年齢と身体の限界を超えてもなお、闘うことでしか生きる価値を見出せない元ボクサーの執念とその生き様を描いたアクション映画『生きててよかった』が全国公開された。

 

主人公・創太を演じたのは、自身も元プロボクサーという俳優・木幡竜。長らく中国を拠点に活動し、ドニ―・イェンら中国トップクラスの俳優たちとも肩を並べた〝逆輸入俳優〟だ。今回は、そんな異色の経歴を持つ木幡にインタビューを敢行。本作では、現役時代さながらの過酷なトレーニングによる身体作りで本格アクションに挑み、激しい濡れ場シーンにもトライしているが、実はその他にも意外な見どころがある作品なんだとか…!

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:kitsune)

 

●木幡竜(こはた・りゅう)/1976年9月生まれ、横浜市出身。プロボクサー、サラリーマンを経て、2004年に俳優活動を開始。2009年に『南京!南京!』で中国映画デビューを果たす。これがきっかけとなり中国映画で主に活躍する。日本では2011年に公開された『レジェンド・オブ・フィスト 怒りの鉄拳』をはじめ、『戦神 ゴッド・オブ・ウォー』『サムライマラソン』『太陽は動かない』などに出演。昨年は、綾野剛主演ドラマ『アバランチ』で、“最狂の敵”役を演じて、その独特の存在感とキレのあるアクションで注目を集めた。

 

体脂肪率3%まで減量!過酷なトレーニングに挑む。
「〝命を懸けてやります〟と宣言してしまったので」

――まず、本作はどのように立ちあがって、スタートしたのでしょうか?

 

木幡 この映画は制作のハピネットファントム・スタジオの社長でプロデューサーの小西啓介さんが、企画してくれました。僕が主演ということありきで、脚本作りから始まり、撮影したんです。ゼロからのスタートだったので、時間がかかりましたが。

 

――木幡さんの元プロボクサーという経歴を含め、作り上げられたということですね。

 

木幡 そうですね。ボクシングは13歳から始めて、24歳くらいまでやっていまして、その後、サラリーマンを経て俳優に転身しました。最初に企画の話が出たのは、5、6年前だったのでその時は僕はまだ30代で。40歳を超えて演じられるとは思ってなかったですね(笑)。

 

――ボクサーの引退後のストーリーということで、木幡さんの経歴が大きく反映されていそうです。

 

木幡 実は、ボクシングをしていた当時からボクサーのセカンドキャリアについて考えていて、そういったストーリーの役を演じてみたいな、とずっと思っていたんです。僕の周りでも世界で活躍してきたようなチャンピオン級のボクサーはたくさんいるのですが、ボクシングを引退した後はなかなか上手くいかないことも多くて。社会に適合できないというか……僕もそうなんですけどね(笑)。

 

――引退からブランクがあったかと思うのですが、再度トレーニングされたんでしょうか?

 

木幡 そうなんですよ。もう、辛くてね……。でも現役のボクサーの話なので、身体も動きもそれに近い状態に持っていかなければ、説得力がない。しかも、始める時に「命を懸けてやります」と宣言してしまったので、死ぬ気でトレーニングしました。

 

――最終的に、体脂肪率を3%まで落したとお聞きしました。

 

木幡 はい、絞れるだけ絞りました。が、ダイエットの方法的には単純なことしかやっていません。食べて体内に取り込む量より、汗や排泄などで身体から出る量を増やせば物理的には痩せるので、それを実行していただけですね。例えば、1日に食べる量を500gとしたら出す量を1kgと設定するような形です。だから、カロリーの計算とかは一切せず、とにかく脂肪が燃え尽きるまで外に出して。ひたすらトレーニングに打ち込むのみでした。

 

――すごいです……。きつくなかったですか?

 

木幡 トレーニングそのものより、コロナ禍でずっと人と会わずにやっていたので、精神的な部分の方がきつかったですね。自分との戦いでした。それに、今回演じた主人公の「楠木創太」というキャラクターが本当にリングの上でしか呼吸できないような無骨な人間だったので、その役柄の雰囲気も相まって、メンタル的な面でハードだったかもしれません。

 

監督がこだわった濡れ場のシーン
「〝バトルセックス〟と呼ばれていました(笑)」

――初めて台本を読んで、楠木創太というキャラクターに触れた時、どう思いましたか?

 

木幡 実は全部で17稿くらいまで台本が変わっているので、最初に上がって来たものと、最終的なキャラクターではかなり差があるんです。初稿の段階では僕自身に近い性格をしていたんですけど、出来上がった役柄は鈴木太一監督に似てきたんじゃないかと思います。

 

――鈴木監督に近いというと、どういったキャラクターになったんでしょう?

 

木幡 もう、楠木創太そのままですね。ちょっと屈折していて、悶々としているというか(笑)。監督は〝書くこと〟で発散するタイプの方なので、リングに思いの丈をぶつけている創太と重なっているんじゃないかな、と思います。無口ですが、熱いものを持っている人間だと思います。

 

――そうだったんですね。鈴木監督からは何か役柄について指示はありましたか?

 

木幡 明確な演技指導はなかったです。しかし、こだわりは強いので、何度も撮り直しをしました(笑)。僕らに任せてくれてはいるんですけど、監督が納得するまで撮り続けました。

 

――一番こだわって撮影されたシーンはどこでしょうか?

 

木幡 創太の奥さん・幸子役の鎌滝恵利さんとセックスをするシーンがあるんですけど、7〜8分間くらい長回しする場面で、かなりのカロリーを使うんです。ちなみにアクションシーンには、アクション監督がいて撮影が進んでいくんですが、アクションの場面に気迫負けしないようにと鈴木監督がすごくこだわって撮影していて。最終的に僕らの中で「バトルセックス」と呼ばれるような激しいものになりました(笑)

 

――鎌滝さんとは、濡れ場シーンを撮影する上で何か話されましたか?

 

木幡 もともとリハーサルを何回も重ねて打ち合わせしていたのですが、実際に現場でやってみると感覚がだいぶ違ったんですよね。脚本では、すべてを壊していくような流れの展開だったんですけど、現場で、そうはならなそうだね、と話をして変更を加えました。だから、その場で感情作りをするのは大変だったと思いますよ。鎌滝さんには頭が上がらないですね。

 

アクションだけでなく、コミカルな場面にも注目!
「僕はこの映画を〝どコメディ〟だと認識してます(笑)」

――そもそも創太だけでなく、鎌滝さん演じる幸子もちょっとクセのあるキャラクターですよね。

 

木幡 そうなんですよ。正直ちょっと痛い夫婦だと、僕は思っているんです(笑)。変わったカップルの生き方を描いているので、できれば僕は、彼らのことを笑いながら見て欲しいな、と思っているんです。ボクシングのストーリーを抜くと、男女のシチュエーションとして共感できる部分もあるので。

 

――意外と喜劇的な要素も多いですよね。

 

木幡 はい、実はコミカルに見れるシーンがたくさんあるんですよ。タイトルやボクシングのくだりで、シリアスな展開で最終的に感動するようなストーリーに見られがちなんですけど、僕はこの映画を〝どコメディ〟だと認識してます!(笑)

 

――なるほど。一貫して真剣な雰囲気ではあるので、笑ってはいけないのかな、と思っていました。

 

木幡 全然! ゲラゲラ笑って見て欲しいです。なんなら、一生懸命なことって滑稽だったりするじゃないですか。どのキャラクターもそれぞれ頑張って生きているけど、ちょっと世間とズレてたりもして、そこが面白い。

 

――観る前と観た後の印象にギャップもありそうですね。

 

木幡 これから観る方には、ぜひ気軽に楽しく見て欲しいですね。「嘲笑」という言葉が似合う映画なので、「馬鹿だな〜」なんて思いながらね。でも、そういう風にしか生きられない人もいるってことを感じて、少しでも共感してもらえれば、僕は嬉しいなと思いますね。

 

――皆さんの反応が楽しみですね。ありがとうございました!

 

【INFORMATION】

映画『生きててよかった』

新宿武蔵野館ほか全国公開!

主演:木幡竜
監督・脚本:鈴木太一(『くそガキの告白』)
アクション監督:園村健介(『ベイビーわるきゅーれ』)
製作・配給 ハピネットファントム・スタジオ ©2022 ハピネットファントム・スタジオ

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【あらすじ】
長年の闘いが体を蝕みドクターストップによって強制的に引退を迫られたボクサー・楠木創太(木幡竜)は、闘いへの未練と執着を捨てきれぬ中、恋人との結婚を機に引退を決意する。新しい生活を築くために仕事に就くも、人生の大半をボクシングに捧げてきた創太は何をやってもうまくいかない上、社会にも馴染めず苦しい日々を過ごす。そんなある日、創太のファンだと名乗る謎の男から大金を賭けて戦う欲望うずめく地下格闘技へのオファーを受ける。一度だけの思いで誘いに乗った創太だったが、忘れかけた興奮が蘇り、再び闘いの世界にのめり込む。彼にとってその高揚感は何物にも代えがたいものだった。闘うことに取り憑かれた男の狂気と愚直なまでの生き様は果たして喜劇となるか悲劇となるか? 今、再び闘いのゴングが鳴る――。