横浜の湊町を舞台に、アウトローな人間たちの生き様を描いた舞台『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』が衛星劇場で初放送。主人公・柄沢純を演じたのは、舞台、映画、ドラマなどジャンルレスで注目を集める玉城裕規さん。歌舞伎の人気演目を現代版として大胆にアレンジした脚本、若手実力派と個性あふれるベテラン俳優との競演も話題になった今作を、改めて振り返ってもらった。

 

玉城裕規●たまき・ゆうき…1984年7月10日、沖縄県出身。2010年に参加したJapan Anime Liveの『NARUTO -ナルト-』サスケ役や、翌年からスタートした舞台『少年ハリウッド』シリーズで注目を集める。代表作に、舞台『弱虫ペダル』『刀剣乱舞』、主演映画『浅草花やしき探偵物語 神の子は傷ついて』『さよなら グッド・バイ』など。2月から舞台『文豪とアルケミスト 捻クレ者ノ独唱(アリア)』に出演。

 

見た目だけでは分からない、内面に潜む狂気を表現

 

──昨年の夏に上演されたこの作品を振り返り、改めてどのような舞台だったと感じていますか?

 

玉城 とても刺激が強めの作品でした(笑)。豪華すぎる共演者の皆さんもそうですが、演出のシライ(ケイタ)さんの攻めの姿勢がすごくて。稽古前にシライさんが、「全員が主役で、全員が看板役者になる舞台にしたい」とおっしゃっていたのですが、まさにそのとおりになったなと感じています。

 

──最初に台本を読んだときは、どのような印象でしたか?

 

玉城 稽古中に少しずつ台本が出来上がってくるという流れでしたので、シライさんを含め、誰もが物語がどう展開されていくか分からなかったんです。でも、それが逆に面白かったですね。この作品は歌舞伎の人気演目である『三人吉三』を現代版の任侠劇にアレンジしたものなので、みんながみんな、「自分は最後に死ぬんじゃないか?」と想像していたりして(笑)。また、『三人吉三』の核ともいえる3人の人間の物語については、3人の父親たちと、その息子や娘という2つの世代を使ってエピソードを展開させているんですね。しかも、オリジナルに近いのは親たち(渡辺哲、山本亨、ラサール石井)であり、僕たち“子どもチーム”の3人(岡本玲、森優作)は親子の血の繋がりに振り回されるという内容でしたから、そうした部分でも新鮮でした。

撮影:宮川舞子

 

──親世代の3悪人は迫力がありました。

 

玉城 “悪”のレベルが強すぎですよね(笑)。でも皆さん、普段はとても優しくて。なかでも、僕の父親役を演じられた哲さんは、見た目に怖さがあるものの(苦笑)、ご本人にもお芝居にも、すごく愛があるんです。劇中で哲さんが仲間に自分の息子のことを語るシーンがあるのですが、初めて稽古場で見たときは、僕も息子の純の気持ちになって、理屈じゃなく涙が出てきました。2人は決していい親子関係ではないんです。でも、たまに出る愛情がものすごく深い。あのシーンを見た瞬間、僕と哲さんの親子の関係性が出来上がったような感じがしました。

 

──確かに、不思議な絆で繋がっている親子ですよね。

 

玉城 そうなんです。でも、正直それなら、“もっと愛してよ!”と思いましたけどね。途中で、思いっきりボコボコにされますし(笑)。それでも、ラストでは2人の心が通ったような瞬間もあって。そのシーンは僕にとっても印象深かったです。また、ラサール石井さんや(山本)亨さんからもいろんなアドバイスをいただきました。お2人とも多くを語る方ではないのですが、短い言葉のなかにすごく心に響くものがたくさんあって。もし、コロナ禍でなければ稽古後に一緒に食事をして、お酒の席でしか聞けないようなお話もしたかったのですが、それだけがとても残念ですね。

撮影:宮川舞子

 

──そんな個性あふれる男性陣の中に混ざりながらも、唯一無二の存在感を放っていたのが村岡希美さんでした。

 

玉城 村岡さんは、稽古場でも居方がとても自然なんです。でも、一度お芝居を始めると、途端に“化け物だ!”と感じるほど圧倒的な演技をされる。それに、ネタバレになるので詳しくは言えませんが、今作ではものすごく難しい役を担っていらっしゃるんですね。けど、そんな難しさを一切感じさせず、それ以上に魅力的に役を表現されていて。森ちゃんとも、「もはや意味が分からないほどすごい!」って話していたのをよく覚えています(笑)。本当に圧倒されました。

 

──一方、“子どもチーム”による3人の関係性はどのように作っていかれたのでしょう。

 

玉城 台本が出来上がってから、3人でよく話し合いをしました。先ほどもお話ししたように、親たちによる「三人吉三」で物語が転がっていくような印象がありましたので、そうしたなかで、僕らはどのような存在でいればいいのか。そこをすごく話しました。シライさんからも、「若者3人に関しては、ただ悪ぶっているだけではなく、青春も感じるような雰囲気がほしい」というオーダーがありましたので、そこでも親世代との違いを感じていただけると思います。

 

──岡本さんとは3度目の共演、森さんとは初共演でした。改めて感じる、お2人の魅力とは?

 

玉城 役柄的な部分もあるのですが、玲ちゃんは色気が増し増しでした(笑)。佇まいや存在感に重みがあり、稽古の最初の頃は飲み込まれそうになりました。それに、僕のほうが年上なんですが、姉御っぽさがあるといいますか(笑)。舞台上では常に堂々としているので頼れるし、僕がぶっ飛んだ表現をしても、すべて受け止めてくれるんです。また、森ちゃんとは稽古前のビジュアル撮影で初めて会ったのですが、そのときから森ちゃんにしか出せない空気感を持っているなと感じていましたし、羨ましさがありました。しかも、とても素直なお芝居をされるし、一瞬一瞬を生きているのが伝わってくる。そうかと思えば、楽屋では可愛い部分をいつも見せてくれていて(笑)。お2人とも、一緒にいて安心できる存在であり、たくさん勉強もさせていただきました。

撮影:宮川舞子

 

──親たちとはまた一味違う、若い世代の“悪”も魅力的でした。

 

玉城 みんな荒ぶっていて、まともな奴は一人もいませんしね(笑)。でも、それぞれに生き様があり、筋の通った生き方をしようとしている。セリフにもそれは表れていて、共演者の皆さんが放つ、その“生き様”の演技を近くで見るたびに、僕も大きな刺激を受けていました。また、そのなかで純は、キャリア組ということもあり、スーツにネクタイ姿で、話す言葉も敬語だったりするんです。ですから、ただ荒ぶっているだけでなく、一見普通に見える青年だけど、中身はまともじゃないヤバイやつという役でもありました(笑)。その演技を、観てくださった方に褒めていただくことが多くて。本番中はとにかく必死だったんですが、見た目だけは分からない内面の狂気をしっかりと表現できていたことは、役者として大きな自信になりました。

 

──では、放送に向けて楽しみにされていることを教えてください。

 

玉城 いろんな心情を描いた作品でもあるので、同じ舞台上からは見られなかった共演者の皆さんの細かい表情を見るのがすごく楽しみです。そして、改めて大人の皆さん方の魅力を、今度は画面を通じて感じてみたいと思っています。きっと威力がすごすぎるので、視聴者の皆さんも、画面越しでも圧倒されると思いますよ(笑)。

 

──ちなみに、玉城さんはご自身が出演された映像作品をご覧になることはありますか?

 

玉城 僕は必ず見るようにしています。自分が出ているシーンは自分自身の反省会になるんですが(笑)、ほかの場面では共演者の皆さんの演技や表情を見て、いつも勉強しています。それに、稽古や本番では気づかなかったことでも、時間を置いて客観的に見ることで新しく感じるものがたくさんあるので、できるだけまっさらな気持ちで見るようにしていますね。

撮影:宮川舞子

 

魅力的な大人になるための秘密を探ってみたい

 

──2021年は話題作への出演が続き、忙しい日々を送っていたと思いますが、普段はオンとオフの切り替えをどのようにされているのでしょう?

 

玉城 僕は特に何もしていないんです。それでも自分ではうまく切り替えられていると思っていたのですが、今作に限ってはまわりから、「全然できてないよ」とよく言われました(笑)。……いや、別に荒ぶっていたわけではないんです。でも、そういうふうに見られていたことがたまにあったみたいで。どうやら、自分のなかのオンとオフのスイッチが甘かったようです(笑)。

 

──(笑)。ちなみに舞台の公演中に必ず持っていく物などはありますか?

 

玉城 もし、楽屋が一人部屋だった場合はお香ですね。気持ちをリラックスさせるために。 今回は先輩方と同じ楽屋だったのでさすがに遠慮しました(笑)。

 

──では、2022年の抱負もお聞かせください。

 

玉城 昨年、僕は年男だったんです。でも、だからと言って何かが変わったということはありませんでした。結局のところ、何かしらの変化を求めるのなら、自分から動き出さないとダメなんですよね。ですから、今年はこれまでの経験を活かし、玉城裕規としての個性をしっかりと持つようにしていこうと思っていました。もちろん、これまでもずっと考え続けてきたことではあるのですが、今回この『三人吉三』に出演し、素晴らしい方々に囲まれてお芝居ができたことで、“この経験を絶対に無駄にしたくない!”と、より強く思うようになったんです。

 

──プライベートはいかがでしょう。挑戦してみたいことなどはありますか?

 

玉城 親知らずを抜いてみたいです(笑)。今、別に痛いわけではないんですが、親知らずを抜くと少し顔が小さくなると言われたので、ちょっと興味を持っていて。ただ、抜いたあとがめちゃめちゃ痛いらしいので、すごく迷ってます。……まあ、多分抜かないでしょうね(笑)。それ以外でも、最近は乗馬など興味のあることが増えてきて、いくつかチャレンジしてみたいことがたくさんあります。年齢を重ねると肌も気になりますし。また、今回の舞台の話題ばかりで恐縮ですが、素敵な先輩方を見ていると、“どうすればあんな大人の魅力を出せるんだろう?”と、その秘密を探りたいなという思いもあります。

 

──お話をうかがっていると、どれも仕事に繋がっていることばかりですね。

 

玉城 そうですね。僕、プライベートではいろんなことに興味がなさすぎるんです(笑)。その意味では、やりたいことのどれもが仕事や自分磨きに繋がっているような気がしますね。

 

 

舞台『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』

CS衛星劇場 2022年1月23日(日)後6・30よりテレビ初放送!

(STAFF&CAST)
作:野木萌葱
演出:シライケイタ
出演:玉城裕規、岡本 玲、森 優作 / 渡辺 哲、山本 亨、ラサール石井、村岡希美、大久保 鷹、筑波竜一、伊藤公一、那須 凜、若杉宏二

(STORY)
和洋折衷で趣と歴史を感じさせるホテル「鯨楼」。ここには、旧知の仲であるヤクザの弁財三郎(山本亨)と矢部野光男(ラサール石井)、そして彼らとともに甘い汁を吸う悪徳警官の柄沢正次(渡辺哲)が入り浸っていた。同じ頃、父親と同じヤクザの道へ進もうと考える矢部野晶(森優作)は三郎の娘である瞳(岡本玲)に接触し、アウトローの世界へと手を染める。そこへキャリア組の警察を目指す柄沢純が表れたことで、親子2世代の因果のもと、6人の物語はあらぬ方向へと動き出していく……。

【舞台『湊横濱荒狗挽歌〜新粧、三人吉三。』より】

 

(取材・文/倉田モトキ)