海の向こうからうれしいニュースが届きました。「スコットランド女子オープン」で古江彩佳選手が優勝。最終日「62」をマークする圧巻の内容でした。海外に本格参戦して1年目で勝てたことには大きな意味があります。

松山英樹選手がそうであったように、多くの選手や関係者に一目置かれ、居場所を作りやすくなる。例えば予選ラウンドのペアリングも上位選手と組む機会が増えると思いますし、どんどん“環境”も良くなっていくはず。米国で先輩となる畑岡奈紗選手や笹生優花選手、同じくルーキーの渋野日向子選手はもちろん、日本人選手全体に大きな刺激をもたらしてくれる1勝といえます。

このコーナーも特別編として、古江選手をはじめ12人の日本勢に期待が高まる「AIG女子オープン(全英女子)」にフォーカス。何と言ってもトピックは開催コースのミュアフィールドですね。過去に16回も「全英オープン」をホスト。“聖地”セントアンドリュース(30回)、第1回大会が行われたプレストウィック(24回)に次ぐ回数ですから、いかに歴史と伝統を誇る舞台か分かります。

この超名門コースでは過去273年も女性メンバーを認めず、一度は全英の開催ローテーションから外された経緯があります。2度目の投票によって女性メンバー受け入れを決めたのが2017年。当地で初めて行われる全英女子は、まさに歴史的な大会といえるでしょう。

13年に松山選手が初出場で6位に食い込み、最高成績を出したのがミュアフィールド。僕も全英開催地の中で一番好きなコースです。リンクスには珍しくティショットの落としどころがブラインドのホールがなく、美しい景色が広がっています。

全英らしい強い風が吹いた9年前は気温が高く、とにかく地面の硬さに衝撃を受けました。フォローの風となるホールでは、3Iでも軽く300ydに届いてしまうほど。すべての番手でキャリーと転がりの計算をどれだけ正確にイメージできるか。フォロー、アゲンスト、横風に対してどの球筋を選び、風にぶつけていくのか、乗せるのか。コブの傾斜をどう利用していくか…とにかく練習ラウンドの事前チェックがポイントになります。

ミュアフィールド 17番パー5 (544yd)

今回ピックアップするのは17番(パー5)。左ドッグレッグのロングホールです。南風が吹いた場合は右からの風になるため攻めやすく、2オンも狙えるチャンスホールになります。しかし、北風が吹いた瞬間に状況は一変。左からのアゲンストで難度が跳ね上がるのです。

ティショットでは左サイドのバンカーを避けつつ、フェアウェイに置くのがセオリー。飛距離のある選手ならバンカー越えのショートカットも狙えますが、失敗すれば左のブッシュに入ってトラブルもあり得る。セーフティに右へ逃げれば逃げるほどセカンドの距離が残りますし、深いフェスキューも気になってきます。

レイアップの際はグリーンの手前、100〜120ydくらいのエリアに点在するクロスバンカーが悩ましい。セカンドの状況が悪ければ、このバンカー群の手前に刻まなければならず、3打目は長い番手でグリーンを狙うことになります。グリーン自体も花道の入り口が狭く、左右にはポットバンカー。ナイスショットをそろえればイーグルも狙える一方、ひとつのミスでボギー、ダブルボギーが出るホールです。

実は個人的に苦い思い出もある場所。13年の全英3日目、優勝争いに加わっていた松山選手がスロープレーで1罰打を受けたホールだからです。

バックナインの途中で警告が入って迎えた17番。左に大きく曲げた後のセカンドは、深いフェスキューの中からレイアップしようにも、バンカーとマウンドを越えなければいけないタフなショットでした。勝つためには絶対に落とせないからこそ、僕も距離を歩測し、そこで少し時間がかかってしまったかもしれません。アテストの際、同じ組のジョンソン・ワグナーが松山選手のために猛烈に異議を唱えてくれたことを覚えています。

1972年の全英最終日、リー・トレビノはこのホールでグリーン奥からチップインを決めて連覇を引き寄せました。当地初開催の全英女子でも終盤に必ずドラマが待ち受けているはずです。(解説・進藤大典)