ギャラクシー賞月間賞:
土曜ドラマ「64(ロクヨン)」

4月18日〜5月16日放送
22:00〜22:58
日本放送協会

 たった7日間しかなかった昭和64年。そのわずかな期間に起きたがために「64」と呼ばれる未解決誘拐殺人事件が、時効間近となった平成14年に警察庁長官のD県警視察を契機として動き出す。横山秀夫の原作は、過去の誘拐事件をめぐる真相解明と新たな誘拐事件を縦糸に、現在と過去、警察とマスコミ、刑事部と警務部、県警と警察庁、地方と東京、加害者と被害者、親と子、言えることと言えないことといった多様な対立項を横糸として、精緻に織り上げられた小説だ。 大森寿美男の脚本と井上剛らの演出は、その複雑な構造を正確に、しかもスタイリッシュに映像化し、緊迫感溢れる質の高い警察ドラマを誕生させた。

 最終回、2つの誘拐事件の真相が明らかになった後もドラマは続く。なぜなら本作の中心は謎解きではなく「メディア」だからだ。メディアが人と人や、さまざまな対立項を媒介するものを意味するなら、県警広報室はまさにメディアとして、警察と記者たちを繋ぐべく奮闘する。さらに電話というメディアもまた、 大きな役割を果たす。登場人物たちを翻弄する犯人からの電話に、真犯人を探す執念の無言電話。それらを経て終盤で映し出される文字盤の擦り切れた公衆電話は、過去と現在を繋いでこのドラマに深い余韻を与える。そして最後に三上の自宅にかかってきた電話は、失踪した娘からかもしれないというかすかな希望を感じさせて、このドラマに一条の光をもたらすのだ。

 エンドロールまで凝りに凝った映像や大友良英の音楽など賞賛すべき点は多々あるが、本作の成功を導い た最大の功労者は、主人公であるD県警広報官の三上を演じたピエール瀧だろう。原作どおりの鬼瓦のようないかつい顔、昭和を引きずる雰囲気、そして静謐な佇まいながら熱を帯びた演技により、広報官という微妙な立場で2つの誘拐事件に関わってゆく三上の葛藤や決断を骨太に表現しきった。ほかにも、重厚感のある柴田恭兵、躍進著しい永山絢斗、独特の存在感を放つ新井浩文、翻弄されるキャリア組捜査二課長を演じた森岡龍らの好演が光った。(岡室美奈子)


★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。