歌手・タレントとして活動する森口博子さんが、2023年5月24日に「大人のためのアニソンカバー」をコンセプトとしたアルバム『ANISON COVERS』をリリースする。本作では80〜90年代のアニソンをセレクトし、生楽器を中心としたリアレンジで10曲をレコーディング。自身のセルフカバー「サムライハート 〜2022〜」をボーナストラックとして含めた、全11曲が収録される。

森口博子

 

今回はアルバムリリースを控えた彼女にインタビュー。「夢を抱くこと」への想いも込めた楽曲などについて、お聞きしました。

 

◆今回『ANISON COVERS』をリリースされようと思ったきっかけを教えてください。

2019年から「機動戦士ガンダム」シリーズの楽曲をカバーしたアルバム『GUNDAM SONG COVERS』を立て続けにリリースし、おかげさまでシリーズ3作ともオリコンウィークリー3位以内にランクインしました。そのアルバムは「3」を持って最終章を迎えたのですが、「他にもいろいろなアニソンを聴きたいです」というファンの方々の声がたくさん届きまして。

加えて、BS11で放送されている『Anison Days』というレギュラー番組で、気が付けば250曲近くアニソンをカバーして歌っていたんです。そんな私が出会った楽曲の感動をみなさんにもお伝えしたい、1回きりのオンエアだけではもったいないという気持ちが強くなりました。そして、番組でカバーした曲を中心に、まずは80〜90年代の名曲たちをお届けするアルバムを制作しようという話になったんです。

 

◆名曲を後世に残すという観点からも、意味のある一枚になりそうです。

そう言っていただけると、とてもうれしいです! 今回は原曲の魅力や「そこは聴きたい!」という印象的なお決まりのフレーズは残しつつ、特に歌詞の意味がより伝わるようなアレンジをしました。豪華ミュージシャンの方々とのコラボレーションで作品や森口博子に興味がない方にも音楽的に楽しめる要素がたくさん詰まった1枚に! アニソンって、「アニメ」というジャンルだけで食わず嫌いしている方もいらっしゃると思うんです。でも、音楽として素晴らしい作品がたくさんあるから、一度触れていただきたいという気持ちがすごく強いんです。

 

◆J-POPでも有名な方が手掛けている作品も多いです。

今回のアルバムでも、数々のヒットソングの名曲を生み出してきた偉大な筒美京平先生や玉置浩二さん、徳永英明さんが作曲した楽曲が収録されています。そのクオリティは半端なものじゃない。みなさんの想いをカバーとして伝えていければと思っています。

 

◆今回のアルバム、私も聴かせていただきました。もう胸が熱くなりっぱなしで!

よかったぁ! 作った甲斐があります。ちなみに、世代的にどの曲が印象的ですか?

 

◆個人的な思い入れも含めて、「そのままの君でいて」です。私、世代ではないのですが『機動警察パトレイバー』が楽曲など含めて大好きでして。

そうなんですね! 私、この曲の歌詞にすごく背中を押してもらったんです。4歳の頃から歌手になりたくて、これまでずっと夢に生かされてきました。でも番組でカバーした時、すごく心も身体も落ちていて。「夢は君の武器のはずだよ」ってフレーズを聴いたとき、「やっぱりそうだよね。そうやって生きてきたんだ!」って涙があふれたんです。私の気持ちを奮い立たせてくれて。初心に帰れました。

 

◆勇気をもらえる曲ですよね。そしてアレンジもカッコいい!

ありがとうございます! 20代からお世話になっておりますユーミン(松任谷由実)のコンサートの音楽監督・武部聡志さんが担当してくださいました。ピアノロックでとリクエストさせていただいたところ、予想以上にスタイリッシュな武部さんのピアノに感動しました!! 洗練された大人の世界に! 流石です! 武部さんのサウンドは安心して歌えます!

 

夢があったからここまで来ました

◆続けて、アルバムリード曲に選ばれた「悲しみよこんにちは」についてお聞きします。本曲は『めぞん一刻』の主題歌ですね。

森雪之丞先生の深い歌詞と玉置浩二さんの寄り添うメロディ、イントロからインパクトのある武部聡志さんのアレンジ、斉藤由貴さんの健気な歌声を含めて、パーフェクトな楽曲です。実は86年当時にこの楽曲を聴いたときは、なんで悲しみに「こんにちは」するのかが分からなくて。できれば「さよなら」したいじゃないですか。ただ、大人になっていろいろな経験をしていく中で生きていると、時間が解決できない消せない傷や悲しみもあるんだって、分かって。その消せない傷との向き合い方、やっと笑顔が出た自分のスタートをこの曲で歌っていると分かったとき、こんなステキな歌詞だったんだって号泣しました。

 

◆そういう意味では、まさに本アルバムのコンセプトにふさわしい一曲かもしれません。

そうですね。大人のためのカバーアルバムなので。そんな名曲を今回は、ミッキーこと酒井ミキオさんが、夢の扉を開けたくなるような素晴らしいアレンジに仕上げてくださいました。私がジャズ好きということを知っていたこともあり、ポップとジャズを織り交ぜたテイストになっています。幸せなサウンドに満ちているので、たくさんの方に聴いていただきたいですね。

 

◆本曲はMVも収録されたとお聞きしました。

アレンジサウンドにぴったりなカラフルで優しい世界が広がっているMVです。個人的には「この番組は〇〇の提供でお送りします」という昭和コマーシャルをオマージュしたナレーションを入れた冒頭からお気に入り(笑)。その他、随所に昭和レトロの映像が盛り込まれている遊び心満載の映像に仕上がっているので、ぜひ、森口博子オフィシャルYouTubeチャンネルでチェックしてほしいです!

 

◆もうひとつのリード曲「夢を信じて」についても教えてください。

まだ『Anison Days』でカバーしたことはないのですが、今回のアルバムで挑戦したくて選んだ一曲です。というのも、「夢を信じて」という言葉が私の人生ともシンクロしていて。学生時代、歌手になりたくてオーディションを受けては落ちてを繰り返していました。当時の日記には「夢があるから頑張れているのか、夢があるから苦しめられているのか、神様分からなくなってきました」って書いてあったんです。でも今は胸を張って「夢があったから生かされている」と言えます。その想いを伝えたくて、神がかった演奏で透明感のある声を引き出してくださる塩谷哲さんのピアノ1本でレコーディングしました。『GUNDAM SONG COVERS』シリーズ3作品とも同時レコーディングを経験してきた仲なので、今回も自由でとろけるような美しいピアノに身を委ねました。歌詞をより輝かせる演奏はうっとりしますよ。シンプルで神聖なMVも必見です。

 

◆夢に苦しみ、信じてきた森口さんだからこそ、伝えられる想いやメッセージもあると思います。

もう、そんなこと言っていただけたら泣いちゃう……! 夢の温度って、人によって違うと思うんです。頑張りたくても環境的に頑張れないこと、精神状況によっては、頑張りすぎなくていい、諦める選択をしたっていいときもあります。ただ、私はやっぱり夢があったからここまで来られたんですよね。真っすぐに生きて来られたのは、母の深い愛情と歌手になるって夢があったから。

 

◆夢が力になった。

50代になって、再びアルバムやシングルでもランキングに入って、レコード大賞・企画賞もいただいたり、改めて夢には締め切りがないなと思っています。そしてここまでしぶとく私を支えてくださったスタッフの方々、ファンのみなさんに感謝の気持ちでいっぱいですね。

 

80〜90年代アニソンの底力を体感してください!

◆すてきなお話ありがとうございました。今回のアルバムは、さまざまなミュージシャンの方とコラボされているのも特徴です。そのおひとりが「GHOST SWEEPER」でコラボされた、ギタリストのマーティ・フリードマンさん。

初めてこの曲を聴いたとき、スイングしていて、なんてカッコよくてセクシーで熱い世界なんだろうと衝撃を受けました。そんな曲にマーティ・フリードマンさんのギターが加わったら、ジャズとロックの融合がありえるかもと思い、お声がけさせていただいたんです。カッコいい部分はありつつ、泣き節を利かせた彼のギターサウンドが見事にハマりました。盛り上がっているライブの絵が見えるアレンジに仕上がっています!

 

◆『クッキングパパ』オープニングテーマ「ハッピー×2・ダンス」では、DJ赤坂泰彦さんとコラボされていますね。

キャッチーで楽しいラテンの曲ですが、森雪之丞さんのしりとりのような言葉選びも天才的なんですよ。かと思えば「人生はちゃんこ鍋だ 涙は隠し味さ」って歌詞は深くて、泣けちゃう。今回のアレンジでは、さらにハッピー要素が欲しいと思い、DJ赤坂泰彦さんにお声がけしました。あのイントロから盛り上がるカッコいいお声が必要だったんです。

 

◆森口さんと赤坂さんと言えば、それこそ90年代バラエティ番組での共演が思い出されます。

「夢がMORI MORI」や「THE夜もヒッパレ」などの番組で絆を築いてきた大切な先輩・仲間です。それゆえに、レコーディング前から赤坂さんの曲紹介で素晴らしい世界になるのは、想像ができていました。実際のレコーディングでは、その想像をはるかに超えてきたんです。イントロの赤坂さんの表情豊かな声を聴いただけで「きたー!」と、テンションを上げてもらえること、間違いなしです!

 

◆その他、本アルバムでは『GUNDAM SONG COVERS』からご一緒されている押尾コータローさんや寺井尚子さんともコラボされていますね。また、ボーナストラックとして「サムライハート 〜2022〜」のセルフカバーも収録されるとお聞きしました。

押尾コータローさんのギター1本での「ロマンティックあげるよ」。キラキラしたサウンドで押尾さんならではの躍動感のあるアレンジ、本当にカッコイイんですよ! ギター1本なのに厚みがあってステキ! 寺井尚子さんとの「風のノーリプライ」は、宇宙に上昇していくようなドラマティックなヴァイオリンに心が震えました! こちらも同時レコーディングでしたが、情熱的な尚子さんの演奏は毎回感動を更新してくるから本当にスゴイ!!

「サムライハート」はファンの方から「また聴きたい」という声が多かった曲なので、再レコーディングすることが決まったときは「やっときたー!」って握り拳上げました! 三浦徳子さんの男の哀愁を感じる歌詞、茂村泰彦さんの仁王立ちしたくなるようなメロディ、そしてイントロから熱くなる戸塚修さんの編曲。もう神曲ですよ! そんな楽曲を十川ともじさんがリアレンジにしてくださいました。さらにロック色が強くなって、新たなアドレナリンが出る一曲に仕上がったと思います。

 

◆6月18日には、本アルバムを引っ提げたコンサート「ANISON NIGHT」が開催されます。最後にこちらへの意気込みをお願いします!

コンサートには、マーティ・フリードマンさんがゲストとして出演してくださいます。あの熱いサウンドを全身で浴びちゃってください。古臭いキャッチコピーかもしれませんが、観ないと損しちゃうよ! 今回のアルバムに収録される曲はもちろん、ガンダムソングも歌います! 80〜90年代のアニソンって底力があるな、新しいアレンジも最高という発見と興奮をお届けする夜にしたいと思います!

 

(こんなお話も!)森口さんが読者の方々に推したいエンタメは?

『きっと、うまくいく』(2009年)というインド映画をオススメします。インド映画って、歌って踊ってというイメージが強い方もいらっしゃると思いますが、この映画はそこが軸ではなくて。競争社会が激しいインドの大学で、葛藤を抱えながらも成長していく姿を描いたエンターテインメントなんです。最初は衝撃的なこともあるのですが、そこからのどんでん返し。泣いて笑って最後は爽快という、すごくよくできた映画です。エンディングの景色も素晴らしいので、おススメです!

 

PROFILE

森口博子

 

森口博子

●もりぐち・ひろこ…6月13日生まれ。福岡県出身。TVアニメ『機動戦士Zガンダム』のOPテーマ「水の星へ愛をこめて」でデビュー。1991年には映画「機動戦士ガンダムF91」主題歌「ETERNAL WIND 〜ほほえみは光る風の中〜」がヒット。同年から6年連続でNHK『紅白歌合戦』にも出場。音楽活動のみならず、幅広いジャンルで活躍。2019年はカバー&セルフカバーしたアルバム『GUNDAM SONG COVERS』が大ヒットし、「日本レコード大賞」にて「企画賞」を受賞。2020年に続編、そして2022年3月にはその最新作『GUNDAM SONG COVERS 3』をリリース。シリーズ3作品とも全て、オリコン週間アルバムランキングにてベスト3以内にランクインし、累計出荷枚数は25万枚を突破した。2022年6月に公開された映画「機動戦士ガンダム ククルス・ドアンの島」の主題歌「Ubugoe」がシングルでも29年ぶりにオリコン週間シングルランキングトップ10入りを果たす。表現力が増しボーカリストとして快進撃が止まらない歌声が再注目されている。

 

リリース情報

New Album『ANISON COVERS』
2023年5月24日(水)発売

初回限定盤(CD+Blu-ray):4,400円(税込)
通常盤(CD only):3,300円(税込)

特設サイト:https://king-cr.jp/ANISONCOVERS/

 

ライブ情報

「ANISON NIGHT」
2023年6月18日(日)昭和女子大学 人見記念講堂
ゲストミュージシャン:マーティ・フリードマン

 

WEB

公式サイト:https://www.mogeshan.net/
公式Twitter:https://twitter.com/hiloko_m
公式ブログ:https://ameblo.jp/hiroko-moriguchi/

 

●text/M.TOKU