◇世界選手権シリーズ◇WGCブリヂストン招待 最終日(6日)◇ファイヤーストーンCC(オハイオ州)◇7400yd(パー70)

首位に2打差の4位で出た松山英樹が1イーグル、7バーディの「61」をマークし、通算16アンダーとして2月「ウェイストマネジメントフェニックスオープン」以来となる今季3勝目を飾った。自身が持つ日本人最多の米ツアー勝利数を5回に更新。後続に5打差をつける圧勝劇を支えたのは、過去4勝にはなかったメンタルコントロール術だった。

序盤2番(パー5)でグリーン奥からチップインイーグルを決め、最初にトップタイに並んだ時点で、松山は自らに誓いを立てていた。「きょうはリーダーボードを見ないでプレーしよう」。リアルタイムで他選手のスコアと、自身の順位を示す電光掲示板には目をやらない。これまでは「自分のポジションを把握してプレーするのがゴルフ。とくに優勝争いのときは」としてきたが、この日はその姿勢を変えた。

スタイルの変更を決断したのは、今大会は連日ショットの不調に苦しんでいたから。「たまには見ないでやってみようかなと思って。きょうも(自分に)期待していなかったので」。9番までに3つバーディを奪い、折り返した時点で単独トップに立っていたことも知らない。誰がライバルになっているかも分からないままホールを進めた。

途中「(ボードを)見るのを我慢している自分がすごくイヤになってきた。『なんでこんなに我慢しているんだ…』って(笑)」という、自業自得のフラストレーションもたまった。そのイライラは思わぬところで解消された。16番(パー5)のティグラウンド脇で立ち寄った仮設トイレから出た際、隣の15番グリーン脇に設置されたボードが目に入った。

「あ、やっちゃった。見ちゃった!」と一瞬、戸惑いつつも、後続に2打差をつけていることを確認した。「残り3ホールでひとつくらい伸ばせれば…と思ったが、3つ取れて良かった」と圧巻の3連続バーディフィニッシュを決め、タイガー・ウッズが2013年に記録したコースレコードに並んでみせた。

今大会は2011年「マスターズ」初出場から数えて、ちょうど米ツアー100試合目。新たなトライはこの世界最高峰の場所で実際に見て、感じてきたものだった。世界ランク1位のダスティン・ジョンソン、先輩プロで今季スポット参戦を重ねる谷原秀人の名前を挙げて「(彼らは)あまり怒らないでやっている。自分もやってみようかなと思って、やってみたら今週たまたま良かった」と話した。

「例えばジョーダン・スピースは感情を(強く)表現している。自分もああなったら、どうなるのかと考えるが、(スピースのスタイルでは)自分が自分ではなくなるような気がする」。トップクラスへと駆け上がる過程で、試行錯誤してきたのはショット、パットの精度や体力だけではない。気持ちの操作もそのひとつだ。

昨年10月から年末にかけて、松山は世界で5戦4勝(米ツアー外競技、日本ツアーを含む)という破竹の勢いを見せた。当時は「自分が『もっとできる』と思ってやると、うまくいっていたが、そうでなくなったときに“反動”が大きかった」というが、「今週は気持ちがハイにならずにやったら良かった。そのバランスが難しい」と思案は続く。メジャー最終戦「全米プロゴルフ選手権」は4日後に始まる。「“探り探り”で。来週のメジャーも考えながらやりたい」。2つ目のWGCタイトルをもたらした最終日の作戦は、メンタル術のひとつのオプションになった。(オハイオ州アクロン/桂川洋一)