1998年に発売された初代『GUILTY GEAR』から、多くのシリーズ作品を経て2017年5月にリリースされた、アークシステムワークスの対戦格闘ゲーム最新作『GUILTY GEAR Xrd Rev2』。2017年7月14日から7月16日にわたってラスベガスで開催された「Evo 2017」でも対戦種目として採用され、競技シーンの盛り上がりも年々高くなっています。

シリーズの生みの親として作品の原案、キャラクターデザイン、音楽、作品の至る所に20年近く携わってきたのが、ゼネラルディレクター石渡太輔氏。「Evo 2017」決勝戦の直後、編集部は大会を見守ってきた石渡氏 にインタビューを実施。『GUILTY GEAR Xrd Rev2』の開発話にはじまり、e-Sportsに対する考え方とハードル、そして格闘ゲームというジャンルの将来について、幅広く語ってもらいました。

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――あらためて、石渡さんの自己紹介をお願いします。

石渡太輔氏(以下、石渡 ): アークシステムワークスのゼネラルディレクターの石渡太輔と申します。よろしくお願いします。『GUILTY GEAR』シリーズの総監督を務めております。

――今年の「Evo 2017」はいかがですか?

石渡: : 毎年思うのですが、とにかく規模が大きい。そして、明るいノリの良さが非常に居心地よくて、まさしくお祭り騒ぎとしてすごく楽しいイベントだと思っています。今年は例年に比べて、徐々に選手以外の日本人もちらほらとみるようになった気がします。日本人が「Evo」という存在をどんどん認識し始めているのかなと感じています。

――海外のファンと接するチャンスでもありますね。欧米ファンの印象はいかがですか?

石渡: : とにかく陽気ですね(笑)。友達感覚というのが一番強いです。日本のファンの方とお会いすると、一歩引いている印象があるんですが、こちらでは気さくに話しかけてくれることもあり、すごく楽しいです。

――『GUILTY GEAR Xrd Rev2』決勝戦が終わりましたが、ご覧になりましたか?

石渡: 見てました。ずっと見てました。


――決勝戦の印象は?

石渡: 今回、おみとくんが何をやっても良い結果になって、いわゆる神が取り憑いているんじゃないかという印象を受けましたね。決して実力が離れているわけではない選手に対して、あれだけ圧勝していたので。本人も言ってましたが、何をやってもいい結果になっているような感じでしたね。

――そうですね。キャラクターがちょっと弱体化されたあとでもあんな風に圧勝できてすごいですね。

石渡: はい、それもありますが、何よりも決勝戦での対戦相手のキャラクターが「レオ」だったので、レオびいきみたいな傾向があって、レオが勝つと観客からすごい歓声が沸き上がっていて、これはやりづらいだろうと思っていたんですが、それを全部シャットアウトしてゲームに集中していたと言ってましたね。

――8人の選手が、それぞれ別の8人のキャラクターを使用していたのも珍しく感じました。バランスが非常によくなっている印象を受けます。

石渡: バランスに対しては、見ていて飽きないという面でも本当に良いです。ただ、日本のファンの人たちも言っているのですが、選手が全員日本人だったのは、海外の大会という面でも、盛り上がれない部分もあったかなと思います。自分たちがリリースをする段階で、日本人に強さが偏らない方法も考えるべきだと痛感しました。

――海外勢がベスト8には入れませんでしたが、手ごたえは確かにあるように見えました。去年のチャンピオンのまちゃぼー選手が、KID VIPER選手に負けたのもありました。海外の選手と接するチャンスはありましたか。

石渡: 残念ながら今年の訪問では、海外の選手と交流することがほとんどありませんでした……。次回は積極的に交流できるような時間を設けたいですね!チャンスという面では、結果的にベスト8が日本人選手になりましたが、海外選手の皆さんも確かな実力を持っていて、去年、今年と、ベスト8に勝ち上がっても全く不思議ではないと思っています。

――今回も海外の人が「アークレボリューションカップ」に参加できたらいいなと思います。

石渡: そうですね。是非お招きできるようなイベントも考えたいと思います。

――『GUILTY GEAR Xrd Rev2』が「Evo」の種目になったのは今回が初めてですが、昨年の『REVELATOR』の試合に比べ、「らしさ」が違ったといったところはありましたか?

石渡: 『Rev2』で増えていることは特にはないと思うので、『Rev2』らしいということはないんですが、やはり調整面で手を加えた結果が、そのキャラクターのバラツキに出ていたりしてたので、そういう意味でうまくできたのかなという気がします。

――『Rev2』を企画していた段階で、キャラクター全員を調整して新しいバージョンとして発売するということに関して、どういった目的があったのでしょうか。

石渡: 本作には、「整える」というのが一番コンセプト的にあって、『SIGN』から『REVELATOR』まで出来上がった、今回の『Xrd』シリーズのゲームスタイルをとりあえず完成させるというのが目的でした。したがって、特に引いたり足したりをせず、今まで出来たものをまず一回きれいにまとめましょうというのがコンセプトでした。結果、成功したのかなという気がします。

――発売する前に、複数のロケテストで得られたフィードバックで、改善すべき点はありましたか?

石渡: フィードバックは細かい部分が多く、逆に大きなトピックは特になかったのですが、積み重ねでキャラクターの技が強すぎるとか弱すぎるとか、基本システムでこれは良くなかったみたいな、パラメーター的な部分をとにかく内部に調整していったという感じですね。

――発売後、意外なことはありましたか?

石渡: 今のところ、意外だった点はない気がします。いくつかユーザーさんから寄せられている意見についても、「それはもう少し時間経ったら評価が変わってくるから」と感じていますね。


――今回、2人のキャラクターを追加しましたが、そういった経緯でその2人になったのでしょうか。

石渡: まず、キャラクターを2人追加することが決まっていました。『REVELATOR』の企画が立ち上がった時点で、時間と予算の都合で2人しか作れない。そうしたら、まず1人は完全に新規のキャラクターを入れて、一方は過去作品に出ていたキャラクターを入れる事になって、その中で、ファンが求めているのは何なのか、『REVELATOR』ストーリーやキャラクター等、様々な観点で考えた結果参戦が決まったのが「梅喧」です。新規キャラクターについては、既に参戦が決まっている梅喧とは性別が異なるほうがいい等、同じく様々な議論を重ねて生み出されたのが「アンサー」でした。

――アンサーは『REVELATOR』以前に存在していたキャラクターですね。

石渡: そうですね。『SIGN』のころからストーリーモードに登場していて、デザインは基本的に変わってないです。ただ、ストーリーモードに出ていた時よりも、バトル用のキャラクターにするためにちょっと体のプロポーションを変えたり、髪の毛のボリュームが大きくなってたり、そういったマイナーチェンジはしているんです。

――彼の戦闘スタイルを考えたときに、どういうことを意識しながら今の形になりましたか。

石渡: 弊社作品では『ギルティギア』以外も含め忍者キャラクターが結構出てくるんですが、、実はどれも忍者っぽくないんですね。そこで、ちゃんと忍者っぽい動きができるキャラクターを作るのが、コンセプトになっていました。

――今回の「Evo 2017」では、梅喧もアンサーもあまり使われていない印象を受けます。選手からは「ちょっと弱いと感じる」との声がありますが、どう感じていますか?

石渡: そうですね。ただ弱いと言われると語弊があるかなと思います。まだまだキャラクターのやり込みや研究の余地がありますし、特にアンサーに関しては、ポテンシャルがすごく高いキャラクターなので、まだまだ秘めている力があると思います。ただポテンシャルがあるものに対して、「わかりやすい強さ」を入れてしまうと、単純に強いだけで奥深さはなくなってしまいます。戦いの中で生まれる駆け引き等、もっと面白いポイントを見つけてもらえればプレイ人口にも変化は出ると思うので、今後に期待して欲しいです。

――『Rev2』に新コンテンツやバランス調整を入れる予定は?

石渡: アフターストーリーCを配信予定ですが、それ以降は今のところ具体的には決まっていないですね。 

――ファンから「このキャラクターを出して欲しい」という声がとても多いですが、みんなが応援し続ければ可能性はあると。

石渡: お金がたくさん入れば全部出せます(笑)。……と冗談はさておき、やはり、ユーザーのみなさんから要望の声が高いキャラクターと、開発から見て「今」この作品に入れてもいいかというところでに差異があったりしますね。例えば、単純に人気だけで言うとブリジットを出してほしいという声が多いので、出せばファンの皆さんにおそらく喜んでもらえると思うのですが、『REVELATOR』のストーリーやキャラクターの中にブリジットを入れて面白いのか? というところが一番の判断基準になってきます。しかも、今回のタイトルの場合は、2体しか出せないと縛りもありましたし、シビアな判断をせざる得ませんでした。僕個人としてはロボカイを出したいですが、「それを今入れて楽しいのか?」という疑問もあり、なかなか実現に至っていません。

――会場では、決勝終了後にロボカイの発表があるという噂が流れていましたが。

石渡: ないですね(笑)。残念ながら誰が言ったかわからないんです。予算があれば全部まとめて出したいので。作りたいです。そのためにみんながゲームを買ってくれると嬉しいです(笑)。

「Evo 2017」のアークシステムワークスブース
――『GUILTY GEAR Xrd』の時代に入ってから、「e-Sports」というキーワードがよく取り上げられていて、「Evo」のような大会がさらに大きくなっていますが、アークシステムワークスや石渡さんは「e-Sports」というコンセプトを意識していらっしゃいますか?

石渡: アークシステムワークス(会社)と僕(個人)で、必ずしも意見が一致しないというところはあります。僕と森でも、かなり意見が違いますし。僕自身、やはり「e-Sports」の考え方は、本来そうあってほしいと思った流れがようやく来たな、という気持ちです。日本でいうとやはり将棋、アメリカだとチェスのような、認識は結構されていると思います。でも、チェスが上手い人が偉い人というところはあるけど、ゲームの上手い人は偉い人にはなかなかならない。でも、本当は同じぐらいの苦労をしているはずだし、名誉があっておかしくないはずです。でも、そう簡単にはいかない事情があるのに対して、世の中でゲームがもっと認められていく仕組みを作りたいと昔から言っているので、「e-Sports」がもっと流行ればいいと思っています。色々な人たちがそのやり方を考えているので、どうまとまるのかはわかりませんが、僕もいろいろアイデアを出していきたいと考えています。

――そのアイデアを少し聞かせていただけますか?

石渡: ちょっと難しくて細かい話になりますが、例えば日本は海外みたいに賞金がたくさん出せないです。まず、これが高い壁になっているので、「どうしたらゲームで一位をとるのが名誉になるのか」を色々なルートで考えています。賞金以外に、どういうことをしたらプレイヤーがこのゲームをやっていてよかったと思えるようになるのかを考えています。これからやるべきことにも関係してくるので、今は具体的なことはお話できません。

――特にゲームセンターでのプレイ人口減少に伴ってか、格闘ゲームプレイヤーも減っている印象がありますが、どう感じていますか?

石渡: その原因はすごく簡単で、家庭用機でアーケードよりクオリティの高いものが遊べるようになってきたからだと思います。具体的な例を挙げると、昔よりも家庭用でのネットワーク対戦における遅延も、技術が進んでほとんど気にならなくなりましたよね。だとすればユーザーが真剣勝負の場をゲームセンターから、自宅に移していくのは、自然な流れだと思います。その結果、どうしてもアーケードが盛り上がらない印象を持たれてしまう仕方ない気がしますが、かといってアーケードに価値がないとは僕は全く思っていません。例えば音楽があったら、CDが完成されている音楽のバランスだとしても、ファンはライブに行って生で聞きたいと思うのと同じようなことが、おそらくアーケードにもあると思います。どうやってみんなに、「だから面白い」と感じてもらえる仕掛けができるのか、これからも探っていきたいです。

――格闘ゲーム自体も、「おじさんっぽい」と言われる印象もあると思いますが、どうやれば若者に好きになってもらえるのでしょうか。

石渡: 格闘ゲームと言われると、第一の理由はおじさんが強いからなんですよね。だから若者が入ってこれない。なぜそうなのか。これはよく社内で言っていることですが、格闘ゲームの世界は、メジャーリーグと草野球があったとして、これが入り乱れているのです。例えばベーブ・ルースがジュニアリーグに入ってきたら冷めるじゃないですか。「お前出てけよ」みたいな感じになるのに、それが実現してしまうのが今のゲームの世界なんです。もっと同じレベルの人が対戦したら、上手い人も下手な人も絶対に楽しいです。その土壌をしっかり整理しようというのが一応僕らの見解で、どうやったらいいのか、具体的なビジョンはまだできていませんが、それを実現させるためのアイデアを出し合っているような状態です。

――格闘ゲームというジャンルに問題はないと。

石渡: 問題ないです。絶対面白いです。

――私もそう思います。自分が『GUILTY GEAR Xrd』のPC版をやり始めたとき、プレイヤーが非常に少なく、強い相手としか対戦できないこともありました。PC版とPS版のクロスプレイの可能性は将来にあるのでしょうか。

石渡:セキュリティの問題などもあるので、簡単にクリアできるものではありませんが、もちろん可能性はあります。一番いい形は、やはりユーザーさんが喜んでくれる形だと思うので、それを実現させるために色々な壁を乗り越えていく必要は僕らにも常にあって、その課題を課題のままにしないことが非常に重要だと考えています。

――「Evo 2017」で10種目以上の格闘ゲームがプレイされていますが、格闘ゲームに詳しくないファンが入った時、『ギルティギア』を選んだほうがいいというアピールはありますか?

石渡: 変な風に聞こえるかもしれませんが、『ギルティ』だからやってくれということは特にないですね。格闘ゲーム全般を僕は一つのコミュニティーだと考えているので、何のゲームでもいいから、まず格闘ゲームに触れてもらって、それが楽しいと思ったときにうちのゲームが気になるなら、是非遊んで欲しいですね。

――ギルティファンの熱量はものすごく高いと感じます。他のタイトルの参加者が昨年と比較して約3割減でしたが、『ギルティ』は少ししか減っていません。

石渡: ありがたいことに、非常にコアなファンが多くて、会社を支えてくれています。僕らはいつかその恩返しをもっとはっきりとした形でしたいと思っていますので、これからも愛して頂けると嬉しいです。

――『ギルティ』のこれからはどうなるのでしょうか。

石渡: それはまだ言えないです(笑)。ただ、現時点ではわかりませんが、『Rev2』で、『SIGN』までの『ギルティギア』というものをゲームとしては一回完結していると思っているので、次に『ギルティ』がリリースできるのであれば、システム的には結構ガラッと変えたいなと考えています。

――日本のファンへ向けてメッセージをお願いします。

石渡: とにかく「Evo」は楽しいです。決して安い旅行にはなりませんが、興味を持ったらちょっと勇気を出して、いつかこの会場に来てほしいです。そうすれば、きっとたくさん世界の友達ができると思います。そして、大げさな話ですが、格闘ゲームは世界平和のひとつだと思っています。こうやって色々な国のプレイヤーが「Evo」という会場に集まって友達を作り、次の年にまた会う、というコミュニティーを形成しているのは、すごく人間的に感動できます。たかだかゲームごときに、とか思う方もいるかもしれませんが、これをきっかけに親友ができたり結婚した方もいるので、ものすごく重要なことをやっているのではないかと思っています。この言葉に騙されてやろうかな、思った人がいたら、ぜひ来年は「Evo」に来てください。

――どうもありがとうございました。