2019年、ビートボックス世界大会で前年王者を下し世界4位になると、2021年には世界チャンピオンの座に登り詰めたビートボクサー、SO-SO。ループステーションを駆使し、まるでマジックのように音を奏で操る姿は、観る者すべてに深く刺さる魅力を放っている。最近ではテレビ出演が増え、そのスゴ技を披露しさらに知名度を上げている彼の、学校に友達がいなかった15歳から、有言実行を繰り返す現在まで。

 

(構成・撮影:丸山剛史/執筆:有山千春)

●SO-SO/日本を代表するヒューマンビートボクサー兼 音楽プロデューサー。リリースしている楽曲は全てビートボックス サウンドのみで制作されており、ループステーションやボーカルエフェクターを使って 自身の口から発せられる音を多重録音し、リアルタイムで音楽を構築していくパフォーマ ンスが武器である。先日ポーランドで行われた世界大会「Grand Beatbox Battle2021」では世界でも史上初の5部門中4部門出場、日本人で初めてとなる世界チャンピオンの称号を「TAG LOOP部門」にて獲得。またSO-SOのキャッチーな キャラクターと楽曲が反響を呼び、様々なメディアやライブに出演している。

 

小学生から目立ちたがり屋

ーー私服もご自身のnstagramと同じくカラフルですね!

 

SO-SO だいたいいつも、赤、青、黄、緑が入っています。目立ちたがり屋なんですよ。幼稚園くらいまでは泣き虫ですごく内気な子どもだったらしいんですけど、小学生になると急に承認欲求がバカみたいになりまして。

それで当時は「目立つ=テレビ」だったので、母親に頼んで劇団に入れさせてもらって。映画やドラマのエキストラ、ラジオ、舞台、ミュージカルとか、いろいろやらせてもらいました。

 

ーー小学生のころから、そんなにはっきりとした「やりたいこと」があったのですね。

 

SO-SO そうですね。幸い、母がやりたいことをやらせてくれるタイプの人だったのもありがたかったです。

 

ーー当時の生活は?

 

SO-SO 学校は楽しい一方で、そっちよりも劇団がメインでした。学校が終わったらすぐにレッスンに行き、舞台の本番が近いときはほぼ毎日練習がありました。

 

ーー学校の友達と話が合わないと思ったことはありませんでしたか?

 

SO-SO 小・中学校までは思いませんでしたが、高校から、あきらかに学校に馴染めなくなりましたね。

 

ーー自覚したきっかけは?

 

SO-SO 高校生になるとより明確に「エンターテインメントで仕事をしたい」という将来を思い描いていたので、「何がしたいかわからない」と将来について漠然としている同級生と話が合わなかったんです。だから高校には友達はほとんどいませんでしたね。

当時って野球部やサッカー部あたりがクラスの中心じゃないですか。僕は目立ちたがり屋だけど単純にその人たちに馴染めなくて、めちゃくちゃ悔しいと思ってすごしていましたね。

 

ーーそういった「楽しい”今”を謳歌している同級生」の中で、自分のやりたいことを明確に突き詰めていけたのはなぜでしょうか。

 

SO-SO やっぱり長いこと劇団にいたのが大きいですね。やりたいことをやっている大人たちが周りにいて、それが当たり前だったので。結局10年ほど所属してダンスや歌をやってたので、その経験は今の活動にすごく役立っています。

 

高校生の誕生日にループステーションを

ーー高校生で劇団を辞めたきっかけを教えてください。

 

SO-SO 高校1年のとき、ビートボックスに出会ったからです。HIKAKINさんのYouTubeを見ていたら関連動画に出てきた、イギリスのReeps Oneのビートボックス動画を観て、「かっこいい! 面白そう!」とめっちゃ憧れを抱いて。すぐに真似しました。

 

ーーそれまでも音楽を聞いていましたか?

 

SO-SO ミュージカル曲か、母が車で流してる曲しか聞いていなかったんですよ。サザンオールスターズとかスピッツとか、普通にJ-POPですね。

 

ーー初めての音楽ジャンルに出会い、真似しようと思ってすぐにモノにしてしまうのもすごいですよね。

 

SO-SO いや、でもやっぱり真似は真似でしかなくて。ある程度できるようになってくると、自分の性格的にも「人前で披露したい」という欲が湧いてくるんです。とはいえ、ライブに出してくれるようなイベンターの知り合いなんていないし、どうしようかと思っていたときに、Twitterに日本開催の大会の情報が流れてきたんです。

そのころは海外の大会動画ばかり観ていたので、「日本でも大会があるなら、ちょっと試しに出てみるか」と。そこで初めて人のビートボックスを生で聞いたんですけど、もうね、みんな上手すぎて、打ちのめされました。「自分はこのままじゃ埋もれる」と悟りました。高校2年の春です。

 

ーー同世代の方もいましたか?

 

SO-SO いました。そこで横のつながりができて、いろいろと教えてくれたり一緒にスタジオで練習するようにもなりましたね。

 

ーー初めての大会、結果はいかがでしたか?

 

SO-SO 全然ですよ。その後に日本一を決める大会もありましたが、予選落ちだし。僕は日本ではまったく結果を残していないんです。

そのころから「自分のオリジナリティが肝心なんやな」と気づき、独自のスタイルを模索し始めました。自分にしかできないビートボックスはなんだろうと考えていたときに、ループステーションという機材の存在を知りました。2015年から世界大会にループステーション部門が新設されて、その大会の動画を観て衝撃を受けたんです。

日本で使ってる人はあまりいない一方で、海外ではちょっとブームになりつつあって。口とマイクだけではできない表現ができて、「これはおもしろそう! 日本人でまだ誰もやっていないし、俺がやったら注目されるのでは」と。

もちろん、人間の体だけでやるヒューマンビートボックスの魅力はありますが、「その人の声を使って音楽を作る」というところにフォーカスしたときに、エフェクトをかけて音を重ねることができるループステーションが、僕にとってすごく新鮮だったんです。

 

ーーエンタメ性も広がりますもんね。

 

SO-SO そうなんですよ。それで母親に「これヤバいから」とかプレゼンして説得して、BOSSのRC-505を買ってもらいました。高校生の誕生日プレゼントにしては高かったと思いますが(笑)。

 

ーーでもいまとなっては投資大成功ですよね。

 

SO-SO よかったです(笑)。実際に使い始めたら、自分に合っているなと。夢中になりました。学校が終わったらすぐに帰宅してずーーっとやって、睡眠時間も削って。

 

ーー練習方法が想像し難いのですが、どういうことをされるんですか?

 

SO-SO 最初は海外の大会動画の真似から入って、それだけだと生産性がないので、そのうちオリジナルを作るようになりました。僕は変な音・気持ち悪い音が好きなんですけど、ひとつの音にいろんなエフェクトを試してかけて、いい音ができると、そこにドラムをつけて、ベースをつけて……みたいな。まず最初にサビのメインの音をずっと探して、そこに辿り着いたら地盤を固めていくという作曲スタイルです。

 

ーーSO-SOさんが出場した大会動画を拝見すると、まるで手品みたいですよね。ひとつの音にエフェクトをかけながら録って流して、次の音を重ねて、どんどん繋げて、その場で即興のようにひとつの曲に構成していく、という。

 

SO-SO ほんまに手品と一緒かも。大会は1人3分間のバトルで、最初の30秒から1分の間に、曲の仕込みをするんですよ。それを、会場を盛り上げながらどんどん展開していくんです。

 

ーーところで、なぜBOSSのループステーションを選んだのでしょうか。

 

SO-SO 当時はこれしかなかったんです。今は他のメーカーも出していますが、世界大会の公式ルールに「BOSSのRC-505の使用」が掲げられていますし、機能がめちゃくちゃ多くて使いやすいし、世界中で愛されている機材ですね。

 

日本一マイクに詳しいビートボクサー

ーーマイクも必需品だと思いますが、何を使っていらっしゃいますか?

 

SO-SO 一番最初に買ったのはAKGのD5です。スイスビートボックスという団体が主催しているドイツ開催の世界大会があるんですが、そこでオフィシャルで使っていたマイクだったからです。

 

ーーそういったところから情報を取り入れていたんですね。

 

SO-SO そうですね。普通のシンガーと比べて、ビートボクサーにとってマイクって消耗品なんです。常に密着させて息をめちゃくちゃ力強く吹き込んでいるので、ダメージがすごくて。1年くらいで潰れるんです。だから今の時点で……13本くらいですかね。サックス奏者にとってのリードみたいな感覚ですね。

 

ーー好きなメーカーがあるのでしょうか。

 

SO-SO いや、けっこういろいろ試しました。今はSENNHEISERのE945に落ち着いて、しばらく使っています。

 

ーーマイクによって大きな違いが出るのですか?

 

SO-SO 普通の人が聞いたらほぼ一緒だと思いますが、SENNHEISERは写真でいうところの「解像度が高い」。めっちゃピントが合ってくっきりすっきりしているんです。持ちやすい形状をしていますし、それに頑丈で持ちがいい。そこが一番の評価ポイントですね。

でも「一生これを使う!」とは決めていないので、マイク探しの旅はまだまだ終わらないです。

 

ーーガジェット探しは楽しいですよね。

 

SO-SO 僕は機材オタクなので特に楽しいですね。マイクにはそれぞれ用途があって、SENNHEISERはライブ用なんです。

ほかにはレコーディング用のマイクがあって、SHUREのSM7Bを使っています。ビートボックスの音と相性が良くて、音を拾う範囲がめっちゃ広いし、ライブと違って激しく使わないので、長持ちしています。ちなみに、マイケル・ジャクソンが「スリラー」で使ったマイクだそうですよ。

その2本がメインで、他にも自宅には常時4本くらいマイクがあります。

 

ーーマイク情報はどこから取り入れていますか? ビートボクサー間でしょうか。

 

SO-SO いや、もうそこだけだと情報が足りなくなってきたんですよ。今はエンジニアさんや音響さん、ほかジャンルのミュージシャンにも聞いたりしています。マイク情報を追い求めすぎて、普通の情報じゃ満足できない体になっています。たぶん僕は、日本で一番マイクに詳しいビートボクサーだと思います(笑)。

 

ーーSO-SOさんに聞けば、なんでもアテンドしてくれると(笑)。

 

SO-SO 僕に聞いたほうがいいですよ(笑)。

 

ループステーションのビートボックスで食っていく

ーー話を、ループステーションを手に入れた直後に戻すと、その後はどんな大会に出場しましたか?

 

SO-SO 2017年、高3で初めてアジア大会に出ました。そこで世界のビートボクサーを初めて観たんですよ。で、また打ちのめされて、予選落ちして。めっちゃ悔しくてずっと練習して、2年後の2019年、ポーランド開催の国際大会「Grand Beatbox Battle 2019」のループステーション部門で、日本人初の予選通過者になり、ベスト4に入ったんです。

この大会で印象的だったのが、1回戦の対戦相手が前年度の世界チャンピオンで、ファンたちの下馬評も「前年度チャンピオンが勝つだろう」でした。僕に対しては「この日本人もちょっとおもしろそうだな、頑張れよ」という空気のなか、5−0でストレート勝ちしたんです。気持ちよかったですね。同時に「俺はループステーションのビートボックスで食っていこう」と決意したんです。そのときの試合動画がバズって、現時点で再生回数1700万です。

 

ーー自分のスタイルが確立された瞬間だったんですね。

 

SO-SO 日本の大会でビートボックスソロパフォーマンスをしても予選落ちしたけど、ループステーションだとこんなに評価してくれる人がいるのか、と。何より自分でやっていて楽しいですしね。

 

ーー世界大会の動画を拝見させてもらいましたが、観客の盛り上げ方が際立っていますよね。緊張もまったくしていないように見えます。

 

SO-SO めちゃくちゃしましたよ! 始まる前は、僕の前の試合がめっちゃ盛り上がっていて「このあとか……最悪やん」と思っていましたが、ステージに立ったらスイッチが入りまして。そこから自分のできるベストを尽くしたら、めちゃくちゃいいパフォーマンスができました。

この大会に参加した意義は、チャンピオンになることよりも「世界から注目される」ことだったので、その点では成功しました。

 

ーー有言実行ですね。そして同年、台湾開催のアジア大会「Asia Beatbox Championship2019」で、見事チャンピオンとなります。その後すぐにコロナ禍になり、大会もなくなってしまったと思いますが。

 

SO-SO だから制作を頑張ろうと思って、試しにクルーを作りたいなと思ったんです。それが今やっている、SARUKANIです。メンバーはアジア大会で出会った3人で、SNSで意気投合して。『SARUKANI WARS』という曲を作ったんですよ。それがわりと注目されて、「じゃあ次の曲を作ろう」と続けるうちに、今のマネージャーをはじめサポートしてくれる人がどんどん集まってくれました。

そして2021年、「Grand Beatbox Battle」に、3人以上が出場条件のクルー部門と、2対2でループステーション対決をするがタッグ部門が新設されたんです。このクルー部門に出たかったのですが、僕らが結成した時点ですでにエントリー枠が埋まっていたので、敗者復活的な一枠を狙うしかありませんでした。

製作期間は1か月で、本気で枠を獲りたくてメンバー間でめっちゃ揉めたりしたんですが、最終的に『1!2!3!4!』という曲を完成させて、2日間で200テイク録って、ものすごくいいものができました。それで、最後の一枠を狙っていた9組の中から僕らが選ばれたんです。

 

ーー「メンバー間で揉めた」というのは?

 

SO-SO 僕は当初から「クルーでやるならこういう曲が受けるだろうな」という構想が頭の中にあったんですが、それをメンバーに伝えるのがすごく難しくて。

パフォーマンスに必要な要素って、インパクト・中毒性・独自性、だと僕は思っているんです。このときはビートを4つ作って、「1と2のビートを組み合わせり、2と4を組み合わせたり……みたいなことをやったら面白んじゃないのかな」と伝えたら、「それのなにが楽しいんですか?」「俺はそんなのやりたくない」と言われたりして、伝わらなかったんですよ。

それが結果的に通用した上、大会で2位になれたので、「やっぱり自分の感覚は正しかったんだ」と思えました。

 

ーータッグループ部門のほうはいかがでしたか?

 

SO-SO ビートボクサーのRUSYと組んで1位になれました!

 

ーーついにチャンピオンに! どんなふうにほかのタッグと差別化を図ったんですか?

 

SO-SO 僕らはコンセプトを「海」にして、ただ単にDJのように音を操作する以外の要素を入れました。ディズニーの「海底2万マイル」のような世界観を目指して、海の音・水の音を仕込んだり、SOSの音や潜水艦乗組員を表現したり、どんどん海に沈んでいく……みたいな演出をしました。

 

ーーかつてミュージカルで学んだことが生きていらっしゃるように感じますね。

 

SO-SO そうそう、マジで生きていると思います。さらに予選落ちしましたがほかにも2部門にも出て、それが史上初で、それも話題になっていましたね。この大会での目標が「世界チャンピオン」だったので、4部門も出ればどれかは優勝できるんちゃうんかなと。

 

リリースしている曲の97%が人の声で作っている

ーーそれが見事達成されたんですね。世界が獲れたとなると、次の目標は?

 

SO-SO そもそも僕が大会に出た理由は、「バトルがしたい」ではなくて「注目されたい」だったので、今はもうみんなに僕のことを知っていただけたので、大会出場のフェーズは終わったと思っています。いまはライブ活動のほうに関心を寄せています。

だって大会って3分とか5分とかの制限時間があるじゃないですか。もっとやりたいんですよ。ライブなら1時間はできますから。

 

ーーこの前フェスにも出演されましたよね。ビートボックスの大会と違い、あらゆるアーティストのファンが集う空間で、ビートボックス自体初見の方も多いかと思います。

 

SO-SO 会場で聞いたら半数くらいの方が初見で、衝撃を受けた方が多かったみたいです。

 

ーーどんなところに手応えを感じましたか?

 

SO-SO ビートボックスは、コロナ禍にYouTubeで観て知った方がかなり増えたと思うんですよ。でも僕は、ビートボックスの真価はライブで発揮されるものだと思っていまして。マイクを通してスピーカーから出るビートボックスの音って、本物のドラムよりも音圧があるんですよ。全部人の声なのに、楽器に負けない。それを大きな会場で聞いたら、圧倒的なんじゃないのかなと思うんです。

だから今回、所見の方たちに刺さってくれたらいいなと思います。

 

ーー個人的にうかがいたいのですが、ここ数日間で「この音、いいな」と思った音はありますか?

 

SO-SO いつもいい音はボイスメモに録っているんですよね。最近だとこれがよかったな。コインランドリーの両替機に、スタッフさんが大量の100円玉を流し込んでいる音です。(聞きながら)うん、かっこいい! 洗濯物が終わったかどうか確認するみたいな顔をしながら、スタッフさんの近くでずっと録ってましたもん。

 

ーー常に音へのアンテナが立っているんですね。

 

SO-SO ビートボックスを始めてから、音フェチになったんですよ。音が好きなんです(笑)。

 

ーーあと、6月14日の平沢進さんの<何でも楽器になるという物質観>というツイートに対して、<もう3年以上口から出た音だけで音楽作ってるけど、そのスタイルに慣れすぎて今はもはや楽器とか音源を使う事に罪悪感すら感じてきてる。「え、楽器使って音楽作るとかチートちゃう…?」みたいな。>と引用リツイートされていたのが印象的でした。

 

SO-SO 半分冗談ですが、僕が今リリースしている曲の97%が人の声で作っているんですよ。3年くらいそのスタイルでやっていると、それが当たり前になるじゃないですか。やり始めた当初は、「人の声だけで作ることの特別感」を感じながら作っていましたが、今はそれが普通なんです。

だから逆に、今更ピアノやギターを使うと「反則ちゃう!? 俺の曲、楽器使っていいのか!?」みたいな気持ちにはなっていますね。

 

ーー新たな音を出すために、日々開発されていらっしゃるかと思います。

 

SO-SO そうですね。プラス、そこにどんなエフェクトをかけるかの相性が大事で、新しい音を作っています。

 

ーーそうなると無限大ですね。自分と世界がある限り、絶対に尽きないと。

 

SO-SO そうですね、めっちゃかっこいい言い方(笑)。