人間そっくりの姿をした「惑星難民X」を受け入れた日本と、Xに翻弄される人々を描いた異色のミステリーロマンス映画『隣人X -疑惑の彼女-』が12月1日(金)に公開された。林遣都さんはXの正体を追う週刊誌記者を演じている。“SFミステリー”の設定がありつつも真摯なラブロマンスであり、現在の日本社会に通じるメッセージも込められた本作に、林さんが乗せた特別な想いとは?

林遣都●はやし・けんと…1990年12月6日生まれ、滋賀県出身。2007年、映画『バッテリー』で俳優デビュー。同作で第31回日本アカデミー賞ほか多くの新人賞を受賞し注目を集める。近年はNHK大河ドラマ『いだてん〜東京オリムピック噺(ばなし)〜」(2019)、NHK連続テレビ小説『スカーレット』(2019)、TBS日曜劇場『VIVANT』(2023)と話題作に出演。ドラマ『おっさんずラブ-リターンズ-』(テレビ朝日系)が2024年1月に放送開始を、映画『身代わり忠臣蔵』が2024年2月9日に公開を控えている。

 

【林遣都さん撮り下ろし写真】

 

 

「未だに悲しいニュースが絶えない世界で生きるのは大変 」

 

──人間の姿をした惑星難民Xが、日本社会に紛れ込んでいるという設定から始まる物語ですが、脚本を読んでどのように感じられましたか?

 

 タイトルを聞いた時「熊澤(尚人)監督が、SF要素のある作品を撮るんだ」と思いました。しかし実際に脚本を読んでみると、近年の自分たちの生活を振り返らせてくれるような内容や、現代社会において目を向けなければいけない問題が多く描かれていたんです。すごくやりがいのある作品だと思いました。

 

──たしかに近年のコロナ禍での生活や社会的偏見、差別など実社会にも通じるテーマが存在していると感じました。作品を作るうえで、大事にしたことはありますか?

 

 脚本を読んだ時に、監督が世の中に伝えたい想いが込められていると強く感じました。監督と常に確認し合っていたわけではないですが、自分も周りも、監督と同じ想いを込めて作品づくりに臨んでいました。

 

──それは、どういった想いでしょうか?

 

 簡単な話ではないですが、「人が人を傷つけない社会になってほしい」という想いです。コロナ禍の混乱だけではなく、未だに悲しいニュースが絶えない世界で生きるのはすごく大変で、やむを得ず人を傷つけてしまう場合が誰にでもあると思います。それでも一人ひとりが心がけを変えて、自分ばかりでなく誰かの幸せを願って生きていれば、そんなに悪いことは起こらないんじゃないかなって。僕自身、日頃から人を無意識に傷つけないよう心がけていることもあり、そんな想いが伝わればいいなと思っています。

 

──素敵です。林さんが演じた笹役には、どのように向き合ったのでしょう?

 

 僕が演じた主人公の笹は、週刊誌記者として、Xの疑惑がある女性・良子(上野樹里さん)を追いつつ、だんだんと彼女に惹かれていく役柄です。そして記者としての仕事で悩んでいるうちに、良子さんのことを傷つけてしまいます。ただ笹が良子さんを傷つけてしまった理由も、僕は理解できるんです。行動の裏には誰しも理由や事情があると思っているので、笹のように「人を傷つける行動をとってしまった人」の気持ちも知りたいと思いながら演じました。でも最終的には、やはり「人を傷つけることはなくなって欲しい」というのが自分の思うところですね。

 

林さんが大事にしている「10代の時に熊澤監督からいただいた言葉」

 

──熊澤監督とは2008年の映画『ダイブ!!』以来のタッグとなりますが、15年ぶりに撮影に臨んでいかがでしたか?

 

 監督とは16、17歳の時にご一緒させていただき、「これからどんな大人になっていくのか」という時期の自分を見ていただきました。若い時にお世話になり、すごく信頼している方とお話すると、あらためて今の自分と向き合うことができます。もし監督が、今の僕を見てガッカリしたら「僕は何か間違えているのかな」という判断基準にもなりますし、初心に戻れます。

 

──これまでにも監督と交流はあったのでしょうか?

 

 はい。数年前に監督が映画の試写会にいらして、感想をくださったことがありました。「お芝居が面白かった」ではなくて、「俳優をやる上での覚悟を感じることができた」と、僕の作品への取り組み方を見てくださったのが、とてもうれしくありがたかったです。10代の時に監督からいただいた言葉は、今もお芝居をするうえで大事にしています。

 

──どのような言葉か、聞いてもいいですか?

 

 「自分自身を磨き続けること」ですね。「高め続けていかないと、人を演じるなんてできないよね」とお話いただきました。僕自身、俳優はいろんな経験をして、いろんなことを知るのが大前提だと思っています。今回の撮影で「今も意識しています」と監督にお伝えすると、「それをすごく感じたし、今後も大切にしていってほしい」と仰っていただきました。これからも大事にしていきたいです。

 

上野樹里さんと初共演「プロ意識にすごく惹かれました」

──初共演となる良子役の上野樹里さんには、どのような印象をお持ちになりましたか?

 

 樹里さんに初めてお会いしたのは本読みとリハーサルの時で、その夜は監督とプロデューサーさんと樹里さんとで食事をする予定でした。でも納得いくまでやり続けた結果、時間が足りず中止になったんです。その樹里さんの作品や役に対する姿勢、妥協せず作り込んでいく瞬間が僕はものすごく好きなので、本当に充実した時間でした。

 

──上野さんは、とことん追求するタイプなのですね。

 

 そうですね。作品と役に対する責任感をお持ちで、そのプロ意識にすごく惹かれました。作品への心がけや取り組む感覚が同じだと感じ、1日で「この人となら演じる中で良い関係性が築ける」と思いました。その気持ちは撮影が終わるまで変わりませんでしたね。

 

──劇中では良子と笹が、お互いに少しずつ心を通わせていきます。良子のキャラクターは笹から見て、どう映っていたのでしょうか?

 

 良子さんは、笹にとっても世の中においても必要な人間だと思います。人を見かけで判断せず、本質を見つめることができる。そして弱みや痛みを知っているからこそ、他人のそれらに気づくこともできる。笹は知らないうちに良子さんに救われていて、そんな彼女を傷つけてしまったからこそ、新たに気づけたことがあるのかなと思いました。

 

映画『隣人X -疑惑の彼女-』

12月1日(金)新宿ピカデリー他全国ロードショー

 

【映画『隣人X -疑惑の彼女-』よりシーン写真】

 

(STAFF&CAST)
出演:上野樹里 林 遣都 黃姵嘉 野村周平 川瀬陽太/嶋田久作/原日出子  バカリズム 酒向 芳
監督・脚本・編集:熊澤尚人
原作:パリュスあや子「隣人X」(講談社文庫) 音楽:成田 旬
主題歌:chilldspot「キラーワード」(PONY CANYON / RECA Records)
配給:ハピネットファントム・スタジオ
制作プロダクション:AMGエンタテインメント
制作協力:アミューズメントメディア総合学院
©2023 映画「隣人X 疑惑の彼女」製作委員会 ©パリュスあや子/講談社
公式サイト:https://happinet-phantom.com/rinjinX/

 

(STORY)
ある日、日本は故郷を追われた惑星難民Xの受け入れを発表した。人間の姿をそっくりコピーして日常に紛れ込んだXがどこで暮らしているのか、誰も知らない。Xは誰なのか? 彼らの目的は何なのか? 人々は言葉にならない不安や恐怖を抱き、隣にいるかもしれないXを見つけ出そうと躍起になっている。

週刊誌記者の笹は、スクープのため正体を隠してX疑惑のある良子へ近づく。ふたりは少しずつ距離を縮めていき、やがて笹の中に本当の恋心が芽生える。しかし、良子がXかもしれないという疑いを払拭できずにいた。良子への想いと本音を打ち明けられない罪悪感、記者としての矜持に引き裂かれる笹が最後に見つけた真実とは。嘘と謎だらけのふたりの関係は予想外の展開へ…!

 

撮影/映美 取材・文/kitsune ヘアメイク/竹井 温 (&’s management) スタイリスト/菊池陽之介