PGAツアーで通算7勝、2012年の「全米オープン」チャンピオンでもあるウェブ・シンプソンは愛妻家であり、5人の子どもを持つ父でもある。世界最高峰のツアーで戦うトッププレーヤー、またその現場で長年取材してきた現地ジャーナリストが記すスペシャルコラム。今回はシンプソン自身が筆を執り、大家族の生活について記した。

僕たちは昔からずっと大家族になりたいと考えていた。妻のダウドは5人きょうだいの長女、そして僕は6人きょうだいの下から2番目の子どもとして生まれた。正確に「子どもは何人ほしい」とは考えなかったけれど、僕たちは幼いころに最高の経験をさせてもらったから、同じような人生を自分の子どもたちと一緒につくり上げたいと思ったんだ。

今、僕たちには5人の子どもがいる。9歳、7歳、6歳、4歳そして19カ月。生活はいつも忙しく、楽しい。両親としてあるべき姿に毎日反省している気分だけど、子どもたちが優しさをくれること、僕たちがヘマをしても許してくれることに感謝している。日々、勉強だ。

子どもに教えること、しつけること。親としての仕事は流動的なプロセスのひとつだと思う。ひとつずつ、間違いから学んでいく。子育ては今までの人生で一番の喜びを与えてくれると同時に、チャレンジも強いられる。20人の子どもがほしいと感じるときもあれば、クローゼットで隠れていたいと思うときもある。それでも楽しい。

ダウドと僕はこの旅路における真のパートナーだ。父親として行ってきたことのほとんどは、母親の彼女に影響を受けている。どんな結婚生活でもコミュニケーションがとても大事だと思うし、どんな人間関係でも同じだ。特に、僕たちのように(遠征で)離れ離れになることが多い結婚生活なら、なおさらそう。お互い、コミュニケーションの取り方を理解していなくてはならない。

ときにはシーズンのスケジュールの都合で、自分が望んでいた以上に多くプレーする時がある。ダウドはそのことに対して寛容だ。実際に何年か前、僕はツアーに集中すべきで、彼女は自宅のことはすべて自分が責任を持ってやると信じてほしいと言ってくれた。

その代わり、家にいる時は家庭のことに集中する。1週間のオフがあれば、夜にゴルフチャンネルを2時間も観ることはない。子どもと一緒に思い切り過ごす。ツアー出場となると、子どもたちが恋しくなるし、彼らのことばかり考えるけれど、ダウドは「いい? 家を離れたら、しっかりゴルフに取り組んで! 一生懸命プレーして、素晴らしい1週間を過ごして! 帰ってきたら私たちと楽しんでほしい」と言ってくれる。彼女のこの姿勢が僕の意識を変えて、すごく良い影響を与えてくれている。

■娘の名前に優勝した試合の名前

学校がある時は、子どもたちはあまりトーナメントに来られない。おそらく多くて(年間)6、7試合で、週末だけ来ることもある。ダウドが1年に1、2回ひとりで来てくれることもあるけれど、そう多くはない。

僕らがノースカロライナ州のシャーロットに住んでいるのは好都合で、ホームタウンで毎年「ウェルズファーゴ選手権」が行われる。ダウドや子どもたちが車で来られる距離で開催される「マスターズ」(ジョージア州)や、「ウィンダム選手権」(ノースカロライナ州)、ことし優勝した「RBCヘリテージ」(サウスカロライナ州)といった大会もある。これらすべての試合が僕にとって特別だ。3番目の子どもは2011年にグリーンズボロで優勝したことから“ウィンダム”と名付けたんだ。

とはいえ、家族全員がツアーに来られない時期もある。上の3人の子どもは学校に行っていて、4歳の子は学校が始まるのが待ち遠しくてたまらない。子どもたちはスポーツや演劇に熱中していて、そのうち僕には葛藤が生まれてくるはずだ。発表会などのイベントがあると分かっていながら、ツアーに行くのはきっとつらくなると思うから…。

家を離れるのは決して簡単なことではない。ジャック(長男のジェームズ)が6歳くらいの時、僕が「全英オープン」で8日間出かけると伝えたら、駐車場で泣き始めて、僕も泣いてしまった。みんなにキスして彼らに「愛してる」と伝え、目に涙を浮かべて出かけたんだ。空港までの車の後部座席でも泣いてしまったよ。

子どもたちは大きくなるにつれて、考えも変わってきた。ジャックがあの日そうだったように、はっきりした方法で「行ってほしくない」ことを伝えられるようになった一方で、僕の仕事をより理解して、離れ離れになることも納得してくれるようになった。

ツアー中は、FaceTimeで連絡をとっている。夕食の時間や寝る時間には、邪魔しないよう電話しない。僕と話すと、子ども達はハイテンションになってしまうから。末っ子のエデンは電話で僕の声を聞いた途端に泣き出してしまう。それでも1週間に何回か話して、1人1人とその日あったことを話してもらうようにする。それが彼らにとって功を奏しているかはわからないが、少なくとも僕を救ってくれている。

■長男が初めて歩いたその時に

もちろんツアーに出ていると経験できないこともある。2012年に「全米オープン」で優勝した週に、ジャックは初めて歩いた。ダウドが電話してきて「つらいかもしれないけど、知りたいと思って電話したの。ジェームズがきょう歩いたの」と言ったのを覚えている。胸が張り裂けそうだった。

ツアーでプレーすることで、家族の大事な瞬間を逃してしまうことに慣れてくる。当たり前になってしまうことが悲しい。けれど、新型コロナウイルス感染拡大によるシーズン中断中は、4カ月ずっと自宅で過ごした。おそらく結婚して以来、初めてのことだ。エデンの成長を見るのは感慨深い出来事のひとつだった。日々の成長や変化を見ることで、特別な意味でエデンをより身近に感じさせてくれた。

以前は何週間もツアーに出てから家に帰ってくると、いつもとは違うストレスを感じる瞬間もあった。でもダウドにこう言われた。「ここ何週間、あなたは自分のスケジュールで動いていたから気持ちは分かるわ。スターバックスに行きたい時に行き、練習したい時に練習して、寝たい時に寝て。でも今は自宅にいるの。子どもたちはあなたに自分のことを見てもらいたいと思うし、あなたとの時間を必要としているの」

だから僕には、帰途につく飛行機や車の中で行う習慣がある。祈るんだ。「忍耐強くいられますように。自分の欲を抑えて、家族の手助けができますように」と神様に力を貸してもらいたいとお願いする。

これは僕自身が意識的に努力しなくてはいけないことだし、本来は喜びのはずだ。ツアーでひとりの時間を過ごした後、騒々しい大家族の中に戻るときは小さな違和感があって当然。自分のあり方を改善するために時間をかけて、“ゲームプラン”を考える必要があったんだ。このことを置いて、僕の人生はあり得ない。