ギャラクシー賞月間賞:NHKスペシャル「発達障害〜解明される未知の世界〜」


5月21日放送
21:00〜21:49
日本放送協会


 今春からNHKがスタートさせた大型企画「発達障害プロジェクト」の第一弾。生放送を通じて障害を抱える人や支える人たちの声を吸いあげようと試みた。

 発達障害という言葉は聞いたことがあっても、正直、具体的にどのような障害なのか見当もつかなかった。ところが番組によると、外界の光が明るすぎて耐え難いという人や、周囲のあらゆる音が大音量で耳に飛びこんでくるという人がいる。かと思えば、注意を集中させることができずに他人の話が頭に入ってこないという人も。そうした人々が実際に感じる世界を映像と音声で再現した点は画期的で、目からウロコが落ちる思いだった。それらについて実際に障害を持つ人をスタジオに招き、さらに詳しく話を聞くのだが、その際にスタジオセットなどに工夫を凝らし、彼らが話しやすい環境を作ったのも前例のない配慮だろう。

 また、そのなかの一人は、いつも何かを抱えていないと落ち着いて話せないと言い、スタジオでもぬいぐるみを膝に乗せていた。生放送の画面に映しだされるその姿こそが、この障害の実像を見る者に訴えかけたにちがいない。自ら注意欠如症であると告白したタレントの栗原類の言葉にも説得力があり、多くの視聴者が認識を改めたはずだ。それだけに刻一刻と寄せられた視聴者からの反響が、今ひとつ紹介しきれなかった感があった。番組終了後、ネット上に場を移して展開したようだが、放送枠内でもうひと工夫あってもよかった。このあたりは今後の関連番組内で改善されることを期待する。

 健常者と障害者との間にまるで一つの国境があるかのように考えがちだが、特にこの障害に関して言うなら、明確なラインはないように思えた。番組で指摘された特有の「感じ方」について、程度の差こそあれ、「自分もあてはまるかも」とつい考えてしまったからだ。それだけに社会の側がほんの少し気遣うだけで、この障害に苦しむ人たちの生きづらさを軽減できるかもしれない。その気づきをあたえてくれる出来栄えだった。(旗本浩二)

★ギャラクシー賞月間賞とは?=NPO放送批評懇談会が、優れた番組を自主的に選び出す制度。月間賞に選ばれた番組は、年間のギャラクシー賞審査に自動的にエントリーされる。