ速球を叩かれ、中堅手の右を抜く二塁打を浴びる。続く田中広は147キロで左邪飛に仕留め、長野は外角のフォークを引っかけさせたものの、三塁内野安打となる不運。松山には外角の148キロ速球をとらえられ、左中間を破る先制2点二塁打を許した。

 なおも1死一、三塁のピンチで、堂林をカウント2-2からフォークで空振り三振。高橋大にはファウルで粘られた挙句、10球目の外角高めのスライダーで見送り三振に仕留めた所が、この日最大の見せ場だった。

 3回は無死一塁から、松山に内角を突いた142キロを右翼席中段に運ばれ、さらに坂倉の投手強襲安打、堂林の中前打と続いたところで、降板を命じられた。2番手の星が床田に適時打を浴びて奥川が出した走者を返したため、失点はもう1つ加算された。

 57球でのKOとなったが、2軍でも球数は、今月1日のイースタン・日本ハム戦で5回無安打1四球無失点に抑えた際の56球が最多だった。野口氏は「仮に無失点に抑えていたとしても、50〜60球で降板していたでしょう。内容はともかく、球数は予定通りだったのではないか」と見る。

デビュー戦で打者15人に投げて無四球「ここは褒めてあげたい」

 例年であれば日本シリーズも既に終了している時期だけに、「この季節にナイターをやるのは異例で、やはり寒い。いくら奥川が北陸出身だといっても、1軍デビュー戦の環境としては酷だった」と野口氏は同情し「その中で、実際に1軍の試合で投げられたことでよしとすべきでしょう」と一定の評価。

 そして、「高卒ルーキーがデビュー戦で、打者15人に投げて無四球。ここは褒めてあげたい」と強調。「ストライクが全く入らなくなっても、おかしくない状況だった。打たれても、ストライクゾーンで勝負できたことは、来季につながる。それだけでも、ヤクルト投手陣の中ではアドバンテージになる。今後、彼が主力になっていけば、相手の強打者をボール球で誘い、結果的に四球を与えることもあるが、それでも余計な四球を出さないことは、一流投手の条件。その素質が見えた」と指摘した。

「デビュー戦の相手が、強力カープ打線で良かったのではないか。自分がプロで通用するために何が足りないか、何をしていかなければならないか、痛感できた」と野口氏は前向きにとらえる。

 実際、野口氏によると、この日ざっと見ただけでも、奥川の課題はいくつも浮き彫りになった。

1、走者がいない時には最速148キロを計測した速球が、走者がいる時にクイックで投げると遅くなり、130キロ台もあった。この差を埋める努力は必要。

2、外角の球が多く、内角を攻め切れなかった。相手打者に踏み込まれ、逆方向へ連打を浴びたことで、奥川本人も「プロではここぞの場面でインコースに投げ込めないと、打ち取れない」と気付いただろう。

 中でも「オフにはしっかり体づくりに励んでほしい」と注文をつける。19歳の体は、まだ線が細い印象をぬぐえない。「あの田中将大も、高卒1年目は細い印象だったが、体を大きくするにつれて、どんどん良い投手になっていった。それにならってほしい」と言うのだ。「まだ体ができていないうちに投げ続け、壊してしまうパターンが“ヤクルトあるある”でもある。担当の指導者と相談しながら進めていってほしい」とも付け加えた。

 星稜高時代は2年生の春から4季連続甲子園出場。3年生だった昨夏には、準優勝に貢献した。ドラフトでは3球団の1位指名が競合し、最速154キロ右腕の鳴り物入りで入団。しかし、2月の新人合同自主トレで右肘に炎症を起こして出遅れ、2軍公式戦デビュー後も上半身のコンディション不良で戦列を離れた時期があった。今季2軍のイースタン・リーグでは7試合に登板し、1勝1敗、防御率1.83。19回2/3で18奪三振だった。これまで大きな故障に至る前に休ませ、慎重に育成しただけに、一冬越えた来季の躍進が楽しみだ。(宮脇広久 / Hirohisa Miyawaki)