ギャラクシー賞月間賞:〜NNNドキュメント'14
「山津波 宅地開発の死角〜広島土砂災害の教訓〜」

9月21日放送
24:50〜25:20
広島テレビ放送

 さる8月20日未明に広島市郊外で発生した土石流。山津波となって山すその住宅地を襲い74人の犠牲者を出す大規模な土砂災害となった。多くのニュースメディアは災害発生直後から「避難勧告の発令の遅れ」を問題視するとともに、「未曽有の集中豪雨のメカニズム」や「もろく崩れやすい地質」など自然が引き起こした天災という視点で報道した。

 一方この番組は、発生から1か月後に放送されたものだが、「なぜ山沿いで宅地開発がすすんだのか」「山からの警告はなかったのか」という問題意識で番組を展開していく。30分枠のドキュメンタリーだが、50年以上前の高度成長期の宅地開発にまでさかのぼり、1958年に広島市が「大広島構想」を打ち出して山林や原野を宅地化していったこと、その結果今回の被災地区を含め広島をとりまく山はほとんど団地に生まれ変わってしまったことを当時のニュース映像や資料で明らかにしていく。

 さらに、15年前に土石流が山すその住宅地を襲ったのを教訓にして、国が「土砂災害防止法」を制定したにもかかわらず、広島県は今回死者の出た地域を警戒地域には指定していなかったことも伝えている。被災地の八木地区には、団地の歴史をつづった「30周年記念誌」が残されているが、番組はそれにも注目して、石を積んで急な斜面を平らにしている60年代当時の写真や40年前に起こった土砂崩れの話を掘り起こしていく。さらに興味深いのは、被災地の八木地区には古くから水害を連想させる言い伝えがあり、かつては「蛇落地」とよばれていたが、宅地開発していく過程でその地名は消えていったという。「蛇」がつく土地はもともと水害の危険性が高いと専門家は指摘する。

 この番組は、被災地の地元放送局ならではの明快な視点で今回の災害の背景を鋭く掘り下げ、視聴者に今回の土砂災害は単なる天災ではなく人災だったのではないかと感じさせる。時間軸を意識したドキュメンタリーとして高く評価したい。(出田幸彦)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。