育成選手から支配下登録を勝ち取れる選手は、全体の中でもほんの一握り

 育成としてプロ入りした選手が、のちに1軍の舞台でチームの主力として活躍する…。そんな光景も、今では当たり前のように見られるようになってきた。2020年のドラフト会議では、史上初めて全12球団が育成ドラフトに参加。各チームの育成に対する意識は、より大きくなっていると言えるのではないだろうか。

 ただ、プロ入り後に育成から支配下登録へと移行できるのは、ほんの一握り。厳しい競争の中で2桁の背番号を勝ち取る選手がひとりでも出れば、その年の育成ドラフトは一定の成果を挙げたといえる。その域にまで至った選手を指名できた年は、球団にとってはいわゆる「当たり年」となるだろう。

 今回はパ・リーグ6球団の過去の育成ドラフトの中で、とりわけ大きな成果を挙げた年(1年〜2年)の指名について、各球団ごとに紹介。指名された選手の顔ぶれ、ならびに各選手の通算成績を見ていくとともに、出色の活躍を見せた選手たちの経歴も振り返っていきたい。

 日本ハムは、育成選手制度を利用し始めたのが2018年からということもあり、育成ドラフトに参加した回数が、昨季までで2回のみと少ない。必然的に、今回の考察対象となるのも2年間のうちのどちらかに。そうなると、球団史上初めて育成ドラフトを経由して支配下昇格を勝ち取った樋口 龍之介外野手を指名した2019年のドラフトが現時点では最高のものとなるだろう。

 独立リーグを経て25歳でプロ入りした樋口は、イースタン・リーグで12本塁打、打率.342、出塁率.441、OPS1.092とプロ1年目から圧巻の打棒を披露。この活躍が認められ、9月22日に支配下登録を勝ち取り、1軍で10月25日にプロ初本塁打を記録。打率1割台中盤と壁にも直面したが、今後のさらなる活躍が期待されるところだ。

 楽天は育成ドラフト導入当初から、1度の会議における指名選手こそ多くはないものの、定期的に支配下登録を経て1軍の戦力となる選手を輩出してきた。その中でも、2008年に揃って支配下に昇格し、1軍の舞台で1・2番コンビも組んだ中村真人氏と内村賢介氏を獲得できた2006年と2007年のドラフトは、選手層の薄かった時期のチームにとっても、大きな意義のあるものとなった。

高木渉、齊藤誠人…西武は2017年に指名した期待の若手が続々

 中村氏はプロ2年目の2008年に支配下に昇格すると、同年は49試合に出場して打率.292、出塁率.346と、チャンスメーカーとして活躍。翌2009年には外野の主力として101試合に出場して打率.270を記録し、球団創設以来初となるAクラス入りにも大きく貢献した。ストライクゾーンから大きく外れた球であっても安打にする独特の「悪球打ち」と、持ち前の俊足を武器として、発足間もない時期の楽天を支える存在の一人となった。

 内村氏も2008年に47試合で打率.289と奮闘し、2年後の2010年には111試合に出場して打率.304、出塁率.367と出色の打撃を披露。翌2011年にも123試合で打率.271と一定の数字を残し、二遊間と外野を守るユーティリティ性も生かして主力として躍動した。2012年は打率1割台と苦しみ、シーズン途中にDeNAへと移籍。その後はレギュラー定着には至らなかったが、163センチの小兵は自らの武器を活かし、プロの舞台でも大いに存在感を放った。

 西武の育成ドラフト出身者として1軍の舞台で最も活躍したと言えるのは、2012年のドラフトで指名を受けた水口大地内野手だろう。独立リーグの2つのチームを経てプロ入りを果たした水口は、プロ3年目の2015年に支配下登録を勝ち取る。翌2016年に1軍デビューを果たすと、出場機会は少ないながら6打数3安打、打率.500と結果を残す。2017年には56試合に出場して打率.280を記録し、内外野のバイプレーヤーとして奮闘した。

 また、現時点では1軍での実績には乏しいものの、1位の高木渉外野手、2位の齊藤誠人捕手が、ともに支配下への昇格を果たした2017年の育成ドラフトも、成果としては一定以上のものがある。高木が20歳、齊藤が25歳とまだ若く、伸びしろも十分。両選手の今後の活躍によっては、この2017年が球団史上最も「当たった」育成ドラフトになる可能性もあるだろう。

 ロッテは育成ドラフト導入初期から、積極的に育成選手の指名を行ってきたチームの一つだ。その中でも2008年に行った指名は、チームの育成ドラフトの歴史の中でも指折りの成功例といえる。この年に入団した西野勇士投手は5位、岡田幸文氏(来季楽天1軍外野守備走塁コーチ)は6位と、同年の育成ドラフトの中でも下位の指名だった。しかし、プロに入ってから両選手は自らのプレーによってその高い実力を証明し、後に1軍の舞台でも大きなインパクトを残す存在となっている。

 西野は2012年のオフに支配下登録を勝ち取ると、2013年には先発として防御率3.80で9勝をマーク。翌2014年からは抑えに回り、防御率1.86で31セーブを上げた。2015年にも防御率1.83で34セーブと抜群の安定感は変わらず、2014年からの3年間で86セーブを記録。その後は相次ぐケガに悩まされ、今季も故障で戦列を離れているが、2019年には先発とリリーフを兼任し、防御率2.96と復活の兆しを見せている。

 岡田氏は2009年に支配下登録へ移行し、2010年に1軍に定着。同年の日本シリーズでは勝てば日本一となる第7戦で、延長10回に決勝点となる値千金の適時三塁打を放った。翌年にはレギュラーとして全試合出場を果たし、そこから2年連続でゴールデングラブ賞を受賞。2011年から6年連続で100試合以上に出場し、俊足と鉄壁の外野守備を生かして、主力として長年にわたってロッテを支える存在となった。

2008年に西野勇士&岡田幸文指名のロッテ、近年も和田康士朗ら活躍

 近年においても、2015年に指名された柿沼友哉捕手、2017年に入団した和田康士朗外野手と、育成ドラフトで指名されてチームの一員となった選手が、今季のチームにおいても貴重な戦力として活躍を見せている。こういった歴史を振り返ってみても、ロッテは育成ドラフトにおいて、総じて一定以上の成功を収めているチームの一つと言えそうだ。

 オリックスは2016年のドラフトで、支配下選手の指名でも1位で山岡泰輔投手、2位で黒木優太投手、4位で山本由伸投手、5位で小林慶祐投手、8位で澤田圭佑投手と、1軍で活躍を見せた投手たちを輩出。大成功だったといえる。そのうえ育成ドラフトでも、1位から3位までの投手がいずれも支配下に昇格し、既に1軍の舞台で存在感を発揮。2005年の球団合併以降では指折りの、大豊作のドラフトと形容できるはずだ。

 張奕投手は外野手としては芽が出なかったが、2018年途中に投手に転向すると才能が開花。2019年に支配下登録され、1軍で先発として2勝をマークした。榊原翼投手は2018年開幕前に支配下へと移行し、同年終盤には先発陣の一角に。2019年は故障で長期離脱を強いられたものの、13試合で防御率2.72と一線級の投球内容を示した。神戸文也投手もプロ3年目の2019年途中に支配下となり、同年には1軍でも19試合で5ホールド、防御率3.86と奮闘した。

 今季は張が先発陣の一角に加わり活躍を見せたが、榊原と神戸は前年同様の勢いは見せられず、やや成績を落としている。それでも榊原は22歳、神戸は26歳とまだ若く、壁に当たった今季の経験を糧に、さらなる成長も期待できる状況だ。今後の3投手の活躍ぶりによっては、現時点でも十二分に成功と呼べるだけの成果を残しているこの年のドラフトが、後年になってさらなる高評価を受ける可能性も大いにあるはずだ。

 ソフトバンクにおける育成出身者の活躍は枚挙に暇がないが、その中でも特に成果のあったドラフトが、2010年と2017年といえるだろう。とりわけ2010年は押しも押されもせぬエースとなった千賀滉大投手と、同じく不動の正捕手へと成長した甲斐拓也捕手が揃って入団。球界を代表する選手が2人も指名されたというだけで大成功と呼べるドラフトだが、それが育成選手としての入団だったということが、なおのことスカウト陣の眼力の高さを感じさせる。

 この年の育成ドラフト5位で入団した牧原大成内野手も、俊足と内外野をこなす汎用性を活かし、現在も1軍戦力として活躍している。5年連続2桁勝利を継続中の千賀、4年連続で100試合以上に出場している甲斐を含め、現チームの主力を3人輩出したこの年の育成ドラフトは、3年連続日本一の快挙にも大きく寄与したものであると言えそうだ。

千賀&甲斐が育ったソフトバンク、近年もリチャードらに期待

 また、2017年の育成ドラフトでも、指名された6人中5人が3年以内に支配下へと昇格しており、こちらもかなりの成功を収めたといえる。この中で最大の出世頭と言えるのは、やはり周東佑京内野手だろう。2019年の開幕前に支配下に昇格すると、足のスペシャリストとしてセンセーショナルな活躍を披露。2020年は打撃面も向上してレギュラーの座をつかみ、13試合連続盗塁の日本記録も達成。同年のリーグ優勝にも、大きく貢献を果たしている。

 4位指名の大竹耕太郎投手も2018年途中に支配下に昇格し、同年には一時期先発ローテーションに加わって3勝をマーク。翌年は夏場以降に調子を崩したものの、6月終了時点で5勝を挙げ、その時点では防御率2.65と好投を見せていた。今季も3試合の登板で2勝、防御率2.30、ウエスタン・リーグでは最多勝、最優秀防御率、最高勝率の3冠と奮闘しており、今後の活躍にも期待がかかる。尾形崇斗投手と渡邉雄大投手も今季1軍デビューを果たしており、開幕前に支配下を勝ち取ったリチャード内野手ともども来季以降の活躍に期待だ。

 ソフトバンクの2010年の育成ドラフトはまさに会心の指名と呼べるものだったが、ロッテの2008年、ならびにオリックスの2016年の指名も、それぞれ素晴らしい成果を挙げたと言えるだろう。また、楽天も球団発足から間もない時期である2006年と2007年に、それぞれチームの主力となる選手を育成ドラフトで獲得。このように、育成ドラフトをチームの成長につなげたケースは、これまでも少なからず存在してきた。

 日本ハムと西武はこれまで育成ドラフトで指名した選手自体がそこまで多くないこともあり、現時点ではそこからチームの主力となる選手を出せていない。とはいえ、近年の育成ドラフトで指名した選手の中にはまだ若い選手も多く、先述の通りに西武においては、既に支配下登録を勝ち取っている選手も複数いる。今後の各選手の活躍次第では、他球団同様の「当たり年」が生まれてくる可能性も大いにあるだろう。

 育成選手から多くの主力が生まれているソフトバンクが2020年のペナントレースを制覇したことからもわかる通り、限られた支配下登録枠に囚われない指名ができる育成ドラフトによる戦力増強は、チームの成長や選手層の拡充といった面でも、重要な意味を持ってくる。チームの中長期的展望にも影響を及ぼす可能性を秘めた育成出身選手たちの活躍に、今後も注目してみる価値は大いにあることだろう。(「パ・リーグ インサイト」望月遼太)

(記事提供:パ・リーグ インサイト)