子ども番組「シナぷしゅ」(テレビ東京系)で、「赤ちゃんが泣き止む歌」として一部で話題を集めている曲「フルーツのマーチ」。「yummy! yummy!」の掛け声も耳に残る軽快な楽曲だが、その歌い手・かなまるさんは、「ママでも夢を叶えられる!」をテーマに、ママになってから本格的な活動を開始した“ママアーティスト”。このほどコロナ禍で休止していた3年ぶりの有観客ワンマンライブを成功したばかりの若きママアーティスト・かなまるってどんな人? コロナ禍をどう生き抜いた? そして、彼女が伝えたい思いとは?

 

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●かなまる/神奈川県厚木市出身。ミスiD2018のスカイハイ賞受賞をきっかけに、「ママでも夢を叶えられる!」をテーマに、「ママアーティスト」として活動。個人事務所&音楽レーベル「FRUITS」代表。21年の1stシングル「Circle」がオリコンデイリー7位にランクイン、子供番組で放送された楽曲「フルーツのマーチ」も話題に。アイドルグループ・APOKALIPPPSのメンバー・ゆらぴことの2人組ユニット「1009-thank you-」でも活動中。7月10日(日)に「かなまるbirthday event」(渋谷PARCO・GG Shibuya cafe&bar)を開催

 

3年ぶりのライブで気づいたこと

「ありがとうございました!」ライブハウス・渋谷スターラウンジを埋めたファンに向かい、曲の合間ごとに何度も感慨深げにそう言い、深くお辞儀を繰り返した。

 

4月10日に行われたライブは、〝ママアーティスト〟かなまるにとって2019年以来3年ぶりとなる、有観客でのワンマンライブとなった。コロナ禍によって20年春に予定していた自身最大規模でのワンマンライブが中止となって以来、ファンもかなまる本人も、ずっと待ち望んでいた光景がそこに広がっていた。

「ようやくでした(笑)。3年という長い期間、直接会える機会がほとんどなかったことで、ファンの皆さんと溝が出来てしまっていないか、みんな離れていってしまったんじゃないかという不安もありました。以前から知っている笑顔には、待っていてくれてありがとうの気持ち。コロナ禍で続けていた配信ライブなどをきっかけに私を知ってくれた、はじめましての方の笑顔にも、この機会に会いに来てくれてありがとうの気持ち。そんな笑顔を見て、思いがあふれかえってしまって、何度も『ありがとう』と口にしていました(笑)」

 

2020年4月、最初の緊急事態宣言。当時、ほとんどの歌手やアーティストは、予定されていたライブやコンサートを中止・延期した。無観客での配信ライブなどの期間を経て、会場や来場者の協力のもと、人数制限やマスク着用、検温・消毒など、さまざまな対策を講じながら少しずつ有観客での公演は実現してきた。そんな状況の中でも、かなまるの有観客ワンマンの実施はかなり後発にあたる。

 

「何度か行ったライブも、ずっと無観客でのオンラインライブで、ほとんどのアーティストやアイドルが有観客でライブを行う中、『まだ無観客なの?』と言われたこともあります」

 

3年の間に、もう有観客ライブをやっていいんじゃないかと思ったことはなかったのだろうか。

 

「もちろん何度もありました(笑)。だけど、これだけ環境が整ってきていても、やっぱり心のどこかで『もし私のライブでお客様がコロナになったらどうしよう』という思いがずっとつきまとい、『ワンマンやりたい』という単純な気持ちだけで気軽に踏み出しちゃいけないという思いもありました」

 

アーティストやアイドルという出演者側、ホールやライブハウスの会場側、それぞれの感染対策の足並みがそろってきたと感じられるようになったことに加え、もうひとつの理由があった。

 

「娘が小学校に入学するという、個人的な節目であったこともあります。世の中が新たに大きく環境が変わる出会いと別れの季節、私も娘と一緒に大きく踏み出したかった。そして、新曲としてサブスクでリリースした『春風』。これを春のうちにみなさんの前で披露したかった。そういったいろいろな思いや理由が重なったタイミングがここだったのかな、やる理由、行く理由がそれぞれしっかりあるんじゃないかな、というところでした」

 

一人娘“ゆめまる”ちゃんの存在

一人娘“ゆめまる”ちゃんを、シングルマザーとして育てながらアーティスト活動を続ける。10代のころには地下アイドルグループのメンバーとして活動していた。

 

「もともと歌を歌いたいという思いがあったのですが、『アイドル活動から始めたほうが近道だよ』と言われて。だけど、遠回りだった気がします(笑)。当時はAKB48さんが頂点のような存在でしたが、みなさんライブを重ねることで売れていったので、同じようにしていかないと売れないぞと言われ、そういう世界なんだなと、何も分からずライブやイベントを重ねていきました。そんな活動の中で、自分が何をやりたいのか、今やっていることはプロの仕事なのか趣味の延長なのか、分からなくなってきて」

 

葛藤の中で、アイドルとしての活動は終了となった。

 

「たぶん、私、この人いい人だって感じる基準が低いんだと思います(笑)。これをすれば売れますよ、こういうところに出られますよという話にホイホイついていっちゃうタイプです(笑)。アイドル時代の経験があったから今があると思っているのですが、いまだに友人や古いファンの方には心配されます(笑)」

 

ほどなくしてゆめまるちゃんが授かり、シングルマザーとして育児に追われる日々に。

 

「病みやすいタイプで、口癖も『死にたい』でした。娘がいなかったら今ここにいなかったかもしれません。今の私の中では『生きる』と『娘を育てて守る』が、イコールでつながっています。その責任がある限り、自分からは自分の命を終わらせない。娘の存在、成長に奮い立たされる人生。おかげで強くなれました(笑)」

 

ママアーティストと名乗る理由

世の中には母親とアーティストの二足のわらじを履く女性はたくさんいるが、かなまるはなぜあえて〝ママアーティスト〟と名乗るのか。

 

「ママでありながらも活躍されているアーティストの方は、ママである前に、もともとずば抜けた才能、実力があって、アーティストとして確立された方が多いと思うんです。それに比べると、私は歌も人並み、これといった武器もないと思う。ママになってから本格的に歌い始めた私は、ママであること自体を武器にしていきたい。アーティストとして成功してからママになったのではなく、ママとして子育てしているけれど、アーティストとしての夢を叶えられるような存在になりたい。そういう意味を込めて、〝ママアーティスト〟と名乗っています」

 

子育てをしながら芸能活動するタレントやアーティストには、一部の風当りが強いことは昔から珍しくない。かなまるも、SNS上などで叩かれることが珍しくないという。

 

「自撮りをあげるだけで『母親なのに恥ずかしくないのか』と言われたり。『こんなママに育てられて子どもがかわいそう』とか『これだから若い母親は』という書き込みも、よくあります」

 

ゆめまるちゃんが小学校に入学したことで環境もまた変わり、平日の遅い時間帯でのライブ活動などはなかなかできない状況だというが、そんななか、身近なママ友たちの存在も支えだという。

 

「小学校で新しくできたママ友は年上の方が多くて、『なんでも話してね』と言ってくださったりするので助けられています。とてもいい環境です。今まで、若いとしっかりしていなさそう、お前に子どもが育てられるのかなど言われ続けてきたので。母親には年齢や職業、経歴なんて関係ないんだなと勇気づけられています」

 

コロナ禍において、かなまるの活動の中心となったライブ配信活動。自宅から配信する機会も多いことは、子育てという面ではプラスに作用した。

 

「娘は私が歌っていることはもともと知っていましたし、こういう仕事をやっているんだよという姿を間近で見せることもできたので、いい面もたくさんありましたね」

 

かっこよく配信するママの姿を見て憧れたりしそうだ。

 

「(配信に)出たがります(笑)。真似したがります。たまに私のスマホを使って、『ゆめまるでーす』と、ごっこ遊びをしています(笑)。最近では将来の夢は配信者と言い始めてて、それはちょっと待ってほしいなと思うのですが(笑)」

 

ゆめまるちゃんの存在や成長は、ママアーティストとしての内面ばかりでなく、目に見える形にも結実した。子ども番組「シナぷしゅ」(テレビ東京系)の5月期のテーマソングとして、かなまるの曲「フルーツのマーチ」が採用された。この曲のコーラスに、ゆめまるちゃんも参加しているのである。

 

「私の夢のひとつが、いつか娘と一緒に仕事をすることだったのですが、それがこんなに早く叶えられました。『フルーツのマーチ』でエゴサすると、お子さんが初めて声を出して歌った曲だとか、流れるとノリノリになるというツイートがあったり、ご家族で歌ってくださったり、耳にこびりついて離れないと言ってくださっていたり(笑)。もちろん、プラスではないご意見もありますが、そこも音楽だな、十人十色の反応があるんだなと勉強になりました」

 

常に強くかっこいいママでありたい

かなまるとしての活動のいっぽうで、2021年秋からは、新たなユニット活動もスタートさせている。アイドルグループ・APOKALIPPPS新メンバー・ゆらぴことの2人組ユニット「1009-thank you-」だ。

 

「お互いのファンの方はよくご存知だと思うのですが、私とゆらは、中学時代に知り合い、同じ高校に通っていました。高校卒業後、それぞれの道を歩いてはいるものの、近い世界にずっといるわけですから、いつか一緒に何かやりたいねという話はいつもしていました。アイドルでもなければアーティストでもない、私たちとファンのみなさんにとっての〝居場所〟のようなユニットとしていければいいな、と思ったのがきっかけです」

 

1009のお披露目は昨年12月5日。二人の出身地である神奈川県厚木市のライブハウス「Thunder Snake ATSUGI」で開催された。かなまるにとっては、ソロワンマンに先駆ける形での、ファンの前でのパフォーマンスとなった。

 

「すごく不思議な気持ちでした。やっぱり少し怖いような気持ちもありましたが、ゆら本人も、ゆらのファンの方も熱い熱量を持つ方が多いので(笑)、その熱さにも助けられました。その手応えが、最終的に4月のワンマンライブの最後の背中を押してくれた、ひとりでもやれるという思いにつながったと思っています」

 

ママアーティスト・かなまるが歌う楽曲は、この先は「フルーツのマーチ」のような子ども向けのものが増えていくのだろうか。

 

「『フルーツのマーチ』が話題になったからそちらに偏るとか、過去に歌っていたようなロック調のものに戻るとか、固定はしたくないんです。どんな曲調でも、ソロでも1009でも、〝かなまるが歌う歌〟が好きだといってもらえるようになれたら。いろんな場面でいろんな人の気持ちに寄り添えるような楽曲をこれからも届けたいですね」

 

ゆめまるちゃんにとって、常に強くかっこいいママでありたいと言っていた。

 

「ステージで歌って夢を叶えている姿を見せて、いつかママみたいになりたいって言ってもらえるようになりたいですね! いつか娘がちゃんと歌えるような日がきたら、デュエットもいいですね(笑)」

 

取材・執筆:太田サトル/撮影:我妻慶一、山中善正